
STU48谷口茉妃菜(左)と四国放送・野口七海アナ(右)
動画コンテンツ全盛の時代にあって、ラジオやPodcastなどの音声メディアが静かな復権を遂げている。
新聞や雑誌といった紙媒体の広告費が伸び悩む一方、耳で楽しむコンテンツへの注目は年々高まっている。大手広告代理店の電通が発表した「2025年 日本の広告費」によれば、ラジオ広告費(マスコミ四媒体広告)は1153億円(前年比99.2%)とほぼ横ばいながら、ラジオデジタル広告費(インターネット広告)は38億円(前年比111.8%)に。2021年の14億円から約2.7倍と急伸している。電通は報告書で「音声メディアへの関心が引き続き高まっている」と分析する。
Podcastに目を向けると、その成長ぶりはさらに鮮明だ。デジタル音声広告事業などを手がけるオトナルと朝日新聞社が共同で行う「ポッドキャスト国内利用実態調査」によると、2025年末時点での月間利用率は18.2%に達した。2020年の14.2%から4ポイント上昇しており、低下に転じる兆候はない。特に若年層での浸透が著しく、15〜19歳では40.5%、20代では28.8%が月に1度以上聴いている。
こうした追い風を受け、企業や著名人はもとより、一般の個人でも気軽にPodcast配信を行うようになっている。また、日本の企業運営Podcastは推定150〜200番組に達するとされる。
しかし、成長市場であってもコンテンツの「生き残り」は別問題だ。特にラジオに関しては基本的に3カ月ごとに見直しが行われ、短命に終わる番組は少なくない。脚本家であり、ラジオパーソナリティとしても活躍する宮藤官九郎さんも「ラジオってなじむのに時間がかかるメディアだと思うんです。でも、たいていなじむ前に終わってしまう」(「神田伯山対談集 訊く!」集英社刊)と番組存続の難しさを語っている。
ここで、主な女性アイドルグループの冠がついたラジオ番組を見てみたい。長く続くものだと、『SKE48 1+1は2じゃないよ!』(2010年11月〜、東海ラジオ)、『ももいろクローバーZ ももクロくらぶxoxo』(2012年4月〜、ニッポン放送)、『モーニング娘。のモーニング女学院〜放課後ミーティング〜』(2012年4月〜、ラジオ日本)、『私立恵比寿中学 放送部』(2013年4月〜、文化放送)、『乃木坂46の「の」』(2013年4月〜、文化放送)などが挙げられる。ただし、これらはメンバーが入れ替わりで出演するスタイルである。
一方で、一人の現役アイドルが固定でパーソナリティを務めるラジオ番組だと、極端に数が減る。例えば、SKE48・野村実代さんの「KORE-SUKI ! RADIO」(2023年4月〜、東海ラジオ)、乃木坂46・井上和さんによる「乃木坂46のオールナイトニッポン」(2025年12月〜、ニッポン放送)などが代表的だろう。
そうした中、2021年3月にスタートしてから5年以上も継続している番組がある。瀬戸内エリアを拠点とするアイドルグループ、STU48・谷口茉妃菜さんがメインパーソナリティの「STU48のすだちでキュン♡」(四国放送)だ。
毎週月曜午後11時に放送される同番組を担うのは、谷口さんと、進行役を務める四国放送アナウンサー・野口七海さんの2人。なお、谷口さんは「STU48の保健室ラジオ」(2024年2月〜、広島FM)のパーソナリティも兼任しており、複数のラジオ番組を持つアイドルという点でも稀有な存在といえる。さらに、谷口さんはこれまでSTU48でシングル表題曲の選抜メンバー入りをした経験がない。にもかかわらず、パーソナリティの座を守り続けている。数多あるアイドルグループのラジオ番組は選抜常連のメンバーが出演するのが一般的といえるため、この部分でも他とは一線を画す。
いったい、「STU48のすだちでキュン♡」とはどのような番組なのか。長く続く要因とは何か。その答えを探るべく、谷口さんの故郷であり、番組の発信地である徳島へと足を運んだ。
●徳島駅近くの公園に大勢の人だかり
5月5日のこどもの日ーー。徳島市の最高気温は21.2度で、時折吹く風は心地良いものの、照りつける日差しは強烈だった。JR徳島駅から徒歩5分ほどの藍場浜公園では、「STU48のすだちでキュン♡」の公開収録が行われていた。普段は市民の憩いの場である公園が、この日は特別な場所に変わる。
開始の2時間近く前からステージ前を陣取るファンの姿があり、30分前には既に埋まった座席の周囲を立ち見客が取り囲んだ。午後2時の定刻にスタートした収録では、谷口さんと野口さんがクイズなどで会場を巻き込みながら番組を進行。終盤には初公開となる番組テーマソング「ハートビート〜すだちでキュン♡〜」がお披露目されると、観客がペンライトを振り、まるでライブのような熱気に包まれた。
今年で5回目となるこの公開収録は、「ストーンフェア」と呼ばれるイベントの目玉企画の一つとなっている。同イベントは徳島の墓石販売会社、ぶつだんのもりが31年前から開催。元々は移動販売や展示会のスタイルで各地を回っていたが、藍場浜公園の広さを生かせるとの声がかかったのをきっかけに、この場所での開催が定着した。
同社の岸本耕三社長が長年こだわってきたのは、墓石屋のイベントという先入観を壊すことだった。
「パッと見て『あ、墓石だ』と思われてしまうと、すぐにお客さんは帰ります。利益ばかり追求してはダメで、子どもからお年寄りまで皆が楽しめるイベントにしないと」
こうした発想のもと、ファミリー層が興味を持つような企画を毎年用意してきた。今年は会場内に恐竜のオブジェや乗り物などを初めて設置し、昨年の大型滑り台に続く新趣向として子どもたちの歓声を集めた。
31年続けられた原動力は、来場者の声だったと岸本社長は振り返る。
「ゴールデンウィークに1週間もやっていると、徳島のいろいろな方から『頑張っているな』とか、『社長、ここはこうした方がいい』とか言葉をかけていただける。それが活力になって、来年もまた続けようと思うのです」
そうした地元とのつながりの精神は、「STU48のすだちでキュン♡」の番組スポンサードにも通じている。同社は徳島で奮闘する人々を後押しすることに意義を感じており、自社のホームページでも積極的に紹介してきた。谷口さんが現在、広島を拠点にしながらも徳島出身者として活動していることと、徳島にゆかりのある人を応援したいという岸本社長の意向がぴたりと重なったわけである。
後編では、番組の誕生秘話や、人前で話すことに苦手意識のあった谷口さんが約5年間でパーソナリティの力量を高めることのできた要因などについて伝えていく。
(後編に続く)
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