
突然サービスが停止した配信プラットフォームのオフィス
「運営からの入金が完全にストップしたため、ライバーたちへの支払いが滞らないよう、事務所側が報酬を自腹で立て替えて凌いでいます。未払い被害は深刻で、約180万円の未払いが発生しています。その他の事務所やライバーさんにも数十万円から数百万円規模の未払いが各所で発生しているようで、被害を受けた方はかなりの数に上るでしょう」
そう悲痛な実態を訴えるのは、数多くのライバーを束ねるライバー事務所レインボーライブの社長・野田佳幹氏だ。
多くのライバーやリスナーを抱え、急成長を遂げていたはずのライブ配信アプリ『everylive(エブリライブ)』が、2026年6月上旬以降、突如としてサービスを停止。その衝撃が今、業界を揺るがしている。
「『エブリライブ』は、2021年1月からスマートフォン一つで誰でもライブ配信ができるプラットフォームとしてサービスを開始しました。
『Pococha』や『17LIVE』などと同じく、リスナーが配信者(ライバー)にギフトと呼ばれる投げ銭を贈ることで応援。その一部がライバーや所属事務所の収益となる仕組みですね。テレビ局と連携したオーディションや社会貢献活動などを実施し、クリーンなイメージを前面に出して成長しました」(ITライター)
運営会社であるエブリライブ株式会社は、2022年2月に親会社であるブレインイノベーションから分社化され独立。同年6月には、同社史上最高の売上を記録した。広告代理店の関係者はこう明かす。
「2021年から2022年夏頃は、1日に500名から600名以上のライバーが常に稼働しており、かなり盛り上がりました。次世代の主要配信アプリとして、ベンチャーキャピタルなどからも注目されました。ところが、現在の親会社であるブレインイノベーショングループに買収されてから風向きが変わったのです。
知名度を一気に上げようとしたのか、豊洲PITなどの大きな会場で音楽イベントやランウェイイベントを開催したり、BSの番組に大口スポンサーとして参画したりして、派手におカネを使うようになりました。投げ銭イベントも度々行いましたが、先行投資ばかりでペイすることはなかったようです。実態は親会社からの資金提供に依存するだけの自転車操業でしたね」(同前)
2024年末から2025年1月頃には赤字が常態化していた。
「マイナスの多い月は5000万から6000万円もの赤字を垂れ流す泥沼状態だったそうです。どうやら親会社からの資金提供の蛇口が閉められ、崩壊への道をたどったようです」(同前)
事態は2026年5月末に動いた。5月28日、親会社である株式会社ブレイン・イノベーションの代表取締役が突如として交代。そして6月1日にサービスそのものが停止し、ユーザーからは《アプリに繋がらない》《サイトが見られない》といった不具合の報告が相次いだ。
混乱が広がる中、同月3日にエブリライブ社の当時の影山和義代表を含む取締役5名が一斉に辞任。後任には、親会社の代表と同じ人物が新代表として就任した。さらに同日、現場のスタッフたちには突如として“解雇通知”が突きつけられたのである。同社の元社員が当日の地獄絵図を振り返る。
「僕ら正社員15名に加え、派遣や業務委託のスタッフを含めると約30名が、6月3日付で一斉に契約を打ち切られました。派遣や業務委託の方たちは別室に集められ、説明を受けていました。一部の人間は財務処理のために残務を行っていましたが、その後すぐに『自宅待機』を命じられ、会社へのアクセスも完全に断たれました。4月分の給与は支払われたものの、5月分の給与は全社員に対して未払いのままです。会社側からは『振り込む予定はない』とハッキリ言われました。旧役員たちは『自分たちにできることはない』と言い残し、現場を見捨てて逃亡してしまったのです」
2026年7月28日現在、エブリライブのアプリや公式サイトにアクセスすると「502 Bad Gateway」というサーバーのエラーメッセージが表示されるのみだ。実質的な「夜逃げ」状態のまま放置されている。この無責任な消滅劇によって、全国の被害者たちは深い絶望の淵に突き落とされている。別の関係者もこう憤る。
「プロモーションの計画もすべて白紙になり、運営会社とは完全に音信不通になりました。連絡窓口が消滅し、はしごを外されて困惑しています」
被害は配信報酬だけにとどまらない。エブリライブ内でイベントを開催する予定だった、エンタメ関連会社を経営する社長も強い怒りをあらわにする。
「私たちはエブリライブ側と、配信イベントの賞品としてラジオの出演枠などを提供する契約を結んでいました。しかし、賞品の提供など一切履行されないまま、サービスが完全にストップしてしまったのです。事後処理などにより、自社で約400万円の損害が生まれています。今、エブリライブ側が提供するはずだった都内11カ所でのビジョン広告も放映されていないという声がSNS上で多数発信されています。それらを楽しみにしていたライバーや関係者の信頼を裏切ったことが本当に許せません」
最盛期には月間1億8000万円以上もの大金を動かし、多くの若者たちの希望を乗せていた巨大プラットフォーム。その資金は一体どこへ消え、なぜ彼らは責任を放棄したのか。
本誌は事業が崩壊へと向かう過程で代表取締役社長を務め、突如辞任した影山氏に取材を申し込んだ。役員一斉辞任の経緯、親会社への不透明な資金移動の疑惑、社員やライバー事務所への未払いなどについて、事実関係の確認を求めたが、指定した期日になっても同氏からは一切回答がなかった。
記者が同社のオフィスを訪れると、机や椅子、パソコンが置かれたままガランとしていた。入口には「債権者の皆様へ」と題された文書が張り出され、弁護士と連携しているという趣旨が記されていた。
夢を売るビジネスに携わる者たちのあまりにも無責任な幕引き。残された数百人以上のライバーや未払い給与に苦しむ元社員たちの怒りと悲しみは、今なお解消されていない。
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