
ゴールデンボンバー
テレビやラジオ、スマートフォンから流れてくる歌声を耳にして、 “初めて聴く歌だけどいい歌だなぁ” と思うことがあります。
「誰の、なんていう歌なんだろう?」
興味を抱き、アーティストと曲名を探し当て、何度も聴くまでが第1段階。聴くだけで満足する方もいらっしゃると思いますが、カラオケ好きの方は、ここで第2段階に突入。自分でも歌ってみたいと思うようになります。
ここで問題になるのが、歌いたいと思う気持ちと、うまく歌える歌との間には、見えない大きな壁があるということです。
わたしにも覚えがありますが、ゴールデンボンバーさんの『片想いでいい』も、そんな中の曲のひとつでした。
「いいちこさんから、『CMソングに使うカバー曲としてどうですか?』というお話が来ているんですけど、どうしましょうか?」
マネージャーの声が弾んでいたのは、願わくは『また君に恋してる』の再現を……という思いが声に滲んでいたからかもしれません(笑)。
そりゃね、わたしだって思いは一緒ですよ。 “なんか、おもしろそう” という軽い気持ちでお引き受けしたビリーバンバンさんの『また君に恋してる』のカバーが、まさかまさかの連続で、ダウンロード数450万回を超える大ヒットを記録したんですから。
気持ちは歌いたい、歌わせてほしいというほうに、ぐいっと傾きました。でも、それには大きな問題が……。
構成が難解すぎて、メロディが覚えられないというのがひとつ。もうひとつは、1音転調後の高音が、どれだけ頑張ってもうまく出せないということでした。
ふだんだったら「無理、無理、無理!」と、お断わりさせていただくところです。「ごめんなさい、わたしには歌えません」ですむ話です。
でもこのときは、「次も坂本冬美さんに」と言ってくださった、いいちこさんの気持ちを裏切るようで、「歌えません」とは言いたくなくて。歌えないことを“悔しい”と思うわたしがいました。
「無理しなくてもいいんじゃない?」と囁くわたしの横で、もう一人のわたしが「本当にそれでいいの!? 悔しいんでしょう?」と耳元で囁きます。
しつこいくらい何度も原曲を聴き直し、最終手段として思いついたのが、1音の転調を半音にできないか、ということでした。
無理は承知です。ダメだったら、もうすっぱりと諦めよう。そんな気持ちで、鬼龍院翔さんにお願いしてみると、いただいたお返事はーー。
「いかようにも変えてください!」という太っ腹なお言葉でした。
こんなにもジタバタし、どうにかして歌いたいと思わせてくれる歌にめぐり合えることは、長い間歌ってきたわたしにもそれほど多くはありません。
スローから始まって、後半は舌を噛みそうなくらい畳みかけてくるこの歌は、歌い終えたときには、もう精も根も尽き果てるほどヘロヘロです。
でも、今でも歌ってよかった。歌わせてもらってよかったと思わせてくれた一曲です。
歌ってみたいと思われた方は一度、無理をせず自分の音域に合わせてキーを調整して挑戦してみてください。魂を持っていかれちゃうくらいいい歌ですから。
さかもとふゆみ
1967 年3月30日生まれ 和歌山県出身『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。現在、40周年記念シングル第2弾『ひらり』が好評発売中!
写真・中村 功、長谷川新
取材&文・工藤 晋
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