
TBS日曜劇場『VIVANT』の撮影に臨む堺雅人。今期のドラマ界には “VIVANT病” が蔓延しているという
秋の夜長を彩る10月期ドラマ。今期は人気シリーズの続編や、名作を生んだ脚本家と女優の再タッグなど “豊作” が多いと前評判が高い。本誌恒例となった、カリスマドラマウォッチャーのペリー荻野さんと桧山珠美さんによる、民放各局ドラマの「第1話採点」をお届けする。
まず、2人が「今後が気になる」と話すのは『いろはの恋は時代をかける』(TBS系、火曜22時~)。令和の小学校教師、梨木彩葉(いろは)に、江戸時代の飛脚の娘、いろはの魂がタイムスリップする、時代を越えたロマンティックコメディだ。上白石萌音が彩葉&いろはの2役を、同僚教師の一ノ瀬を向井康二が演じる。
ペリー 江戸時代と現代、主題歌はMISIAと、かつてのドラマ『JIN-仁-』(TBS系)が逆になった感じですよね(笑)。
桧山 私は教育現場のタイムスリップものということで、江戸時代と令和の『不適切にもほどがある!』(TBS系、2024年)を思い出しました。脚本は、NHK連続テレビ小説『らんまん』(2023年)などを手がけた長田育恵さん。しっかりした脚本を書かれるので、いまの教育現場の事情なども絡めてくるのだろうと、楽しみです。
彩葉は打たれ弱いタイプで、いろはは元気いっぱいの江戸っ子。上白石さんの演じ分けが、なにかが乗り移ったみたいで、機会があったら、『ガラスの仮面』の主人公・北島マヤを演じてほしいと思いました。江戸言葉に詳しいペリーさんには、どんなふうに映りましたか?
ペリー 飛脚はスピードを求められる商売だから、鉄火肌でテンポのいい江戸の言葉を使っていますよね。いろはが算術を教わる関孝和(大森元貴)は実在した人物で、和算の開祖なんですよ。飛脚はお金のやり取りをする商売。江戸時代、実用的な算術は進んでいて、いろはが学んだことが、教師の彩葉につながってくるのではないかと読んでいます。
いろはが令和の時代で起こすトラブルを、校長先生を務めるYOUさんがどうジャッジするのか。YOUさんが校長先生役というのも驚きです(笑)。
――次に2人が注目するのは『LOST10』(TBS系、金曜22時~)。北海道の登山ツアー中に起きた遭難事故を追う、横浜流星演じる刑事・小駒と、小栗旬演じる保険調査員・直が、事件の真相に迫るヒューマンサスペンスだ。
桧山 映画『国宝』(2025年)の脚本を担当した奥寺佐渡子さんと横浜流星さんが、再タッグを組んだ作品です。演出が塚原あゆ子さん、プロデュースが新井順子さんと『Nのために』(TBS系、2014年)や『最愛』(同、2021年)のスタッフが集結しているので、期待は大きいですね。ミステリーらしくしっかりした作品で、1話から引き込まれました。
ペリー 舞台が山岳地帯で、都会で起きる事件とは違うおもしろさがあります。気になったのは、主演の2人が “カッコよくしないキャンペーン” でもやっているのではと思うくらい、オーラをグッと抑えているところ。「この人、なにかありそう」という謎めいた雰囲気を出しているんですよね。
桧山 さらに、斉藤由貴さんの怪演も忘れちゃいけません。
ペリー 最近、“怪演ではない斉藤由貴” を見たことがないですね(笑)。
桧山 雄大な北海道を舞台に、スケールの大きなドラマを描くぞ、という意気込みを感じます。
ペリー どうも『VIVANT』(TBS系、日曜21時~)以来、各局 “大きいことやりたい” というような空気を感じますよね。
桧山 わかります! 今期、ドラマ界に “VIVANT病” が蔓延しています。『KiDnap GAME』(フジテレビ系、火曜21時~)も、『VIVANT』がやりたかったのかなと思いました。アジア7都市で同時に誘拐事件なんて、そこまでただスケールを大きくしたかっただけなのでは(笑)。
――『KiDnap GAME』は、同時誘拐事件の関係者が、それぞれ大切な人を救うため、犯人からの指令をクリアしていくというストーリー。坂口健太郎、韓国の人気俳優、イ・ジュンギなどが出演している。
ペリー 『VIVANT』は、地上波でもこれだけのことができる、という誇りを賭けたドラマだと思うんです。とはいえ、その向かう先には、ドラマの世界配信という広がりがあると思います。『KiDnap GAME』は、18の国と地域で放送・配信される大型プロジェクトということで、フジテレビにとって渾身の一作なんでしょう。
