
獣神サンダー・ライガーは2020年に引退後も、レフェリーやサイン会で国内外を飛びまわる(写真・松沢雅彦)
「大人の趣味」としてリバイバルしたプラモデルの奥深さを、著名人が語り尽くす。新日本プロレスで活躍したプロレスラー、獣神サンダー・ライガーは自称「テレビっ子」。幼少期は特撮ドラマに夢中だった。
「僕らのころの子どもは、車やメカ関係に走るか、怪獣に走るかのどっちか。僕は圧倒的に怪獣派でしたね。しかも、特別な能力があるわけじゃない、ただ暴れるだけの『ウルトラマン』のレッドキングやゴモラが好みでした(笑)」
親戚がバルタン星人のソフビを買ってくれたのがきっかけで、怪獣玩具、そしてプラモにも目覚める。
「岩がゼンマイ式で動き、上に乗ったガメラやギャオスは微動だにしない、なんてプラモもありましたね……。ワニゴンやガマロンといった、映像作品と無縁のオリジナル怪獣も、つい作っちゃったり(笑)。メカものもブルマァクの『ウルトラセブン』の専用車両・ポインターや、『帰ってきたウルトラマン』の戦闘機・マットジャイロは作りましたよ」
中学に上がると同時にプロレスに熱中したライガーは、それまでのオタク趣味のいっさいを放棄。ひたすら肉体の鍛錬に励む日々に入る。だが、念願のレスラーデビューを果たし、まだマスクをかぶる前の1980年代前半、怪獣ガレージキットにハマった。これまでのプラモ作りの集大成だった。
「細かい集中を要する作業なのに、ストレス解消になったんですよね。プロレスでの集中力とは別次元で、逆に本業に向かう気持ちを駆り立ててくれた気がします……現実逃避かもしれないけど(笑)」
そして、ついにはその成形自体に取り組むようになった。
「いちおう工業科出身だし、図面から引きますよ。人間の骨格を崩さず、どう肉づけしていくのか、粘土と格闘してきました」
だが、この日は原点に立ち返り、ポインターの復刻版を。約20年前、バンダイからリリースされたものだ。
「プラモはやっぱメカだよね。いまの精巧なのもいいけど、子どものころ夢中になったやつを、また作れるなんて最高ですよ」
マスクの奥に、少年の目が覗いた。
取材/文・鈴木隆祐