結婚と第1子の妊娠を発表した田中みな実と亀梨和也
6月に結婚すると幸せになれる――。そんなヨーロッパ由来の言い伝えは、一種の “国民的な憧れ” になっていった。6月30日には、亀梨和也と田中みな実の結婚が報じられた。田中は、第1子を妊娠しているという。芸能界の王道といえる「ジューンブライド」。その芸能史を、芸能レポーター歴39年の長谷川まさ子氏が、こう振り返る。
「もともと『ジューンブライド』という響きには、特別なイメージがあったと思います。そこに加えて、6月に結婚する芸能人たちをマスコミが大きく報じるようになった。その流れが一般の人たちにも広がり、『(松田)聖子ちゃんと同じ月に結婚したい』という憧れに繋がっていったのではないでしょうか」
■結婚式が中継されるのはスターである証し
昔の芸能人の結婚式は、今とは比べものにならないほど派手だった。
「結婚は幸せの象徴で、それを『幸せのお裾分け』として広く見せることがよしとされた時代でした。テレビ局から『結婚式を中継したい』と言われること自体が、スターである証明のようなところもありました。テレビが入ることで、演出も賑やかになるんです。象徴的なのはケーキの高さ、ウエディングドレスのデザイン、お色直し。今でいえば “映える” 演出です」(長谷川氏、以下同)
大物カップルの6月婚といえば、1975年の沢田研二と元ザ・ピーナッツの伊藤エミさん。
「ジュリーは、比叡山・延暦寺で挙式したその日に野外でフリーコンサートを開き、2万人のファンの前で結婚を報告したんです。いまでは考えられない規模ですよね。ジュリーがその後、田中裕子さんと再婚するかもしれない、という時期に、私は彼にマイクを向けて、『田中さんにウエディングドレスを着せてあげたくないですか?』と聞いたことがあります。ジュリーは無言でしたが、その後、再婚でもちゃんと挙式して、田中さんを花嫁姿にしてあげた。それをよく覚えています」
1985年、松田聖子と神田正輝の結婚は、ジューンブライドを象徴するイベントだった。
「当日、東京・目黒のサレジオ教会の上空は、何機ものヘリコプターが飛んでいました。新聞の見出しは『聖輝の結婚』。高さ5.7mのウエディングケーキは制作費が1000万円、披露宴の総費用は約2億円。何もかもが規格外でした」
1987年には、郷ひろみと二谷友里恵が挙式した。前出の聖子と郷は、かつて結婚が噂されたこともあった。その2人が別々の相手と豪華な披露宴をおこなったのも、当時ならではだ。
「聖子さんの披露宴の司会は徳光和夫さん、郷ひろみさんのほうは古舘伊知郎さん。そういう大物司会者が担当していたのもおもしろいところです」
■泉谷しげるの指名で江口洋介&森高千里が急接近
1990年代も、ジューンブライドは芸能界の大きな話題だった。「花の82年組」同士である薬丸裕英と石川秀美の結婚も話題になった。
「お互いに交際を完全に秘密にして、ずっと貫いてきたんですよね。ただ、妊娠しておなかが大きくなり始め、これ以上は隠せないとなった。そのときに、薬丸さんと石川さんが同じ日の同じ時刻に、それぞれのマネージャーに告白したという話があります。後戻りできない作戦ですよね」
1999年には、今も円満な夫婦として知られる江口洋介と森高千里が結婚した。
「阪神大震災のチャリティコンサートで、主催の泉谷しげるさんがバンドメンバーとして2人を指名したのがきっかけだそうです。そういう意味では、泉谷さんがキューピッド的な存在になったわけです。2004年に夫婦でカレーのCMに出ましたが、夫婦でCM共演できるということは、この夫婦の離婚の心配はゼロなんだな、と思いましたね。離婚したら違約金が発生しますから」
■結婚式の中継は姿を消しても…話題になった辻ちゃんの電撃婚
2000年代以降になると、かつてのような結婚披露宴のテレビ中継は姿を消した。勢いはひところほどではなくなったが、6月婚は依然として注目の的だった。
2007年には、辻希美と杉浦太陽の結婚が世間を驚かせた。
「辻ちゃんはそのころ、まだ楽屋を走り回るほどあどけないイメージだったので驚きました。できちゃった婚と受け取られましたが、本人は『結婚を決めてから、胃が痛くなって病院に行って、妊娠がわかった』と説明していました。誕生石が真珠ということもあって、結婚指輪に真珠を選んでいたのも印象的でしたね」
