公開収録には多くのファンが。中にはネパールから来た、という強者も
●「なぜ私が?」という戸惑いがあった
STU48・谷口茉妃菜さんがメインパーソナリティを務めるラジオ番組「STU48のすだちでキュン♡」(四国放送)。この番組はいかにして生まれたのか。その出発点は、同番組で進行役を務める四国放送アナウンサー・野口七海さんの“オタク魂”だった。
アイドル好きの野口さんは以前からSTU48のファンだったこともあり、「STU48と一緒に仕事がしたい」という一心で企画書を書き上げ、アイドルと徳島の魅力を発信するラジオ番組を会社に提案した。2020年当時、40分間の一人喋り番組を持っていたが、「これでは自分のスキルアップにつながらない」という問題意識もあった。無事に企画は実現し、2021年3月、「STU48のすだちでキュン♡」は誕生した。
一方、パーソナリティに選ばれた谷口さんの当初の心境は複雑だった。「人前で話すのが得意ではなかったし、仕切りとかもできませんでした。なぜ私が、という思いが正直ありました」と回想する。しかし、地元・徳島で番組を持てることへの喜びと、グループ内での自身のポジションを模索していた時期だったこともあり、最終的には前向きな気持ちで受け入れた。
2人の出会いはそれ以前に一度だけ。2019年7月にリリースされたSTU48のシングル曲「大好きな人」のプロモーションなどで徳島を訪れた谷口さんに、野口さんがニュースキャスターとしてインタビューしたことがある。その次に顔を合わせたのが「STU48のすだちでキュン♡」の開始時ということで、ほぼ初対面に近い形での船出となった。
加えて、番組が始まったのはコロナ禍の真っ只中であり、かつ、谷口さんは広島に拠点を置くため、Web会議ツールを使ったリモートでの収録が前提となった。お互いの距離が物理的にも心理的にも縮まりにくい環境で、非常にぎこちなく、どこか淡々とした雰囲気で番組はしばらく続いたそうだ。
●号泣が2人の信頼関係を作り上げた
そんな両者の関係を大きく変えたターニングポイントは、2023年2月、誕生日の近い2人が番組内で行った「合同生誕祭」での出来事だった。
野口さんはそこで手紙を書き、谷口さんへの本音をぶつけた。「選抜メンバーに入ってほしい。ステージに立つ姿が見たい」ーーそのように伝え、アナウンサー人生で初めてラジオの前で号泣した。「もう嗚咽で、手紙が読めなかった」と野口さんは振り返る。谷口さんも感激し、涙をこらえられなかった。「お互いが感情をぶつけ合い、普段言えなかったことを詰め込んだから、(感情が)爆発しました」と谷口さんは語る。
その日を境に、2人の間で何でも隠しごとなく話せる関係が生まれた。ダメなところも遠慮せずに言えるようになったし、収録後に1時間ほど話し込むのも珍しくなくなった。今では姉妹のような間柄だと谷口さんが表現するほどの絆ができた。
それによって番組スタッフも一枚岩になっていった。谷口さんが落ち込んでいるとみれば、スタッフ全員が一言ずつ応援メッセージを書き、スタジオの壁に貼ることもあった。
「ディレクターも含め、普段からまひちゃん(谷口さん)が共通の話題になっていて、まひちゃんを中心に皆がチームとしてまとまっている感じがします」と野口さんは強調する。現に、今年の公開収録でもスタッフが汗だくになって会場を回る光景が随所に見られ、中には番組OG・OBのスタッフもいたという。
●「ゆるさ」と「堅実さ」ーー互いに磨き合った5年
こうした関係性の深まりが、谷口さんのラジオパーソナリティとしてのスキルアップを加速させた。今の谷口さんの語り口調は、澱みなく流暢で、「話すことが苦手」だったかつての面影はほとんどない。ゲストへの質問の仕方やサポートする立ち位置、場の回し方など、あらゆる面が磨かれた。
谷口さんは「七海さんからすべてを学んだ」と断言する。その秘けつは、収録後にフィードバックを求めることと、アドバイスをきちんとメモしてきたことにある。そして次の収録には学んだことが実践されている。「今日、どうだった? あれは大丈夫だった?」と自ら尋ねてくる姿勢が良いと野口さんは評価する。耳が痛いことでも聞けるその素直さと向上心が、この5年間の谷口さんの成長を支えてきた。
一方、野口さんもまた谷口さんから多くを得たという。例えば、「ゆるさ」。「私はせっかちで、早口で、きっちりとやろうとするタイプ。でも、まひちゃんのゆるさを見て学び、例えば、(取材などで出会う)お年寄りとのコミュニケーションがスムーズに取れるようになりました」と野口さんは喜ぶ。
この堅実でしっかりした進行と温かいゆるさの絶妙なバランスこそ、番組が長く続く秘けつなのだろう。谷口さんが番組開始時に口にした言葉が、今もその本質を示している。それは、「もち巾着のような番組にしたい。外はちゃんと締まっていて、中はふわっとしている」。
ラジオで培ったスキルは、STU48の活動においても実を結んでいる。以前はライブなどで「谷口にMCを任せよう」とは思われていなかったというが、今ではステージ上で他のメンバーの良さを引き出す役割を担えるようになった。新たなラジオ番組への出演機会も生まれた。
●「ラジオといえば、まひちゃん」を目指して
「STU48のすだちでキュン♡」はこの先、何を目指すのか。野口さんがまず口にするのは「誰もが納得できる数字で示したい」ということだ。アイドルグループのラジオ番組を取り上げたとある記事の中で、「STU48のすだちでキュン♡」がそれほど評価されていないことへの忸怩たる思いがある。
「アイドルのラジオパーソナリティランキングで、まひちゃんが1位を取れるようにしたい。まひちゃんが唯一無二だということを、もっと多くの人に知ってもらいたい」。アピール不足を自覚しながらも、その目標は揺るぎない。
実際、聴取データは希望を示している。四国放送のラジオ番組の中でも、徳島県外からの聴取率が高い部類に入るという。野口さんは「広島でも公開収録をしたら、もっと人が集まると思う」と意気込み、将来の遠征も視野に入れる。
谷口さんの目標も明確だ。パーソナリティとしての力量がSTU48選抜メンバー入りの評価につながるよう、ラジオを武器に高みを目指していきたいと心に誓う。
来年も藍場浜公園のステージで、2人が並んでマイクを持つ姿を望むスタッフやリスナーもいるだろう。名実ともに多くの人たちに愛される番組であり続けるために、「STU48のすだちでキュン♡」はまだまだ進化を遂げなければならないはずだ。
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