
女優の沙倉ゆうの
「街で声をかけてもらったのは、人生で1回だけです。地元のカメラ屋さんで写真をプリントしていたら、『侍タイムスリッパーの方ですか?』って。うれしかったですね」
そう語るのは、女優・沙倉ゆうのだ。兵庫県出身で現在、46歳。2024年に公開された異色のヒット作『侍タイムスリッパー』でヒロインを務め、一躍、日本中に知られることになった。
「『侍タイムスリッパー』は安田淳一監督が自主制作した映画です。東映京都撮影所の協力のもと、幕末の会津藩士がタイムスリップし、東映京都撮影所で撮影する時代劇の“斬られ役”として活躍するという時代劇コメディです。超低予算のインディーズ映画ながら、絶大な支持を得て、興行収入は10億円超え。日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞するなど、まさに大逆転を果たした映画です。
沙倉さんは、時代劇撮影所で働く助監督を演じました。現代の日本社会に戸惑う主人公を支える役どころで、多くの観客の心をつかみました」(芸能担当記者)
だが“遅咲き”の彼女の前半生はあまり知られていないーー。いったいどんな人生をたどってきたのか。テキパキとした劇中の様子とは真逆の“おっとり”とした口調でこう語る。
「小学生のころから女優さんにあこがれていたんですよ。地元の短大を卒業して、オーディション雑誌で見つけた浴衣コンテストで賞をもらったことをきっかけに、京都の事務所に所属できました。そこからはアルバイトをしながら、オーディションに応募をする日々でした。
関西にある実家暮らしでしたから、家賃の心配をする必要もないし、バイト先にも恵まれて、みんな応援してくれるので、のびのびと活動を続けることができたんです」(沙倉・以下同)
女優を志すとすれば、まずは上京というのが一般的な選択肢だが、彼女は戦略的に地元に留まることを選んだという。
「東京って、とにかく競争が激しいじゃないですか。きれいな人も、演技がうまい人も、本当にたくさんいて、そのなかで勝たなきゃいけない。しかもひとり暮らしをしようとしたら、バイトもたくさんする必要がでてきます。演技よりもバイトがメインになっちゃうかもしれないですしね。だったら、関西でコツコツ活動を続けたほうがいいなって思ったんです」
安田監督とはすでに20年以上の旧知の仲だ。
「2005年に、安田さんが制作するイベント用オープニングムービーに声をかけてもらいました。私はバレエを習っていたことがあるので、プロフィール写真にトウシューズを履いた写真を添付していたんです。そうしたら、安田さんが写真を目に留め、急遽『バレリーナを目指す女の子の話』へと企画を変更してくださったんです。まさに大抜擢ですよね」
それ以来、映画『拳銃と目玉焼』、『ごはん』など数々の安田作品に出演し、『侍タイムスリッパー』でチャンスをつかんだ。だが、苦労は多かったという。
「そもそもスタッフが10人しかいないですからね(笑)。助監督、制作、小道具、車両など、何役も兼任しました。現場で経費を支払うために、自分の財布から立て替え続けたことも。安田さんはおカネのことはしっかりしているので、必ず後で返してもらえると信じていましたからね。最終的に240万円の“借金”になりました。撮影終了後に返してもらいましたが、そのとき『この映画に出資してもいいで』と誘われたんです。だから、100万円分だけは受け取らずに、出資という形にしました。そうしたら、このヒットです。だいたい、10倍ぐらいになって返ってきました。ラッキーでした(笑)」
人生を変えるようなヒットに恵まれた沙倉。バイトなしで女優業に専念できることになったものの、生活は変わらないという。
「映画に出て周囲にいちばん驚かれたのは、私の年齢です(笑)。童顔なので、実年齢と離れた若い役も多く、なるべく非公開でやってきたのですが、2024年、映画の全国拡大公開時のインタビューでテレビに出演した際に全国にバレてしまいました。昔からのファンの方や共演者の方にもびっくりされました」
現在も独身を貫いているが、結婚願望はあるという。
「一度くらいは結婚を経験してみたいですよね。時代は変わりつつありますけど、周りの方たちに可愛がっていただいているせいか、自分自身大人になりきれない気もしてしまい……(笑)。なかなかチャンスがないんですけど」
プライベートはさておき、女優業は絶好調だ。7月16日から毎週木曜日23時から放送の『侍タイムスリッパー』のスピンオフドラマ『心配無用ノ介 天下御免』(BS-TBS)に出演している。劇中劇として登場した物語が独立した形だ。
「勧善懲悪ものなので、気軽にスカッとできるはずです。私は主人公の心配無用ノ介を陰で支える、御庭番を演じています。ダークでしっかりした役柄なので、かなり声を低くしています。『侍タイムスリッパー』とはまた違った姿を見てください!」
伝説の映画と同じ出演者、同じ監督が制作するドラマ。おもしろさは“心配無用”だろう。
![Smart FLASH[光文社週刊誌]](https://smart-flash.jp/wp-content/themes/original/img/common/logo.png)







