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【孫が明かす文豪の素顔】夏目漱石は息子をステッキでバシバシ「とにかく怖くて厄介なおじいさん」

インタビュー 記事投稿日:2026.08.05 16:48 最終更新日:2026.08.05 16:48

【孫が明かす文豪の素顔】夏目漱石は息子をステッキでバシバシ「とにかく怖くて厄介なおじいさん」

夏目漱石(写真・共同通信)

 

『坊っちゃん』『吾輩は猫である』など、ユーモアや風刺あふれる名作を世に出した夏目漱石。誰もが知る文豪の“スパルタすぎる”素顔を、実の孫が明かした。

 

「10代、20代の頃は、会話のなかで『漱石先生のお孫さんですか。すごいですね』なんて言われると、『すごいのは爺さんだろ。俺はただの人だよ』って勝手に怒り狂っていました。高校生のときは、国語の先生が善意も込めて『このクラスに漱石のお孫さんがいるんだね』と言ったんですけど、それにカチンときて、職員室で『なんで、あんなことを言うんだ』と詰め寄りました。あとから考えるとひどいことを言ったと思ったけれど、漱石の存在があまりに大きいから、プレッシャーになっていたんでしょうね」

 

 漫画コラムニストの夏目房之介さんにとって、祖父の夏目漱石は「厄介な存在」だったようだ。中学生の頃、同級生の女子に「おじいさんはハンサムなのにね」と言われて心に傷を負ったともいう。

 

「僕の父は漱石の長男ですけど、聞くと、とにかく怖かったそうです。父が『寄席に行きたい』と言ったところ、漱石の機嫌がすこぶるよかったのか、『僕も行きたい』という弟、僕の叔父ですね、ふたりを寄席に連れて行ってくれたそうです。ところが、長男は緊張と恥ずかしさで中に入れない。つられて弟も『恥ずかしい』とモジモジ。そうしたら漱石が突然、『なんだ、お前は』と弟をステッキでバシバシ叩いたらしいんです。道路上ですよ。

 

 これは推測ですが、漱石は『アイデンティティ(個性)』を尊重するので、小さい子どもでも『兄の真似をするとは何事だ』と許せなかったのでしょう」

 

 ただ、「小説を読むと面白いんですよ」と、漱石文学自体は好きだったという。

 

「いつも『漱石先生の作品はどれが好きですか』と聞かれるので、作品はほぼ読みました。結論は、夢の中の不思議な出来事をつづった『夢十夜』。漱石ファンは皆さんこの作品が好きだから、これを言っておけば大丈夫です。夢だから何が何だかわからないし、いろいろな解釈ができると思うんです。だから何回読んでも、違う感情が湧きあがってきますね。

 

 一方で僕は、漱石に似てへそ曲がりだから『硝子戸の中』も好き。亡くなる直前に書いたエッセイですけど、『すごく枯れた感じ』がして、老成さえ感じさせる文章です。
中学のときに読んで好きになったんですけど、父に『面白いね』と言ったら『(読むのは)50年早い』と言われました」

 

 そうしたなかで、房之介さんは自身の中で「漱石と折り合いをつける」ことになる。

 

「30歳を過ぎて『週刊朝日』で連載をいただけるようになり、生活も安定してきました。それまでは『中身がない自信』しかなかったんですけど、だんだん中身が伴って、そうすると勝手に比較していた漱石を客観視できるようになりました。

 

 なかでも決定的だったのは、1984年に発行された千円札の肖像に漱石が使われたことです。僕の父は『大蔵省造幣局が、何の断りもなく漱石を使った』と怒ってしまい、取材にやってきたマスコミを無視していたんです。すると今度は、マスコミの仕事もしていた僕に取材依頼の連絡がくるようになり、対応しているうちに漱石(の存在)が気にならなくなった。千円札って、使用頻度が一番高いからよく見かけるし。発行当初は、『祖父の顔が描かれたお札を両替するとき、どう感じるかな』って思いましたけど、実際にはなんとも思わなかったですね(笑)。そうやって存在が気にならなくはなったんですが……漱石には会いたくないですね。漱石は僕みたいな落ちこぼれが大嫌いだから」

 

写真・福田ヨシツグ、共同通信

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出典元: 週刊FLASH 2026年8月11日号

著者: 『FLASH』編集部

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