
「日本レコード大賞で、アイナちゃんの歌声を聴いて衝撃を受けました」(坂本冬美、写真・福田ヨシツグ)
これまでにも目黒蓮、LiSA、HYDE、幾田りら…と、どういう組み合わせなの? という異色の対談を連発してきた坂本冬美(59)ですが、今回のゲストは異色中の異色、魂の歌声を持つアーティスト、アイナ・ジ・エンド(31)。いったい何が飛び出すのか!? 予測不能のぶっちゃけトーク、スタートです。
坂本 アイナちゃんとは初めまして……じゃないんだけど、でもやっぱり、初めましてだよね。
アイナ・ジ・エンド(以下アイナ) はい。
ーーどういうことですか?
坂本 昨年の日本レコード大賞でアイナちゃんの歌声を聴いて、ものすごく衝撃を受けて。で、翌日『NHK紅白歌合戦』で一緒になったときに、「ちょっと昨日観たわよ。よかったわぁ~~〜!」と、関西のおばちゃん丸出しで声をかけたんですよ(苦笑)。
アイナ そうです。そう言っていただいた記憶はあります。
坂本 でもね、廊下ですれ違いざまに言ったものだから、アイナちゃんは何がなんだかわからなかったんじゃないかな。あ、あ、あ、あ、という感じだったから(笑)。
アイナ それまで、テレビ画面の中でしか観たことのなかった冬美さんからいきなり声をかけていただいて……確かに、そんな感じでした(苦笑)。
坂本 だから、初めましてじゃないんだけど、でも初めましてなんだよね。
アイナ はい。気持ち的には初めまして、です(笑)。
■「しゃべるな!」「体で表現しろ!」と指導
ーー冬美さんがいきなり声をかけるほど、衝撃的な歌声だったんですね。
坂本 アイナちゃんのことを、ちあきなおみさんみたいだって言った方がいるんですよ。誰が言ったのかは、後でアイナちゃんだけにこっそり教えますけどね。ちあきなおみさん、知ってるかな?
アイナ はい、もちろん。そう言っていただけるのは、とても嬉しいです。
坂本 でね、レコ大でアイナちゃんの歌を聴いて、パフォーマンスを観て、あぁそうだと思ったの。もう、完全な憑依型。何かが乗り移ったように歌っているでしょう?
アイナ そう……ですね。だからなのかはわかりませんが、歌い終わった瞬間、歌っていた自分が恥ずかしくなります。
坂本 でも、あれもアイナちゃんなのよね。別人ではない、もう一人のアイナちゃん。子供のころからそうだったのかな?
アイナ そうですね。小さいころから、自分自身が木になるとか、風になるとかいうコンテンポラリーダンスをやっていて。言葉で表現しようとすると、「しゃべるな!」「楽すんな!」「体で表現しろ!」と先生から怒られていたので、気がついたらそうなっていました。
坂本 (尾沢)奈津子先生から?
アイナ え〜〜〜っ!? なんで、奈津子先生のことを知っているんですか?
坂本 ふふふっ。対談する前に、アイナちゃんが書いた『達者じゃなくても』を読んできたからね。アイナちゃんのことは、けっこう知ってるわよ。初めての武道館ライブを前に、緊張と不安で喫茶店で泣いちゃったとか(笑)。
アイナ すごい、すごい、すごい! 読んでくださったんですね。ありがとうございます。私は冬美さんの師匠、猪俣公章先生が書かれた本を読んできました。
坂本 猪俣先生の!? それはまた、すごいところにいったわね(苦笑)。
ーー表現するということでは、冬美さんとアイナさんは同じところで勝負していると思うのですが……。
坂本 わたしの場合は、表現するというよりも演じている。自分そのものじゃなくて、演じている自分をどこかで客観視しているんだけど、アイナちゃんはそうじゃないでしょう?
