
石田千穂(左)と中村舞(右)
瀬戸内7県を拠点に活動するアイドルグループ・STU48。その中心メンバーとして活躍してきた石田千穂さんと中村舞さん。長きにわたり行動を共にする中で、2人は深い信頼関係を築いてきた。2026年5月に卒業コンサートを控えた石田さんにとって、中村さんは腹を割って相談できる存在であり、中村さんにとって、石田さんはパフォーマンスの師であった。
実は2人、以前から将来のキャリアなどについて定期的に話し合っていたそうだ。
「舞ちゃんだけには随時お知らせをしていました。卒業を決めたという話から、発表のタイミングはこの日になりそうといったスケジュールまで、全部話していました。私が卒業するのを知っていた期間が長い分、いろいろと相談に乗ってもらって。本当に感謝です」
しかし、いざ具体的に物事が動き始めると、中村さんの感情は大きく揺れた。
「『ちょっとまだいてくれないかな?』『やっぱりいてほしい』みたいな連絡を何回も送ってしまいました。ずっと寂しい気持ちです。今も」
13thシングル「好きすぎて泣く」は、2人が一緒に参加する最後の曲となる。悔いは残したくない。
■「この人は安心できる」
2人が親密な関係を築いたきっかけは、7thシングル「ヘタレたちよ」がリリースされた時期にさかのぼる。後輩である中村さんが、先輩の石田さんを食事に誘ったのだ。
それまで石田さんにとって中村さんは、「推しであり、癒される後輩」だった。他方、中村さんも石田さんの初めてのソロコンサートに出演するなどの関わりはあったものの、先輩・後輩の間柄が変わることはなかった。
そんな中、中村さんが石田さんを食事に誘ったのは、ある理由があった。
「ちょうど千穂ちゃんがお休みをしていて、ある日、『千穂ちゃん、元気かな?』と思って連絡をしました。私は誰かをご飯に誘うことは本当にないのですが、とても気になってしまって」
中村さんからの呼びかけに、石田さんはすぐさま快諾の返事をした。そして初めて2人きりで食事をすることとなった。ご飯を食べながら話をしたとき、中村さんは確信した。
「自分の中のセンサーがピンと働いて、この人は安心できる人、心から信頼できる人だって思いました」
そこからは一緒に遊んだり、食事したりする機会がどんどん増えていった。そして石田さんは徐々に、これまでは他人に言わなかった悩みを中村さんに打ち明けるようになっていった。
「私に話を合わせるのではなく、舞ちゃんは自分の意見をきちんと言ってくれます。しかも的確に。気が付けば一番の相談相手になっていました」
こうして2人は先輩・後輩の垣根を超えて、お互いに信じ合える親友となった。
■「カワイイ」から「カッコイイ」に
グループ加入時から中村さんを知る石田さんは、彼女の成長をどう見ているのか。
「舞ちゃんほど、こんなにグーンって変わった人おるんかなというほど成長しました」と石田さんは振り返る。
最初の頃はふわふわとしていて、ただただ「カワイイ」という一面しかなかったそうだが、経験を積んだり、後輩が増えてきたりするにつれ、「カッコイイ」存在になっていった。特に大きな変化を感じたのは、1stアルバムのリード曲「愛の重さ」で中村さんがセンターに立った時のことだという。
「『花は誰のもの?』でトライアングルセンターを務めた時は、まだ私とゆみりん(瀧野由美子さん)で舞ちゃんを支えなくてはという気持ちでしたが、『愛の重さ』の頃には一人で堂々と立ち振る舞っていて、とてもびっくりしました」
着実に、かつスピーディーに成長していく中村さんの姿を、石田さんはずっと見守ってきた。カワイイ後輩から、頼もしい仲間へ──その変貌に目を細める。
■王者のオーラ
かたや、中村さんが石田さんから学んだことは、ステージでのパフォーマンス力だという。
「やはりパフォーマンスはピカイチ。STU48で一番だと思っています」
一緒にステージに立っている時は自分の踊りや歌に集中しているため、目にはあまり入ってこないが、観客として見た際に石田さんのパフォーマンスの凄みを中村さんは実感する。先日も石田さんのソロ公演を見に行ったという中村さんは、次のように振り返る。
「本当に一秒たりとも気を抜くことがないパフォーマンスで引き込まれますね。ザ・アイドルだなと思っていて、いつも勉強になります」
特に中村さんが評価するのは、ダンスしている時の手先の美しさ、そして何よりも「オーラ」である。
「目からすごいオーラが出ているんです。王者の雰囲気がある。誰もが真似できるものではないですよね。どうやってあのオーラを出しているのか気になります」
これに対して、少しはにかみながら、石田さんはその秘けつを明かす。
「例えば、9thシングル『息をする心』でセンターさせてもらいましたが、その曲を披露する時は今でも『私がセンターだ!』『皆、私を見な!』といった気持ちでパフォーマンスしています」
そして石田さんはこう付け加える。
「舞ちゃんも今はそれができていると思うよ」
センターに立つ人間の貫禄、堂々とした姿勢。それは、まさに石田さんから中村さんへと受け継がれようとしていた。
■広い視野を持ち、助け合う
グループのエースだった石田さんがいなくなった後、中村さんはSTU48の中でどういう存在でありたいのか。彼女はこう語る。
「もっと視野を広くしたいと思います。高みを目指すのはとても大事ですが、そうなると周りが見えなくなってしまうこともあります。グループなので皆と助け合いながら進んでいく必要がありますし、後輩も新しく入ってきたので、しっかりと、堂々とした姿を見せたいですね」
一人で突き進むのではなく、周囲との調和を重んじる。4期研究生も加入したばかりで、新時代を迎えるSTU48において、中村さんの役割はより重要になっていく。
もちろん、切磋琢磨した仲間の卒業は寂しいものだ。しかし、それは次の世代への継承でもある。石田さんから中村さんへ。そしてまた後輩たちへ。STU48の歴史は、こうして紡がれていく。
瀬戸内の海に差し込む朝の光のように、美しく、穏やかで、そして温かい──。2人が築いてきた絆は、グループの未来を照らし続けるだろう。
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