
新沢基栄先生(写真・木村哲夫)
1980年代の「週刊少年ジャンプ」(集英社)黄金期に連載された伝説のギャグ漫画『ハイスクール!奇面組』が、今年1月からフジテレビ系で再アニメ化され、好評放送中だ。
作品の生みの親である新沢基栄(しんざわもとえい)先生(67)は、再アニメ化をどう思っているのか。
原作の『ハイスクール!奇面組』は、人気絶頂のなか、作者の腰痛が原因で1987年に連載終了したことで知られる。新沢先生は、2005年、続編に当たる『フラッシュ!奇面組』をやはり腰痛で中断して以来、連載漫画は執筆していない。
「腰痛は……変わってませんね。よくも悪くもなってない」と言う新沢先生の自宅で、『奇面組』への思いを聞いた。
「『奇面組』のテーマは『個性』だから、不良は不良として、変態は変態として描いてほしいなと思っています。最初のアニメ化(1985〜1987年)では、資料を出したりいろいろ動いたんですけど……今回は、僕からは指示とかはしてないです」
1985年の最初のアニメ化の際には、多忙な週刊連載のなか、自ら設定資料を描き下ろし、キャラクターの性格や関係性、顔のアングルや姿勢まで、制作陣へ細かく指示を出したことは今も語り草だ。今回は完全におまかせのスタイルにしたというが、出来栄えは気になるという。
「(第2話で主人公の一堂)零くんが(原作では)目覚まし時計で起きるシーンがあったんですけど……。(アニメでは)なんでかわからないけど携帯電話(のアラーム)に変わってて(苦笑)。だから、ギャグとして決まってなくて。なんのために(設定を変えたのか)わかんないような感じになっちゃってましたね」
さらに、アニメで描かれる “ギャグのキレ” も気になるという。
「中途半端なギャグの失敗みたいなものは困るなあとは思っています。(原作に)似せようとしてくれているなっていうのは感じるんですが、 “しぱた” (一堂零のジタバタした動き)も何か遠慮気味な描き方だなあと思いましたね。アニメだと目の角張り方も遠慮してるなあと。もっと思い切りやってほしいですね」
ファンの間では、ヒロインである河川唯(かわゆい)のキャラが原作より大げさに描かれているとの声も出ているがーー。
「それは全然構わないです。結局、ギャグがハマっていれば問題ないんです。声優さんはよくやってくれてますよ」
その後、3話、4話と視聴するなかで手ごたえが。
「ストーリーがわかりやすくなってきて、回を重ねるごとによくなってきましたね。ギャグが活きてます。今後も楽しみにしていますよ」
自ら生み出したキャラクターへの愛は深い。
「『奇面組』に出るキャラはまんべんなく全員好きなんです。(連載開始の際に)奇面組メンバー5人の名前がダジャレなので、それをほかのキャラでもやっちゃおうって思ったんですよね。編集者からも何も言われなかったですしね。主人公を『一堂零』にしたのは、語呂がいいからです(笑)。
ほかのメンバーはちょっとこじつけですけど、(名づけの際の)ヒントにしたものとかも……ないんですよね」
「ジャンプ」での連載当時、ストーリーやギャグを考え出す苦労はあったと思うがーー。
「う〜ん、苦労……。キャラクターを描いて並べていると、思いつくんですよ」
「自然と降りてくる感じですか」と聞くと、うなずく新沢先生。ファンにとっては、連載を離れてからの “私生活” も大いに気になるところ。
「アニメの制作発表のときに(声優たちのために)色紙を描きましたけど、絵自体はずっと描いてはいます。親戚から色紙を頼まれたりするので(笑)、描くのに困ったことはないですよ。零くんなんかは描きやすいです。もともと角ばった絵を描くのが好きだから」
今回のアニメの試写会には、昨年から社会人になった長男も参加した。
「息子はアニメを気に入っていて、喜んでました」
一方で昨年は、暴走した自動車が自宅の壁に突っ込み、大きな穴が開いて、修復工事を余儀なくされたという。
「あとは日中は散歩に行ったり、病院に行ったり……。漫画はあまり読まなくなったけれど、『葬送のフリーレン』のアニメはおもしろかったですね」
■尊敬する鳥山明さんと電話で7時間話したことも
『奇面組』シリーズは、コミックス累計発行部数1000万部を超える大ヒット作品だが、新沢先生はそれを誇る素振りをまったく見せない。これには理由があるという。
「鳥山(明)さんが、そういう人だったんですよ。すごく謙遜する人で、僕も認めていたというか、尊敬していたんです。だから、僕も大きなことは言わないんです。
お互いに『ジャンプ』で連載していたころ、鳥山さんと7時間くらい電話したことがあります。特に漫画の話をしたわけでもなく、何も考えずにずっと話してましたけど、迷惑だったかなあ(笑)。
(カラー原稿は)何を使って色を塗ってるのかとか、そんな話をしてましたね。僕が一方的に好きだったのかもしれないけど、仲よくしてもらいましたね」
鳥山さんとの交流を嬉しそうに振り返る新沢先生。ほかの漫画家とはどうだったのだろうか。
「荒木(飛呂彦)くんは、漫画がおしゃれだった。(原哲夫氏の)『北斗の拳』は読んでましたね。『奇面組』にも北殿軒戻樹(ほくとのけんもどき/ケンシロウのパロディキャラ)を出しましたし。
でも、あれは後から原くんにOKか聞きました(笑)。僕は気になるものは『描いちゃえ』って、それで描いちゃってから事後承諾。原くんには悪いかな、とは思いましたけど」
家では、パソコンはまったく触らず、自分の作品やアニメに対するネットの声もまったく見ていないという。
「全然気にならないんですよね。連載当時、編集部に届くファンレターは読んでいましたが。当時のファンの方とは、今も年賀状をやり取りして連絡を取っていますよ」
『ハイスクール!奇面組』といえば、 “伝説のラスト” が有名だ。最終話「さらば! 奇面組」で描かれたのは、高校卒業後の奇面組の面々のその後。
零とヒロインの唯が自転車に2人乗りしたところで、唯は夢から覚める。そこは、一応中学2年10組の教室。親友の宇留千絵(うるちえ)も当時のまま。“一応高のみんなは、あれはみんな私の空想だった?” と疑問に思いながら、中学時代を描いた『3年奇面組』第1話と同じように、トイレに向かう唯と千絵の姿で幕を閉じる。
このラストシーンは、「奇面組は夢オチだったのか?」とファンの間で大きな論争を巻き起こし、今回のアニメ化を機に、ネットで再び議論の的になった。
1996年に発売された「ジャンプコミックスセレクション版」では、そのラストのコマに、連載時にはなかった廊下の角を曲がってくる零のシルエットが追加されているのだが……。
「廊下の曲がり角からシルエットが出てくるか、出てこないかだと思うんですけど、あれは『見せないと、わかんないのかな』と思って描き足したんです。あの最終回は、初回(『3年奇面組』第1話)にループさせています」
令和にアニメで『奇面組』が復活し、当然、新沢先生による新作を期待したくなる。
「新作は、コンプライアンスに厳しい今の世の中では描けないでしょう。ギャグを描くには邪魔ですよ、コンプラ。『個性』を見せるのに、(コンプラは)邪魔だから、(新作は)描かないですよね、やっぱり」
最後に読者に伝えたいことを聞くと「『奇面組』をよろしくお願いします」とひと言。放送中のアニメを楽しんだら、ぜひ原作漫画も読み返してもらいたい。そのすごさがわかるはずだ。
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