アイナ そこに、客観的な自分はいないです。
坂本 ちあきなおみさんもそうなんだけど、音が鳴った瞬間、そのものになっているんですよね。それって、すごいことなんですよ。
アイナ 対談をさせていただくことになってから、冬美さんが歌っている映像をめっちゃ拝見したんですけど……。
坂本 恥ずかしいなぁ(苦笑)。
アイナ 自分を客観視していらっしゃる冬美さんがもうすごすぎて、溜め息ばかりついていました。
坂本 いや、いや、いや。
アイナ たとえば、花吹雪が降ってきたときに、しっかりと上を見ていて。カメラがこっちから来ているから、ちょっと斜めを向くとか……すべて計算され尽くした美しさなんです。
坂本 そこまでじゃないですけどね(苦笑)。わたしとアイナちゃんでは、タイプが全然違います。わたしは憑依型のアイナちゃんをすごいと思うし。
アイナ 私は、冬美さんの計算され尽くした美しさに憧れます。
坂本 あらら、お互い褒め合ってる(笑)。
アイナ 冬美さんに伺いたいことがいっぱいあるんですけど、聞いてもいいですか?
坂本 もちろん。どんどん聞いて。
アイナ 冬美さんは演歌独特の、喉でしゃくって降ろすみたいな歌い方をされるじゃないですか。あれって子供のころからできたんですか?
坂本 前はね、もっと喉でまわしてコロンコロン、コロンコロンと響かせることが自在にできたんだけど、猪俣先生に「クセが強すぎて邪魔になるからあまり使うな」って言われて。抑えているうちにあまりできなくなっちゃった。
アイナ でも、あれですよね。ここでコロンとしたいなって思ったら、声を喉に当てられるということですよね?
坂本 それはできる。
アイナ すご〜〜〜い! 尊敬します。
坂本 だけど、わたしはファルセットが苦手だから、そのチェンジのところが全然できない(苦笑)。
アイナ それは、ミックスボイス的な?
坂本 そう。だから喉を締めて、地声を張り通す(笑)。
アイナ ロックンロールですね。
坂本 そんな感じかな(笑)。
アイナ やっぱり、冬美さんはすごいです。
坂本 いやいや。アイナちゃんのほうこそ、低音はめちゃくちゃいい声してるやん。で、中音になると、少し喉を開いた感じで歌っていて。
アイナ はい。そうです。
■「お前が歌えよ!」と客席にダイブ(苦笑)
坂本 高音は少し締める感じなの?
アイナ そこはあまり意識していないですね。
坂本 でも、声の色は違うよね?
アイナ 確かに違いますね。
坂本 そこは意識してやっている?
アイナ う〜〜〜〜〜ん。どうだろう!? いや、そこは考えていないですね。
坂本 そうなんだ。自然にやっているんだ!? それはそれですごい。
アイナ 「BiSH」の曲はロックサウンドが多くて「ファルセットは甘えだ。地声でいけ!」という方向性だったので、声の色を意識するというより、無理やり音域を広げていったという感じです。
坂本 力技だ(笑)。若くて、喉にも柔軟性があるからできたことだけど、一度、声帯結節(ポリープの一種)の手術もしているんだよね?
アイナ 2016年12月です。それまでは、毎日ライブでどこまで地声で勝負できるかに挑戦した後、移動は夜行バス。乾燥で喉がやられちゃって、もう最悪でした(苦笑)。
坂本 それでも歌っていたんでしょう?
アイナ 最初は処方していただいたステロイドでなんとか誤魔化せていたんですけど、だんだん声が出づらくなって。手術前は「お前が歌えよ!」とか叫びながら、客席にダイブしていました(苦笑)。
坂本 そんな手を使っていたんだ!? 最高だね(笑)。
アイナ 猪俣先生の本を読んで、わからない言葉があったんですけど……。
坂本 なんだろう?
アイナ ウチデシと読むのかな。あれがわからなくて……。
坂本 内弟子ね。そうか、アイナちゃんの世代だとわからないわよね。落語の世界とかもそうなんだけど、先生の家に住み込んで、お掃除をしたり食事の支度をしたり、先生の身のまわりのお世話をしたり、付き人みたいなことをしたり。
アイナ へぇ〜〜〜〜。すごい! で、その代わりに、歌のレッスンをしてもらう?