ただ、地上波で夜9時からドラマを見る人のライフスタイルとマッチングしているかというと、なかなか難しい気がします。大々的に配信をしてから地上波放送にしたほうが、無料で見られるお得さを感じられた気がします。
桧山 たしかに、引き算は大事ですよね。『波うららかに、めおと日和』(フジテレビ系、木曜22時~)も、前作で “うぶキュン” が話題になったからなのか、続編の1話を見る限りでは “うぶキュン” が過剰に感じました。
――『波うららかに~』は、2025年に放送された、昭和初期が舞台の新婚ラブコメディの続編。前作から1年後となる、昭和12年が描かれる。芳根京子と本田響矢が相変わらず初々しい夫婦を演じる。
ペリー 時代的に、今後は戦争が描かれると思うので、どう絡んでくるのか。このドラマは、芳根京子さんの持ち芸である “おとぼけ芸” を堪能するものです。海外とかサスペンスとか別の顔がある、みたいな “大きい” テーマの作品が多いなか、このドラマの芳根京子にもうひとつの顔はないですから、観ていてホッとします(笑)。
――今期は「脚本で見せる作品が多い」というのが、2人に共通した印象だという。前出の『いろはの恋は~』のほか、『ポリティカルパン』(フジテレビ系、木曜22時~)がその代表だ。主演の石原さとみと脚本の野木亜紀子氏が『アンナチュラル』(TBS系、2018年)以来、8年ぶりにタッグを組んだ作品で、石原演じる史上最強の “女ルパン” が政界へと潜り込み、政治の金を鮮やかに奪い取っていく、怪盗エンターテインメントだ。
桧山 野木さんの脚本と聞けば、やはり期待せずにはいられません。しかも、石原さとみさんをイメージして、主人公を当て書きしたと聞いたら、おもしろいだろうなって思いますよね。元総理大臣の娘を演じる河合優実も、いい感じです。
ただ、もったいないと思うのが、6月まで放送していた『銀河の一票』(フジテレビ系)の記憶が、まだ残っていること。政治を舞台にしたエンタメという似たジャンルで、視聴者の頭をよぎると思うんですよ。
ペリー タイトルだけ見たら、屋根をぴょんぴょん飛び移っていく『ひとりキャッツ・アイ』を想像してしまいますけど、違ってました(笑)。
桧山 石原さんがレオタード着るのか、と(笑)。怪盗ものではなく、政界を斬るみたいな話になっているので、一筋縄ではいかない感じは楽しめるんじゃないでしょうか。
ペリー ほかのキャストもすごくいいんです。ただ、浮世離れしたおもしろさと、お金に対するがめつさ、ずる賢さがまだ足りないんです。『コンフィデンスマンJP』シリーズ(フジテレビ系)のように、お金に対するガツガツ感がほしいというか。
“史上最強の女ルパン” とうたっているので、『女ねずみ小僧』(フジテレビ系)で「女ねずみ」を演じた大地真央ぐらいの、迫力とすごみを見せてほしいです(笑)。
――第1話の世帯視聴率が10%(ビデオリサーチ調べ・関東地区)と、『VIVANT』を除けば今期の最高視聴率でスタートを切ったのが、ダブル主演の江口洋介と松嶋菜々子が16年ぶりにタッグを組む『救命病棟24時』(フジテレビ系、月曜21時~)。これまで5シリーズが放送された、救命医を描く人気シリーズだ。
桧山 若手の医師たちが、若干ステレオタイプな印象ですが、コロナ禍を経て、救命救急がどう変わってきたのかということが描かれていたので、同じ時代を生きてきた視聴者には共感できるのでは。主題歌をDREAMS COME TRUEが歌っているのも、懐かしポイントですね。
長くシリーズ化されているドラマは、長年、観てきたファンが「ここが見たかった!」というシーンを出すのも必要ですよね。第1シリーズで研修医だった松嶋菜々子の初々しさとか。
ペリー 9月まで放送されていた『GTO』(フジテレビ系)もそうでしたが、主演の反町隆史さんの、前作でのシーンが出たから、ファンは喜んだんです。そして今回、『救命病棟24時』では、反町さんのヨメの松嶋菜々子さんが、それを受け入れている。夫婦の人柄のよさがにじみ出ています(笑)。
――過去作品のファンも新規のファンも、それぞれに秋の夜長を楽しもう。
ペリー荻野
コラムニスト・時代劇研究家。脚本家・三谷幸喜氏との共著『もうひとつ、いいですか?』が絶賛発売中
桧山珠美
コラムニスト。「日刊ゲンダイ」などでコラムを連載中。ギャラクシー賞選奨事業委員会テレビ部門委員長
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