
「未着手のプラモだけで1000以上はある」と笑う藤島康介氏(写真・松沢雅彦)
「大人の趣味」としてリバイバルしたプラモデルの奥深さを、著名人が語り尽くす。故・鳥山明さんをはじめ、漫画家にはプラモ好きが多い。『逮捕しちゃうぞ』『ああっ女神さまっ』(講談社)で知られる藤島康介氏もそのひとりだ。
「ジャンルを問わず、なんでも作ります。ガンプラも美少女プラモも(笑)。限定生産品が多く、『買い逃すと次いつ出るかわからない』と思うと、つい手が出ちゃうんです」
取材当日に持参したのは、第一次大戦期のドイツの複葉戦闘機「ファルツD.IIIa」。ニュージーランドのウイングナットウイングス社製だ。
「10年ほど前に購入しました。映画監督のピーター・ジャクソンが立ち上げた飛行機専門の模型メーカーで、コロナ禍のころにつぶれちゃったんだけど、これは非常に優秀なキットですね。苦労した点は、翼に貼り込んだ細かなデカール(転写シール)かな」
と、重厚なケースから愛機を取り出した。
「当時の実機の記録を参照すると、必ずしも完成図どおりではないんですよ。だから、自分なりに加工して、独自の塗装を試しています。プラモ作りは、物をよく見る “目” を植えつけてくれましたね」
作中の精密なメカ描写は、その観察眼の賜物だ。初めてプラモに触れたのは、4~5歳のころだという。
「家にあったタミヤのホンダN360を、ひとりで接着剤まみれで作り上げたら、学校から帰ってきた兄が手放しで褒めてくれたんです。兄はプラモ作りが得意で、後にモデラーとして知られるほどでした。よく見せ合いっこしたな。4年前に亡くなりましたけど……」
専門誌で競作もした兄は、車の模型作りが得意だった。そんな兄譲りのビークル志向の集大成が、2016年から「月刊アフタヌーン」(講談社)で連載中の『トップウGP』。世界最高峰のバイクレース、MotoGPに挑む少年ライダーの物語だ。
「GPバイクはスポンサーの絡みなのか、キット化されづらいんですよ。昔はエンジンだけのモデルも何種かありましたけど。車やバイクは安い買い物じゃないし、置き場にも限りがある。でも、プラモだったらと、ついね……(苦笑)」
いまも、単なる趣味を超えた生きがいのようだ。
取材/文・鈴木隆祐