
桑田佳祐
中森明菜さん、小泉今日子さん、早見優さん……といったトップアイドルが次々にデビューした1982年。オリコン年間シングルランキングは、1位があみんの『待つわ』。2位が薬師丸ひろ子さんの『セーラー服と機関銃』で、3位は岩崎宏美さんの『聖母たちのララバイ』。
年間アルバムランキング1位は、中島みゆきさんの『寒水魚』で、2位が山下達郎さんの『FOR YOU』。そして3位が、わたしが繰り返し繰り返し何度も聴いていた、サザンオールスターズの『NUDE MAN』です。
“初恋の人” 山本くんと、学校からの帰り道にデートで行った河原で、2人並んでカセットテープから流れてくる桑田(佳祐)さんの声に心をときめかせていました。
なかでもいちばんのお気に入りが、SideBの2曲め『Oh!クラウディア』です。
この歌に限らず、桑田さんがお書きになる歌詞には、日本語と引っ掛けた英語が多くて。それを耳で聴いたまま口ずさんでいるので、間違って歌っていることが多々ありましたね(苦笑)。
その後、山本くんとの悲しいお別れを経験したわたしは、一時期サザンオールスターズとも、アルバム『NUDE MAN』とも距離を置いてしまいましたが、その間も変わらず、ず〜〜〜〜〜っと聴いていたのが3年前、55歳の若さで亡くなった弟でした。
亡くなってから初めて知ったのですが、弟はカラオケに行くと、必ずこの『Oh!クラウディア』を歌っていたそうです。
2024年に出させていただいたカバーアルバム『想いびと』の会議で、この『Oh!クラウディア』が候補として挙がったときは、正直悩みました。
わたし自身、大好きな曲ですし、歌いたいという気持ちはあります。
でも、この曲を聴くと、弟とのお別れのシーンが甦ってきてしまいます。
歌いたい。でも、わたしに歌えるだろうか……。
毎日がその繰り返しです。大丈夫、歌える! と思った次の瞬間には、また不安がよぎります。
タイムアップが迫ったそんなある日のことでした。
「この曲を歌うのはツラいのよね」とスタッフに正直に打ち明けたとき、部屋に置いてあったバランスボールがスーッと動いたんです。
「そんな、バカな」と、笑ってくださってもかまいません。
「気のせいでしょう!?」という冷たい視線も、正面から受け止めます。
桑田さんが作ってくださった楽曲『ブッダのように私は死んだ』をリリースした際、「すごいな! あの桑田さんに曲を書いてもらったなんて、本当にすごいよ!!」と興奮して電話をかけてきた弟からの、 “歌ってほしい!” という最後のメッセージだったんだと、今でもそう思っています。
思いを乗せすぎると、涙で歌えなくなりそうだから、湧き上がってくる感情を抑えて、物語を話すような感じでレコーディングしたのが、わたしが歌った『Oh!クラウディア』です。
魂をこめて歌わせていただく歌もあれば、聴いてくださる方の耳に心地よくお届けできたら……と願いながら歌う歌もあります。
同じ曲でも違った曲に聴こえるのが歌の魅力であり、不思議なところであり、おもしろいところです。
皆さんもカラオケで歌うときは、いろいろとチャレンジしてみてください。
さかもとふゆみ
1967 年3月30日生まれ 和歌山県出身『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。現在、40周年記念シングル第2弾『ひらり』が好評発売中!
写真・中村 功、長谷川新
取材&文・工藤 晋
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