
秦 基博
愛する人への、深くて熱い想いがこめられた歌を歌ったハートウオーミングなカバーアルバム『想いびと』(2024年6月発売)の1曲めに収録させていただいたのが、この『ひまわりの約束』です。
「秦基博さんの『ひまわりの約束』はどうかな?」
選曲会議の席上、誰が言いだしたのかは覚えていませんが、え? え? え? と、頭の中で疑問符が踊っていたのは覚えています。
だって、チビッ子からお爺ちゃん、お婆ちゃんまでご存じの作品『ドラえもん』の映画主題歌ですよ。その名曲をこのわたしが歌う!? 誰がそんなことを予想しますか。
さすがにイメージが違いすぎ……あっ、でも待ってください。カラオケでも、まさかこの人がこの歌を歌うの? という意外性が魅力になることもあるような……。
わかりました。演歌のわたしが、ポップス特有の細かな譜割りに言葉をきれいに乗せて歌うためには、相当の努力と時間が必要ですが、挑戦してみましょう!
一度でメロディを覚えられたらいいんですけど、わたしの場合、それは間違ってもあり得ないので、鼻歌でもメロディが自然に出てくるくらいになるまで原曲を何百回も聴き、さらに何百回も練習を重ね、いったんすべてを白紙に戻してレコーディングスタジオへ。
あぁそういえば秦さんとは一度、馴染みのお鮨屋さんで一緒になったことがあったなぁ。
そうだ。あのとき秦さんは、お店の常連、『愛は勝つ』のKANさんと一緒だった……。
容量の少ない記憶回路から、あれこれ掘り起こし、くすりと笑みを浮かべた後、頭の中を占めたのは、のび太くんとドラえもんです。
歌詞に自分自身を重ねすぎると、聴いてくださる方にとってはちょっと重くなってしまうので、余白を残して、聴いてくださる方が愛する人を思い浮かべることができるように……。
自分自身が歌の世界に酔ってしまうと、広がりを欠いてしまうのでできるだけ感情は抑え気味に……。
のび太くんがドラえもんを、ドラえもんがのび太くんを想う優しさやぬくもりが、聴いてくださる方にまっすぐに届くようにーー。
100%譜面どおりに…と言いたいところですが、わたし自身の歌も含めて、いまだかつて譜面どおりに歌えたことは一度もないので、なるだけ、できる範囲で譜面に忠実に(苦笑)。
いや、あの……譜面は大事です。それは間違いありません。
でも、譜面どおりにピッチもしっかり合わせて音を作ったとして、それが完璧なのかと言われたら、それがそうでもなくて。
ちょっとズレているけど、それが味になるという場合もありますし、歌ったときの癖が聴いてくださる方の心に刺さるということもあります。そこがものすごく難しいところで……モゴモゴモゴ。
40年歌ってきて、何が正解なのかはいまだにわかりません。
演歌歌手の私が歌えば、ポップスを歌ってもロックを歌っても、全部演歌に聴こえるという方もいらっしゃると思います。
それを否定はしませんが、100人の人が『ひまわりの約束』を歌ったら、そこには、100通りの『ひまわりの約束』がある。そう思っていただけたら、歌う楽しさも広がっていくような気がします。
さかもとふゆみ
1967 年3月30日生まれ 和歌山県出身『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。現在、40周年記念シングル第2弾『ひらり』が好評発売中!
写真・中村 功
取材&文・工藤 晋
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