
デニムにブルーのシャツを着こなす蒼井優
ここまで引っ張っておいて、「本当に不倫してました」というオチならさすがに安っぽすぎる。7月31日(金)に第4話が放送された、蒼井優主演の金曜ドラマ『Tシャツが乾くまで』(TBS系)のことだ。
本作の脚本を担当するのは、2022年に連ドラデビュー作だった『silent』(フジテレビ系)で、いきなり社会現象を巻き起こした生方美久氏。
『silent』はTVerでの総再生数が驚異の計7300万再生を超えており、歴代の全ドラマのなかでNo.1の記録を持つ大ヒット作。生方氏の2024年の作品『海のはじまり』(フジテレビ系)もTVerの総再生数が7200万超えを果たしており、「TVer時代の寵児」と言っても過言ではない存在となっている。
そんな生方氏が手がける『Tシャツが乾くまで』も、TVerの記録を更新中。第1話はいきなり347万再生を叩き出して、金曜ドラマ枠における歴代1位を記録。その自身が打ち立てた記録を第2話が367万再生で塗り替え、続く第3話が374万再生でさらに塗り替えられた。
■注目は脚本家・生方美久氏の放送前コメント
『Tシャツが乾くまで』は2組の夫婦を中心としたストーリー。
喫茶店の店主をしている夫・瀬尾充(松山ケンイチ)と仲睦まじく2人暮らしをしていた瀬尾咲子(蒼井優)。一方、園田樹生(中島歩)は妻・園田あずさ(夏帆)と幼い息子とともに幸せな家庭を築いていた。
しかし、第1話中盤で東京から長野に向かう高速バスの転落事故が発生。バスに乗車していたあずさは亡くなってしまい、同じバスに乗っていた充は行方不明に。そして、第1話ラスト、咲子は樹生から「あなたの夫、僕の妻と不倫してましたよ」と告げられる。
第4話時点で充の生存は確定しているため、最大の焦点は充とあずさが本当に不倫していたのかどうかだろう。
本作は放送までストーリーの詳細が伏せられており、まさかの不倫展開だったので、第1話終了後からSNSなどでバズッたという経緯がある。
また、生方氏は、放送前に公式サイトへ寄せていたコメントで、《共感や感動を目指した物語ではないので、人間観察の感覚でお楽しみください。》という意味心な発言をしていた。
生みの親である脚本家が共感も感動も目指していないとはっきり宣言しており、第1話のフタを開けると不倫が示唆されたため、人間の醜い部分に焦点を当てた愛憎入り乱れるドロドロのドラマになるのでは、と予想した視聴者も多いに違いない。
■本当に不倫していたとしたらあまりにチープ
本当に充とあずさは不倫関係だったのか?
まず、充は元気で生きているのに咲子のもとに帰ってこないのは、あずさとの関係性が後ろめたいものだったからという可能性はある。また、第4話では花火大会と水族館のチケットが不倫の証拠として登場していた。
咲子は高校時代、花火大会の人混みのなかで痴漢に遭い、それ以来トラウマになっていることを知っているにもかかわらず、充が花火大会のチケットを2枚持っていたことが発覚。
一方、樹生は幼少期に水族館で迷子になってしまい、館内の薄暗いエリアがトラウマになっているにもかかわらず、それを知っているはずのあずさが水族館のチケットを2枚持っていたことも発覚していた。
要するに、自分が苦手なスポットのチケットをパートナーが持っていたため、不倫相手との秘密のデートに行くつもりだったのだと、咲子も樹生も思い込んでいる。
このように、充とあずさが不倫していた可能性を高める証拠が次々と積み重なっているのだが、連続ドラマというジャンルであることを考えると、逆説的に「だからこそ不倫ではない」と考えることもできそうだ。
もし現実でここまで状況証拠が積み上がっていれば、「不倫はほぼ確定」と考えていいだろうが、これは毎週毎週、視聴者の興味を引きつける必要があるエンタメ作品。そして、視聴者を驚かせることが物語の吸引力につながるわけである。
だから、ここまで充とあずさの不倫関係をさんざん匂わせておいて、「本当に不倫してました」というオチだとしたら驚きはないし、あまりにもチープすぎる。
■“不倫の証拠” が “愛情の証拠” に変わる?
生方氏は《共感や感動を目指した物語ではない》とコメントしているが、この発言はミスリードで、最後は思いっきり感動させるつもりのドラマなのではないかとも考えられる。
第4話でフィーチャーされた花火大会と水族館のチケットは、まさにその感動展開への伏線なのではないか。
たしかに咲子と樹生にとってトラウマとなっているのは間違いない。だが、咲子は樹生と花火大会へ訪れた際、樹生から「本当は来たくなかったんじゃ?」と尋ねられ、「ううん。もう何年も来たいけど、怖い怖い、けど来たい、だったんです」と、花火大会への複雑な想いを吐露していた。
一方の樹生も、代わりに水族館に行ってきた咲子からイルカショーやアシカショーを楽しんだ報告を受けた際、「そういうイベントみたいなやるところは明るいですよね」と語ったあと、「そういうとこならな……」とつぶやいていた。水族館の水槽がある薄暗いエリアは苦手だが、ショーを開催する明るいエリアにイヤな感覚はなく、むしろ興味があるような発言である。
つまり、咲子も樹生もそのスポットを全否定しているわけではなく、むしろ苦手を克服したいという前向きな気持ちや、エリアによっては楽しめそうという好意的な気持ちの片鱗を覗かせていたわけだ。
充もあずさも裏切り行為なんてしておらず、ずっと愛し続けてくれていたとしたら、パートナーが苦手としている場所について、心の奥底にある本音まで気づいていた可能性は十分あるだろう。
そして、最愛の人が苦手な場所にずっと行けない人生よりも、自分が寄り添うことでそのトラウマを乗り越えられる人生にしてあげたいと思っていたとしたら……?
もし、物語中盤で “不倫の証拠” として登場した鬱々とするキーアイテムが、物語終盤で “愛情の証拠” に変わるとしたら、涙腺崩壊級の感動のトリガーになりそうだ。
今夜の放送は第5話。物語が約1年後にジャンプし、第2章の幕が上がることが予告されている。咲子と樹生の関係性に変化はあるのか、充とあずさの不倫の真相は明らかになるのか、注目だ。
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