北村匠海
案の定、“静かな爆死” となった。
あまり酷評されることも、あまり絶賛されることもなく、「月9」ワースト視聴率を大幅に更新してしまった『サバ缶、宇宙へ行く』(フジテレビ系)。
6月22日(月)に放送された最終話(第11話)の世帯視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)は3.9%と、低視聴率のままフィニッシュ。そして、世帯視聴率を全話平均すると、なんと3.7%になっており、大コケと言って差し支えないだろう。
これまでの月9の世帯視聴率ワースト記録は全話平均で5.3%だった『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』(2023年)なので、大幅に最低視聴率を塗り替えてしまった。
昨今はTVerなどの見逃し配信で観るドラマファンが多いといっても、さすがにこの数字はフジテレビとしてもショックが大きかったはず。ちなみに、100万登録が人気の指標となっているTVerのお気に入り登録数は41.6万(6月23日現在)といまいちで、見逃しでヒットしていたわけでもない。
■【ネタバレあり】「宇宙日本食」認証されたサバ缶が…
本作は実話をベースにして描かれたストーリーで、福井県の高校を舞台に、生徒と教師が力を合わせて宇宙食を開発する学園もの。
北村匠海演じる主人公は自校で生産しているサバ缶を宇宙に飛ばすことを目標に、生徒たちの夢をつないでいく高校教師。世代交代していく生徒を見守る主人公視点で描かれた。
物語は、2005年からスタートして15年間にわたる歳月が流れたため、生徒たちは次々に卒業して次世代にバトンを渡していくという構成。実に5期まで代替わりしていったのだが、1期が第1・2・3話、2期が第4・5話、3期が第6話、4期が第7・8・9話、5期が第10・11話という配分だ。
最終話前となる第10話で、サバ缶がとうとう「宇宙日本食」として認証される。迎えた最終話、国際宇宙ステーションに向けてサバ缶を載せた補給船が発射され、宇宙空間にて日本人宇宙飛行士がサバ缶を食すシーンが描かれ、大団円で終幕した。
■従来の連続ドラマとは異なる意欲作だった
一言で言うと『サバ缶、宇宙へ行く』はチャレンジングな作品だった。
まず、なんといっても1クールの学園ドラマというフォーマットで、5期にわたる生徒たち、15年にわたる歳月を描くといった構成はかなり珍しい。
また、生徒役だった出口夏希を先生役でカムバックさせるという手法も斬新でよかった。
出口が演じたのは1期の生徒で、第1・2・3話のメインキャラクター。第3話ラストで卒業したためしばらく登場しなかったのだが、劇中の月日が流れた第7話から、先生として高校に帰還させるというウルトラCで復活。以後は最終話まで、北村演じる主人公のバディ的な役割を担っていた。
あえて第4・5・6話に出演させなかったことで出口への飢餓感が生まれてバリューが高まったし、教師という頼もしい存在になって再登場したことに感慨深さも感じられた。それだけ、1クールの同じドラマ内で生徒役と先生役を演じさせるというのは画期的だった。
このように、従来の連ドラにはなかった構成・手法が用いられた意欲作であったことは間違いなく、その挑戦には心から拍手を送りたい。
日本の地上波ドラマの影響力が年々弱まってきている昨今だからこそ、守りに入って型にはまることなく、型破りな目新しい作品をじゃんじゃん作ったほうがいい。
■低視聴率で大コケしてしまった原因は明らか
だから、個人的には『サバ缶、宇宙へ行く』が “挑戦したこと” は高く評価している。しかし、このドラマがおもしろかったかどうかは別の話。トライしたことには敬意を表するが、だからこそ筆者は今作の問題点はきちんと指摘すべきだと考えている。
ということで、低視聴率で大コケしてしまった原因を考えたい。
この作品は、もともとドラマティックな実話をもとにしているため、ストーリーの本筋はしっかり説得力があるし、現実に起こった出来事がベースなのでツッコミどころや叩く要素が少ない。
そのため、ネガティブな意見が噴出することはなかったのだが、15年という長い歳月を描かなくてはいけないため、各期の生徒たちのエピソードがめちゃくちゃ薄味になっていたのだ。
生徒たちが宇宙食認証に向けた問題に直面したり、生徒同士の意見が衝突するトラブルが起きたりしても、使える尺が少ないのでどのエピソードも駆け足になっていた。それゆえ、生徒たちに感情移入がしづらく、あまり思い入れがない生徒が次々に卒業して代替わりしていくという繰り返しになってしまった。
1期と4期の生徒は3話分が費やされたが、それでも彼らへの思い入れは薄いままで、あまり感動できず。ましてや、たった1話で卒業してしまった3期の生徒に感情移入しろというのは無理があった。
■『サバ缶、宇宙へ行く』という作品名が最大のネタバレ
また、説得力があってツッコミどころが少ないというのは実話ベースの物語のメリットだが、視聴者が結末をわかっているというのは大きなデメリットだったのではないか。
『サバ缶、宇宙へ行く』という作品名が最大のネタバレになってしまっていたので、視聴者が最終話にハラハラ・ドキドキするのは難しい。
さらに言うと、本作におけるもっとも高い壁は “宇宙食として認証されること” だったわけだが、それは第10話で達成しているので、最終話のクライマックス感も薄れてしまった。視聴者全員が結末を知っており、最大の問題が最終話前にクリアされているため、残念ながらラストへの “引き” は弱かった。
結果論で語るなら、『サバ缶、宇宙へ行く』という作品は、さほど酷評されていないものの、月9ワースト視聴率を更新し、最終話も盛り上がらなかったので、“静かな爆死” となってしまった。
ただ、失敗することを恐れてどこにでもあるような無難な “量産型ドラマ” を作るより、果敢に新しいものを作ろうとチャレンジしたことは大きな意義があったと思う。
![Smart FLASH[光文社週刊誌]](https://smart-flash.jp/wp-content/themes/original/img/common/logo.png)







