
独演会前の高座で “愛機” を披露する春風亭昇太
「大人の趣味」としてリバイバルしたプラモデルの奥深さを、著名人が語り尽くす。春風亭昇太(65)は、プラモデル王国・静岡の出身。タミヤや青島文化教材社、ハセガワなど老舗メーカーの本社や、バンダイのプラモ事業の拠点がある。
「2つ上の兄の影響で、小学2、3年生のころ、ゼンマイで自走する、旧日本陸軍の一式砲戦車を作ったのが最初ですね。モーター車は高くて買えなかった。ガメラのプラモも作ったな。ソフビより安かったんですよ」
父は金属メーカーの研究職。ゆえに、「組み立てることで、歴史や構造の勉強になると思ってくれていたんでしょう。おねだりも通りやすかったですね(笑)」。
この日持参したのは、零戦をベースにしたタミヤの「1/48 海軍二式水上戦闘機」。両翼のフロート(船形の浮き)が目立ち、いささか不格好だ。
「僕ね、きれいなモノってあんまり好きじゃないんです。作っていて楽しくないから。零戦よりも、固定脚が特徴的な九九式艦上爆撃機とか、ちょっといびつな機体に惹かれます。この二式水戦はプラモデルとして名機。ロングセラーですし、久々に作ろうかなというとき、つい手が伸びましたね」
そう、昇太は『笑点』(日本テレビ系)の司会に就任した2016年以降、しばらくプラモ作りを封印していたという。その封印を解いたのが約2年前。
「ただ組み立てて終わりじゃないですからね。塗装がまた大変。凝り性なせいか、なるべく忠実に塗りたいほうで、当時の写真資料と睨めっこして、時間がかかるんです」
戦闘後の傷やオイル汚れも再現した、その出来栄えは見事の一言だ。
「完成したら、たとえば飛行機なら飛ばす――手に持って空にかざし、写真に撮るんです。子供のころからの “儀式” ですね。こうやって、指先が写り込まないようにして……ほら、実際に飛んでるみたいでしょ?」
取材/文・鈴木隆祐