
現在上演中の劇団四季・東京公演のディズニーミュージカル『アナと雪の女王』は、先月で日本上演5周年を迎えました。筆者も先日、その圧倒的なクオリティを体感すべく劇場へ足を運んだのですが、観劇中に気になるシーンがありました。
それは、サウナを経営するお調子者の男性・オーケンとサウナ客たちが登場する場面。なんと彼らは『WAHAHA本舗』(久本雅美さん、柴田理恵さんを中心とした劇団)のお家芸である『裸スーツ』(リアルな肉体が描かれた全身タイツ)を着用し、大事な部分を葉っぱで隠しながらキレッキレのダンスを披露していたのです。
もちろん、アニメ映画版「アナ雪」には大事な部分を葉っぱで隠すダンスシーンはなく、舞台版のオリジナルだそうです。
まさか日本のミュージカル界を牽引する巨大エンターテインメント集団の劇団四季と、過激な笑いを追求するWAHAHA本舗のパフォーマンスがシンクロするとは思いもよりませんでした。
劇団四季の『アナ雪』日本公演が開幕したのは2021年。ニューヨークのブロードウェイで開幕したオリジナル版でもこのダンスシーンは2018年時点で組み込まれており、観客の間で大きな話題となっていたそうです。
対するWAHAHA本舗が舞台で裸スーツを使い始めたのは1980年代後半から90年代初頭と言われています。ですから、当然、WAHAHA本舗がかなり先に世に送り出しているわけです。これが偶然なのか劇団四季やブロードウェイがWAHAHAの裸スーツをオマージュしたのかは定かではありません。
筆者は以前、久本雅美さんと柴田理恵さんを取材した際に、類似したケースのお話をお聞きしています。
柴田「喰始(WAHAHA本舗・主宰)は、世界にWAHAHAを持っていきたかったみたいです」
久本「WAHAHAは言葉がいらないネタが多いから、周りからも『世界でやったら』って言われたけど、時期を逃してもうたね。若いときは勢いとかピチピチ感があるやん。今はないやん(笑)」
柴田「そうね(笑)。それに、若いころは世界に持っていけるネタがいっぱいあったから、もし行ってたら変わっていたかもよ」
続けて久本さんは、世界的な大ヒットパフォーマンス集団の名をあげました。
久本「ブルーマンを作った人は、WAHAHAの舞台を見て『ああいうのをやろう』と思って作ったと聞いたことがあります。ブルーマンを見たとき、『私らのネタをパクッてる?』って思ったから。ただ、ブルーマンのパフォーマンスがすごすぎて、そうは見えにくいけど(笑)」
また、裸スーツで思い出すのが、アーティストのDJ OZMAさんが2006年の『NHK紅白歌合戦』で着用し、世間を騒がせた一大騒動です。実はあのとき、舞台上で使用された裸スーツこそ、ほかならぬWAHAHA本舗が提供したものでした。
久本「そのとき私は、楽屋で次の仕事の衣装に着替えながらテレビで紅白を見てたんですよ。そしたらDJ OZUMAさんたちが裸スーツを着て歌ってたから、私は『完全にパクられた』と思ったんです。と言うのも前にDJ OZUMAさんがWAHAHAの公演を見に来てくれていて『面白かったです』って、楽屋あいさつにも来てくれてたんですよ。
それで、すぐに喰さんに電話して『DJ OZUMAさんが裸スーツをパクってますよ!』って言ったの。そしたら喰さんが『久本、落ち着いて、あれ、僕が貸したんだよ』って。『貸したんかい!』と思って(笑)。あとから聞いたら喰さんに許可をもらって最初は自分たちで作ったそうなんです。でもなかなかうまく作れなくて……。それで『ウチのでよかったら使って』って」
ちなみに、WAHAHAの裸スーツの作り方は、いつもお世話になっている衣装さんが劇団員のサイズを測って肌色のスーツを作ってもらい、それに劇団員たちがペンで「ここがお乳、ここがおへそ」とか描いて、それにエアーブラシの職人さんが肉づけして仕上げてくれるものなのです。
エンターテインメントな演出を身上とするDJ OZUMAさんや、顔を真っ青に塗って音楽や演劇など、さまざまなパフォーマンスを展開する、世界的に有名なクリエイティブ集団・ブルーマンがWAHAHAにインスパイアされていた事実。
そう考えると、ブロードウェイや劇団四季が『アナ雪』で見せた裸スーツ演出が『WAHAHAからのインスパイアである』という説も、あながちあり得ない話ではないと思えてきます。
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