
大人気韓流ドラマ『愛の不時着』のミュージカル版では、一見クールで恋愛に不器用なソ・ダンを演じる(写真・福田ヨシツグ)
2016年に、乃木坂46の3期生オーディションに合格。アイドルとして華やかなステージに立つ一方で、堂本光一主演のミュージカル『Endless SHOCK』のヒロインを務めるなど、舞台俳優として、確かな爪痕を残してきた中村麗乃(24)。しかし、彼女の口からこぼれ出たのは、意外な言葉だった。
「舞台を観るのは乃木坂に入る前から大好きでしたが、自分が演ることに対しては、得意じゃないかもなぁと思っていたんです」
それが一変した作品は、2021年10月6日、東京・Bunkamuraシアターコクーンで幕を開けた、『October Sky−遠い空の向こうに−』。中村にとっては、生のオーケストラで演る初めてのミュージカルだった。
「稽古では共演者の皆さんが素晴らしすぎて、一人だけ置いてけぼりになっているんじゃないかと思ったときもありました。でも、幕が開いて共演者の皆さん、オーケストラの方々、そしてお客様とが一緒になって作り上げた舞台がすごく楽しくて、ミュージカルの虜になっていました」
観る側から演じる側へ。大きく舵を切った中村は1年後、堂本が主演を務める『Endless SHOCK』のオーディションに挑んだ。
「大勢の審査員の方の前で、その場で台本を渡されて台詞を言ったり、振りを入れて踊ったり、楽譜を渡されて歌ったり、ミュージカルに必要とされるすべての要素の試験を一日でやるのですが、事前にいただいていた歌唱審査に使う楽譜が何かの手違いで違うものを渡されていて……」
期待と不安が交互にやってくる1カ月。合格の知らせが届いたのは、乃木坂46『真夏の全国ツアー2022』ファイナル、明治神宮野球場3daysの最終日、8月31日の公演前だった。
「マネージャーさんから『受かったぞ!』と言われた瞬間、手違いでほかの楽譜を渡されたことが頭に浮かんで。『本当ですか? 本当に本当ですか? 本当に本当に本当ですか?』と、3度も聞き返していました(笑)」
乃木坂46の3期生オーディションに合格したときの気持ちと、『Endless SHOCK』のオーディション合格を知らされたときの気持ち。その違いを中村は、こんなふうに話してくれた。
「乃木坂46のときは何者でもない、ただの中学生だった私が、『今日から乃木坂46です』と言われ、何かすごく不思議な感じがして、『Endless』のオーディションの合格を知ったときは、プレッシャーと同時に自分の中で覚悟ができたような気がします」
強い思いを持って臨んだ中村が立ったのは、舞台俳優なら誰でも一度は立ちたいと願う帝国劇場の舞台。演じた役は、舞台俳優として憧れた神田沙也加も務めたヒロイン、リカ。全55公演を全力で駈け抜けた中村の目の前には、色とりどりのペンライトが光の渦となって押し寄せてくる景色が広がっていた。
「鳴りやまない拍手と歓声。お客様が一斉に立ち上がり、スタンディングオベーションで迎えてくださるカーテンコールは、“頑張ってよかった”と思える瞬間でした」
自らのファンクラブを「curtain call」と名づけた中村が次に挑むのは7月12日、東京・THEATER MILANO−Zaで幕が開く、大人気韓流ドラマ『愛の不時着』のミュージカル版。中村が演じるのは、一見クールで恋愛に不器用なソ・ダン。ストーリーの鍵を握る一人だ。
「世界中に配信され、完成された人気作品ですから、期待値も高いと思いますし、それを日本人キャスト版のミュージカルにするというプレッシャーはもちろんあります。その高い期待値をどうやって超えていくのか。ゾクゾクするし、ワクワクもあります」
こう話す中村が見せてくれたヒソモノは2つ。ひとつはお守りと、お浄め塩スプレー。
「いろんな神社のお守りをポーチにつけていますが、お気に入りは芸能の神様、京都・車折神社のお守り。香りと浄化を楽しめるお浄め塩スプレーは、気持ちがドヨ~ンとしているときに使っています」
そして、もうひとつは――。
「帝国劇場の着到板……表裏両面に自分の名前“中村麗乃”が記された板で、劇場に入ったら赤から黒にひっくり返し、公演を終えて劇場を出るときは逆に返すんです。建て替え工事で休館中の帝国劇場が、新・帝国劇場として幕を開けるのは’30年度。そのときに、この着到板をかけていただけるような俳優になることが今の目標です」
その目標の先にある、さらに大きな目標は――。
「引き出しを今よりもっともっと多くして、30代のうちに帝国劇場でミュージカル『マイ・フェア・レディ』のヒロイン、イライザを演じること。カーテンコールで、嵐のような拍手と歓声、スタンディングオベーションをいただけるような魅力ある俳優になりたいです」
なかむられの
2001年9月27日生まれ 東京都出身 2016年に3期生として乃木坂46に加入。在籍時からミュージカル『October Sky-遠い空の向こうに-』『ダンス オブ ヴァンパイア』に出演。2023年、2024年には、堂本光一主演の『EndlessSHOCK』でヒロイン・リカ役を務め、帝国劇場の舞台に立つなど演劇界でも評価され、2025年6月に乃木坂46を卒業後は、俳優としてミュージカルを中心に活躍
写真・福田ヨシツグ
取材&文・工藤晋
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