2016年には、ドラマ共演後に交際が始まった優香と青木崇高が結婚した。
「きっかけになった打ち上げが京都であったようです。みんなで朝まで飲んで、青木さんは優香さんとは別のホテルに泊まっていた。ところが帰ったあと、どうしても気持ちを抑えられなくなり、優香さんに電話をして『じつは好きや』と告白したそうです」
同年、水野美紀と唐橋充のスピード婚が話題になった。
「よく、女性が『ゼクシィ』を部屋に置き、男性に結婚を意識させる、というエピソードがありますよね。ところがこの2人の場合、唐橋さんが雑誌を買ってきて、どんどん積み上げていったそうです(笑)」
2017年には、陣内智則と松村未央アナが結婚した。藤原紀香との離婚後、陣内は次の結婚に慎重になっていたという。
「松村さんとの交際が報じられたとき、陣内さんはまだ結婚の気持ちが固まっていなかったそうです。『このままズルズルしていると申し訳ないから別れよう』と話すと、松村さんは『そうなんだ。そんなふうに思わせていたならごめんね。じゃあね』と笑顔で部屋を出た。陣内さんが気になって外に出ると、エレベーターホールで松村さんが号泣していた。それを見て、自分の前では泣かず、笑顔で立ち去った彼女を愛おしく思い、結婚を決意したといいます」
令和最初にして、現時点では最後の “国民的ジューンブライド” といえるのが、2019年の蒼井優と山里亮太。結婚後の会見を覚えている人も多いだろう。
「それぞれを紹介したしずちゃん(山崎静代)にも言わないくらい、2人は内緒にしていた。山里さんは自分の母親にも『結婚する』とだけ言って、相手が蒼井さんだとは伝えていなかったそうです。蒼井さんは山里さんの仕事に対する姿勢を尊敬しているんですよね。山里さんが家で愚痴を言っても、蒼井さんはそれを全部受け止めて『そうなんだ、そうなんだ』と聞く。いい奥さん、いいお母さんという印象です」
こうして振り返ると、ジューンブライドは単なる結婚月ではなく、スターの人生がもっとも華やかに可視化された舞台だったことがわかる。秋篠宮さまと紀子さま(1990年)、天皇陛下と雅子さま(1993年)のご成婚がいずれも6月だったことも、ジューンブライドのイメージを国民に印象づけたと、長谷川氏は語る。
「皇室への憧れは、やっぱりすごくありましたから。私も取材に行きましたが、ご成婚の影響力は大きいですね」
■そして今、6月婚は敬遠されるようになったが……
だが、現代の結婚観は大きく変わった。婚活アドバイザーの植草美幸氏は、「いま、ジューンブライド人気はほぼゼロです」と断言する。
「そもそも日本の6月は梅雨です。ジメジメしているし、ゲストが雨の中、着物で来るのも大変。結婚式の日取りとしては大安のほうが重視されます。『ジューンブライドだから』という発想は、最近のカップルからはほとんど出てきません」(植草氏、以下同)
では、結婚の一歩手前である、婚活の現場ではどうだろうか。植草氏が続ける。
「結婚相談所の場合、出会った男女は3カ月以内に結婚を決めることが多いんです。5月に出会った人が、翌年6月まで待つなんてことはありません。結婚の時期は、双方の仕事の都合が9割以上という体感です。新居の契約や転勤、繁忙期を避けることのほうが現実的に大事なんです」
さらに、結婚式そのものをしない人も増えている。
「昔のように何十人も呼んで、ドレスに100万円かけて、お色直しをして、という人はかなり少なくなりました。今は親族だけの少人数婚や、そもそも式を挙げない人も増えています。結婚式にお金をかけるより、新居や家具、旅行などにまわしたいという考え方です。いまは夢よりも、コスパ、タイパの時代なんです」
昭和・平成のスターたちが育てた「ジューンブライド」という夢。だが令和の結婚は、ロマンよりも現実で動いているようだ。
あの華やかな6月の花嫁は、芸能史のなかでまぶしく輝く、幸福な残像なのかもしれない。
写真・本誌写真部
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