
大阪市東淀川区出身の相川(左)と豊中市出身の矢井田(写真・福田ヨシツグ)
毎回、ビッグゲストと熱いスピリッツを共有しあう相川七瀬(50)の「BIG BANG対談」。第6弾は、これまでほとんど会話を交わしたことがないという、 “ヤイコ” こと、矢井田 瞳(47)の登場だ!
相川 ヤイコちゃんも、私と同じ大阪出身なんだよね。
矢井田 はい。豊中市で育ちました。
相川 私は、大阪市の東淀川区だから、エリアとしてはけっこう近いよね。
矢井田 そうですね。ちなみにですが、中学は豊中市立第九中学校で、卒業生には藤井隆さんがいます。
相川 藤井隆さんって……吉本興業の? えっ!? 本当に?
矢井田 マジです(笑)。で、南海キャンディーズの山ちゃん(山里亮太)とは、大学の同期でした。
相川 え〜〜〜〜〜っ!? そんなことって、あるの? すごいね(笑)。
矢井田 お仕事で会うと、2人とも大学時代に戻っちゃう感じです。
相川 2人は仲がよかったんだ!?
矢井田 何度かお話ししました。大学のキャンパスの山ちゃんはオーラがあって、すごくカッコよかったんですよ。
相川 カッコいい!?
矢井田 そうです。背も高いし、当時から赤い眼鏡をしていておしゃれだったし、とにかくカッコよかったんです。
相川 山ちゃん、素敵な人だよね! 何度か一緒に仕事したことがある。
矢井田 一時期「山ちゃん、キモい」とか言われて。私、テレビの前で「違う! 本当の山ちゃんは違うんだ!! 本当の山ちゃんはカッコいいんだ!!」と、抗議の声を上げていましたから。
相川 ははははは。じゃあ、蒼井優ちゃんと結婚したときは、ヤイコちゃんとしてはかなり嬉しかった?
矢井田 はい。ニュースを聞いた瞬間「よっしゃー!」と、ガッツポーズをしていました。どうだ!? これが本当の山ちゃんだぞって(笑)。山ちゃんのカッコよさがわかる蒼井さんはさすがだと、一人でウンウンと頷いていました(笑)。
相川 ヤイコちゃんが初めてギターと出会ったのは、大学生のときだったって聞いたけど。
矢井田 はい。高校を卒業するまではスポーツ少女で。大学に入ったとき、何か新しいことを始めたいと思い、それまで触れたことのない弦楽器をやってみようと、手に取ったのがギターです。
相川 それもすごい話だよね。しかもわずか2年後には、シンガー・ソングライターとしてデビューしちゃうんだもんね(笑)。
■音楽の専門学校に入りたいと思って
矢井田 それまで歌うのは好きだった音楽が、ギターを弾き始めたことで作るのも楽しいぞと思うようになって。それで、気がついたら……という感じでした。
相川 楽器をやる人たちって、みんな早くからその楽器に出会っている人が多いんだけど、ヤイコちゃんは19歳だからね。すごいというか、不思議な感じがする。
矢井田 だからなのか、音楽を始めるのが遅かったことや、音楽学校に行っていないことがコンプレックスだったことがあります。
相川 えー!? 今も?
矢井田 今はもうないです。相川さんがプロになりたいって思ったのはいつですか?
相川 織田(哲郎)さんとオーディションで出会ったのが15歳のときなんだけど、その前に中学1年生でオーディションを受け始めたときには、もう思ってたかな。
矢井田 中学1年生ということは12歳? その歳で、将来の夢をしっかり描いていた? そっちのほうがすごいです。
相川 “ここは自分の居場所じゃない” とか、 “大阪を出て行きたい” とか、そういうことを思っている子供で。
矢井田 中学生でそんなことを思っていたんですか?
相川 そう。だから、自分の子供たちが同じようなことを考えていたらと思うと、どうしようって怖くなる(苦笑)。
矢井田 すごいなぁ。それに比べて私はぬくぬくと育って、大学に行ってギターを始めて。きっとデビューしてからも、音楽と学業という二足のわらじを都合よく使っていたところがあったと思うんです。
相川 そうかな。そんなふうには見えなかったけど。
矢井田 覚えてくれているんですか?
相川 もちろん。 “なんか、すっごい元気なコが出てきたぞ” みたいなことを思ったのを覚えてる(笑)。
矢井田 ははは。でも自分では意識していないうちに、どっちかがうまくいかなかったとき、もう一方のせいにしていたところがあったような気がするんです。デビューした直後、東京に出て行くという話が出たときも「大学は卒業したいから大阪に住みたいです」と、上京するのを先延ばしにして(苦笑)。
相川 ということは、音楽一本で勝負すると決めたのは、大学を卒業してから?
矢井田 はい。“ヨシッ” と決めた瞬間、心がざわざわして。“これが覚悟を決めるというやつか” と思ったのを覚えています。
相川 迷いはなかった?
矢井田 一度、覚悟を決めてからは、もう迷いはいっさいありませんでした。根拠は何もなかったんですけど、“大丈夫だ” と自分に思い込ませていました(笑)。
相川 根拠のない自信は、私も一緒かな(笑)。
矢井田 相川さんは今、大学院生ですよね? 大人になってからもう一度 “よいしょ” と腰を上げて、新しいものに挑戦するのってすごくパワーがいることだと思うんですけど、そのパワーはどこから生まれてくるんですか?