坂本 普通はね、そうです。でもウチの先生は、歌の練習はほとんどなしで。先生が言うには、スカウトした時点ですでに7割、8割、実力はあるんだから、あとは自分にまかせろと。
アイナ カッコいい! 素敵です。
坂本 アイナちゃんもめっちゃカッコいいというか、踊って歌って、いろんな意味で大きな存在になっているけど、5年後、10年後、どうなっていたいという夢はあるの?
アイナ お着物を着て歌っている冬美さんを観ていると、ずっと歌っていらっしゃる人にしか出せないオーラと貫禄、生き様が声に乗っているというすごさを感じるんですけど、それが自分にできるかというと……。
坂本 でも、歌は歌っていたいでしょう?
アイナ 歌っていたいですけど……今はまだ60歳、70歳になって歌っている自分というのを想像できないんですよね。
坂本 これが欲しいとか、そういう欲は?
アイナ 一人で死にたくない。愛し、愛されていたいという欲はあります。
坂本 それは、パートナーということ?
アイナ パートナーでもいいし、犬……大型犬でもいいんですけどね(笑)。
坂本 大型犬!? あはは……わたしはパートナーはいないんだけど(笑)。でも、スタッフもそうだし、ファンの方もそうだし、たくさん愛は感じているわよ。
アイナ そういうことをさらりと言える冬美さんが素敵です。素敵すぎます。
坂本 そんなことないって。アイナちゃんこそ、かわいい。すごくかわいいから、ずっとそのままでいってほしい。
アイナ 本当……ですか?
坂本 うん。だから、これからも自分が歌いたいという曲を作ってほしいし、いろんな人にアイナちゃん色の歌を提供していってほしい。そういう欲はあるんでしょう?
アイナ それはあります。事務所の後輩グループ「KiSS KiSS」に書いた『KiSS KiSS SUNSET』と、SixTONESの松村北斗さんのソロ曲『ガラス花』の2回だけですが、すごく楽しくて。機会をいただけるなら、またぜひ! です。
坂本 そういうときって、あらかじめテーマを決めてから作るの?
アイナ 松村さんのときはそうでしたね。リモートで打ち合わせをさせていただいて。どんな方なのか、松村さんのことをいっぱい伺って、恋をするとどういう人になるのかとか、伺ったお話を反映させて作りました。
ーーもしもですが、冬美さんの歌を作るとしたら、どんな曲にしたいですか。
アイナ え〜〜〜〜〜〜っ!? 冬美さんになんて、そんなおこがましすぎます。
坂本 おこがましい!? どこが?
アイナ 全部です。でも、もしも、もしも、もしもですけど、作らせていただけるとしたら、まず冬美さんの内弟子をさせていただいてからです。
坂本 わたしの内弟子!? あははははははは。おかしい。おかしいけど、すごくいい!
アイナ はい。それで、経験したことを入れ込んだ『内弟子』という曲を書きたいです。
坂本 その発想、もう最高! アイナちゃんは、やっぱり最高だわ(笑)。
さかもとふゆみ
1967年3月30日生まれ 和歌山県出身 1987年に『あばれ太鼓』でデビュー。『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。現在、デビュー40周年ベスト盤『坂本冬美40thベスト~轍~』が発売中
あいな・じ・えんど
1994年12月27日生まれ 大阪府出身 2015年に「BiSH」のメンバーとして始動。グループとして活動しながら、2022年にはブロードウェイミュージカル『ジャニス』の主役に抜擢され、翌年には、岩井俊二監督の映画『キリエのうた』で初主演を務め、俳優としても注目を集める。BiSH解散後は、ソロアーティストとして活躍。今年4月に、TVアニメ『ONE PIECE』エルバフ編のオープニング主題歌『ルミナス - Luminous』を担当
写真・福田ヨシツグ
取材&文・工藤 晋
スタイリスト・小泉美智子(坂本)、Ai Suganuma (TRON)(アイナ)
ヘアメイク・岡崎じゅん(坂本)、konatsu(XICO Inc)(アイナ)
衣装&ピアス・MELLERIO(坂本)
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