
坂口健太郎
最終話を観るまで作品全体の評価はできないのは当然のこと。だが、連続ドラマの初回として評するなら “駄作の見本” のようだった。
10月6日(火)にスタートした坂口健太郎主演の連続ドラマ『kiDnap GAME』(フジテレビ系)のことだ。
本作はフジテレビが香港・韓国の制作会社と組んだ海外共同製作作品。東京、ソウル、台北、シンガポール、バンコク、那覇、マニラという7都市を舞台に展開される、スケールの大きいドラマとなっている。
しかし、初回の視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)は世帯4.7%、個人2.6%と厳しい船出。
本作のエグゼクティブプロデューサーは、『イカゲーム』のような世界的大ヒットコンテンツにすることを目標にしているようだが、正直難しいだろう。
なぜなら、視聴率がコケている以上に、初回が散々な内容だったからである。
■「掴みが弱い」ということに尽きる
第1話が “駄作の見本” のようだった原因を一言で表すなら、「掴みが弱い」ということに尽きる。
視聴者をグイグイ没入させていくためのストーリーの “グリップ力” が貧弱すぎるのだ。まずは、あらすじを説明しておこう。
アジア7都市で同時多発誘拐事件が発生し、主人公の刑事(坂口)の妻が東京でさらわれてしまう。そして各都市で誘拐された人質の家族や恋人が、愛する者を救出するために命懸けのゲーム「kiDnap GAME」に強制参加させられるという物語である。
ちなみに、このあらすじは放送前から公式サイトに掲載されていたし、そもそもトップページのメインビジュアルにも、《アジア7都市同時多発誘拐事件発生――。》というキャッチコピーが躍っている。
そして冒頭シーンは、同時多発誘拐事件を報じる各国のニュース映像で幕を開ける。その後、劇中は36時間前までさかのぼり、各地で7人が誘拐されるまでが描かれた。
つまり、視聴者は同時多発誘拐事件を知っているのに、第1話は事件発生までをたらたら描いていただけ。本当にちんたらしたストーリーであくびが出そうになってしまったほどだ。
■2話めも観てくれることが前提の初回
一番の長尺だったのは、もちろん坂口演じる東京の刑事のエピソードで、次いで韓国の人気俳優・イ・ジュンギが演じるソウルの医師のエピソードもきちんと尺を割いていく。ほかの5都市のエピソードは短めだったが、主要キャラたちなので途中途中で何シーンずつかは挿入されていく。
主人公の刑事がどんな過去を背負っているかや、妻とのなれそめ、現在の関係性が描かれ、他都市のパートも「kiDnap GAME」参加者とさらわれる人物の関係性が描かれる。要するに第1話は人物紹介に終始していた印象なのだ。
これがもう、観るのがしんどかった。誘拐事件が発生してからがこのドラマの本番だろうに、肝心の事件が終盤まで起こらないのである。
もちろん、物語が本格的に動き出す第2話以降のために、登場人物たちをきちんと紹介しておきたいという意図はわかる。言わば、どっしりと構えた横綱相撲的な第1話だったわけだが、しかしそれは圧倒的実力者にだけ許された手法ではないか。
第2話、第3話とその後も観てくれることが前提の第1話となっており、フジテレビはどれだけ視聴者を舐めていて、どれだけ頭の中がお花畑なんだと呆れ果ててしまった。フジテレビへの世間の評価がこんなにも下がっているのに、それでもまだフジには奢りがあるのだと思う。
多くの視聴者は、初回でおもしろいかどうかわからないドラマを観続けるほど暇じゃない。実際、他作品でもお試しで初回を観たものの心を掴まれず多くの視聴者が脱落してしまうケースは多いし、第2話で視聴率が激減してそのまま右肩下がりを続けるケースもごまんとある。
素人でも「連ドラは初回の掴みが超重要」だってことぐらいわかるのに、フジテレビはわかっていないのか。
■最後まで観る視聴者がどれだけいるか
終盤で同時多発する誘拐事件が、せめて予想外の展開になるなどしてかなりショッキングであれば、初回のラストでグイッと心を掴まれて没入できたかもしれないが、1つも予想外の驚きはなかった。数々のドラマや映画でさんざんこすられてきたテンプレどおりの誘拐シーンが描かれ、なんのサプライズもないことに逆に驚いたぐらいだ。
だらだらと人物紹介を見せられて、最後にあらすじどおりの誘拐事件がオーソドックスに起こって、初回終了。なんじゃこりゃ。
冒頭のニュース映像からそのままいきなり「kiDnap GAME」が開幕するという緊迫感ある展開にすれば、序盤から心を掴まれた可能性もあるが、残念ながらそれは第2話におあずけになっている。
第1話でご丁寧に描いていたそれぞれのキャラの関係性などは、「kiDnap GAME」をスリリングに描きながら、要所要所で回想シーンとして入れるという方法でもよかったのではないか。とにかく、初回で視聴者の心を引きつけようという気概も工夫も感じられない脚本だった。
仮に最終話まで観れば「おもしろい!」「名作!」という評価になるとしても、辛抱強く最後まで観てくれる視聴者がどれだけいるのか、はなはだ疑問だ。
今夜放送の第2話からいよいよ「kiDnap GAME」が開幕する。ここからストーリーが盛り上がってくるのかもしれないが、多くの視聴者が脱落しており、時すでに遅しとなっていないことを祈る。
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