相川 大学院に入ると決めたときのモチベーションは “博士号を取ること” だったんだけど、それがどれだけ大変なことなのか、まるでわかっていなかったんだよね。本当に、無知でした(苦笑)。
矢井田 それでも続けているんですからすごいです。
相川 自分がやりたいと言いだしたことだし、やっていておもしろいとも思っているし。もうやめたいとは言えないし、言いたくないし。終わりにしたいけど、終わってほしくないし……みたいな。そんな日々です(苦笑)。
矢井田 わかります。それがわかるから、なかなか一歩が踏み出せないんですよねぇ。
相川 ヤイコちゃんにも何か……あった?
矢井田 いや、あの……音楽の専門学校に入りたいなと思って、パンフレットを取り寄せたんです。
相川 それっていつの話?
矢井田 最初は娘が生まれたころですから、もう15年くらい前なんですけど、それから毎年のようにパンフレットを取り寄せて、中身をじっくり読んではパタンと閉じるという(苦笑)。
相川 いや、でもさ、今から音楽学校に通って何を学びたいの? 知識も経験も専門学校の先生に学ぶまでもなく、十二分にあるでしょう。
矢井田 音楽理論とか、打ち込み……Pro Toolsの使い方とかを勉強したいんですよ。
相川 そっちの勉強なんだね。
矢井田 今は、わからないことをその都度聞いていて、知識自体が点、点、点という感じでところどころ穴があいているので、そこを専門学校で埋めたいと思っているんですけど……。
相川 毎年、パンフレットを取り寄せては読むだけで終わってる? なんか、英会話教室に通いたいんだけど、どうしようかずっと迷っている、みたいな(笑)。
矢井田 そうなんですよね(苦笑)。だから、なんの躊躇(ためら)いもなく最初の一歩を踏み出せる相川さんには、尊敬しかありません。
相川 子供がある程度育って、自分の人生と向き合ったときに、音楽が主軸であることは間違いないんだけど、それ以外の部分で、自分はどうやって生きていくのか、どう生きたいのかという思いがぐわーっと湧き起こって。それが今につながっている感じかな。
■やり残したことをあえて作っておく
ーー今年、矢井田さんはデビュー25周年、相川さんは30周年の年です。
相川 私はこの1年で3枚のミニアルバムを出して、11月に30周年イヤーを総括する特別企画盤『BIG BANG』をリリースしたんだけど、ヤイコちゃんも今年の夏に、アニバーサリーのオリジナルアルバム『DOORS』を出したんだよね。
矢井田 音楽学校への挑戦はまだできていませんが(笑)、収録されている10曲すべてが新しいことへの挑戦で、私自身このアルバムで新しい扉を開けられたような気がしています。ただ……。
相川 ただ!?
矢井田 年齢を重ねたからかもしれないですけど、“これが最後の一枚になるかもしれない” という思いが、どんどん強くなっているんですよね。
相川 それ、私も思ってた。持っているエネルギーを全部注ぎ込んで作る感じでしょう?
矢井田 そうです。『DOORS』も、“矢井田瞳史上、最高に個性豊かでバラエティに富んだ渾身の一作です” と胸を張って言えるんですけど、それと同時に途中経過の段階も含めて、これが最後かもと思っちゃうんですよね。
相川 でも、ライブをやっているうちにどんどん元気になってきちゃって、次はどんなアルバムを作ろうかなと考えてる(笑)。
矢井田 それもわかります。ライブって、本当に楽しいですから。アルバムを作るのはこれが最後になるかもと思っていたはずなのに、自分から “次、こんなのはどうかな?” とか口走っていたりして(笑)。毎回その繰り返しで、結局ず〜〜〜〜っと音楽に取り憑かれている感じがします。
相川 でしょう? だからね、私は最近やり残したことを必ずひとつだけ作るようにしているんだよね。
矢井田 えっ!? それってどういうことですか?
相川 柱の一本をあえて逆さにした日光東照宮の陽明門がそうなんだけど、古来日本には「未完の美」というのがあって。それと同じで、渾身の力をこめてという気持ちは変わらないんだけど、やり残したことを作っておくことで、作品が完成した次の瞬間から気持ちが次に向かっていけている感じがする。
矢井田 なるほど。それは “目から鱗” です。
相川 そこまで深くなくても、“これは次のお楽しみ” くらいの気持ちでいたほうが、気持ちも楽になるし、結果的にいいものが作れるような気がするんだよね。
矢井田 ん〜〜〜〜〜、そうかぁ。次から私もその方式でいこうかな。
相川 無理にそう思わなくても、きっとヤイコちゃんにも、そう思える瞬間が来るような気がする。たぶん、おそらく、だけど(笑)。
矢井田 そうですかね!? うん、そうだといいな。というか、来てほしい!
相川 すごく不思議なんだけど、そうなると、これが最後かもと思わないどころか、無限にやりたいことがある、みたいな感じになってくるから。楽しみにしていて。
矢井田 そうかぁ。それは楽しみです。
やいだ ひとみ
1978年7月28日生まれ 大阪府出身 19歳でギターと出会い曲を作り始め、2000年5月『Howling』でインディーズデビュー。同年7月『B’coz I Love You』でメジャーデビュー。2007年に結婚し、2009年に長女を出産。今年8月に、デビュー25周年記念アルバム『DOORS』をリリース
あいかわななせ
1975年2月16日生まれ 大阪府出身 1995年『夢見る少女じゃいられない』でデビュー。その後もヒット曲を数多く世に送り出し、現在までのCDのトータル売り上げは1200万枚を超える。2020年に國學院大學神道文化学部を受験し合格。卒業後、同大の大学院に進む。今年11月8日、ミニアルバム『FIREWORKS』をリリース
写真・福田ヨシツグ
ヘアメイク・久保フユミ(相川)
取材&文・工藤 晋
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