芸能・女子アナインタビュー

ストーカー、誹謗中傷…“歌舞伎町弁護士”が向き合う「歓楽街の依頼人」たち 「実刑を受けたほうがいいと思うことも」それでも弁護をやめない理由

インタビュー 記事投稿日:2026.08.11 06:00 最終更新日:2026.08.11 06:00

ストーカー、誹謗中傷…“歌舞伎町弁護士”が向き合う「歓楽街の依頼人」たち 「実刑を受けたほうがいいと思うことも」それでも弁護をやめない理由

“歌舞伎町弁護士”と呼ばれる若林翔弁護士(写真・酒井よし彦)

 

 難関国家資格を武器にして、夜の街で生きる人々を支える専門家がいる。彼らは、なぜこの世界を選び、どんな修羅場をくぐってきたのか。異色の経歴と仕事の流儀に迫る。

 

「今回の法改正では、たしかにホストクラブへの規制は厳しくなりました。ただ、皆さん勘違いしていますが、売り掛け(飲食代の後払い)やホストの接客そのものは、禁止されてはいません」

 

 2025年6月と11月に、悪質ホストクラブ対策を盛り込んだ改正風営法が施行された。これにより規制は強化されたが、たとえば “色恋営業” などは、すべての行為が禁止されているわけではない。「歌舞伎町弁護士」と呼ばれる若林翔が、その線引きを説明する。

 

「禁止されたのは、色恋関係を利用して『お店に来なかったら別れるよ』と関係の破綻を告げること。また『あと◯万円使ってくれないとノルマ未達成で降格させられる』『店の罰金がある』など、ホスト自身の業務上の不利益を告げて相手を困惑させ、お金を使わせる行為です」

 

 だが、規制は限定的な範囲にとどまる。

 

「たとえば、『誕生日だから100万円のシャンパンを入れて』と客にお願いするだけなら、禁止されていません。問題となるのは、あくまで一部の行為なんです」

 

 恋愛とカネが絡むトラブルはホストクラブならではともいえるが、若林が扱う案件はそれにとどまらない。

 

「僕は、おもにデリヘル、メンズエステなどの風俗店、キャバクラ、ホストクラブ、ガールズバー、AV関係など、夜の業種の顧問弁護士を務めています。店からの相談だけでなく、所属するキャストのトラブルにも対応します。一方で、『風俗店で盗撮をしてしまった』という男性や、ホストクラブでトラブルになった女性が依頼主になることもあります」

 

 店や客をめぐるトラブルに加え、近年増えているのがネット上の誹謗中傷だ。店名や源氏名だけでなく、容姿や接客態度、私生活まで――。真偽不明の書き込みは、キャストの指名にも影響する。

 

「5ちゃんねる、ホスラブ、爆サイなどの掲示板なら、うちでは高確率で削除できています」

 

 もっとも、書き込みを消すことと、書いた人物を突き止めることは別の話だ。

 

「発信者を特定するには、プロバイダーに情報開示を請求します。基本的には裁判手続きが必要ですが、裁判所が認めないことや、技術的な理由で特定できないこともあります。通信記録はいつまでも残るわけではありません。誹謗中傷が明らかなら、早めに対処したほうがいい」

 

 客の執着がエスカレートすると、リアルな事件につながることもある。ガールズバーの女性従業員の刺殺事件、ソープランド個室での無理心中は記憶に新しい。

 

「そうした殺人事件を直接取り扱うことはなかなかありませんが、その前段階のストーカー被害への対応はしています。被害者と一緒に警察に行ったり、僕から加害者に警告を送ったりします。名誉毀損や犯罪行為にあたれば、損害賠償請求をすることもあります。被害に遭うのは風俗嬢、キャバクラ嬢が多いですが、ホストの男性もいらっしゃいますね」

 

 弁護士が同行することで、被害者だけで警察に行くより、被害届が受理されやすくなることもある。こうした夜の街に関する案件は、若林の仕事のなかで「感覚的には半分ぐらい」だという。だが若林は、最初から “夜の街” の弁護士を目指していたわけではない。

 

■修習を終えて、すぐに法律事務所を設立したが……

 

 今では、すっかり夜の街に馴染んで見える若林だが、生まれ育ったのはごく普通の家庭だった。

「出身は埼玉の大宮で、父親はアパレル関係の会社員、母親も同じ会社に勤めていて、結婚後は専業主婦になりました。僕自身は子供のころから活発なタイプで、小学校から高校まではずっと野球中心の生活を送り、中学ではエースをまかされていました」

 

 勉強は得意で、特別な塾通いはしなかった。野球の実績などを評価され、推薦入試で早稲田大学本庄高等学院に進んだ。

 

「高校で法律の授業があり、それがきっかけで、第一志望を法学部にしました」

 

 2005年、早稲田大学で本格的に法律の勉強を始め、卒業後は慶應義塾大学法科大学院に進んだ。順調かと思えたが、2011年の1回めの司法試験では撃沈した。

 

「受かると思っていたんです。落ちたときは『なめていたな』と思いました。もっと勉強しなければ、と目が覚めました」

 

 不合格後の1年間は、週6日、1日8~10時間を勉強に充てた。休日前、勉強仲間たちと飲むことが励みだった。翌年、司法試験に合格。司法修習を終えた2013年、現在も代表を務めるグラディアトル(「剣闘士」の意)法律事務所を先輩3人と立ち上げた。繁華街との接点が始まった。

 

「当時、僕はほとんどお客さんがいなくて、いろいろなところへ営業に行きました。そのうち、風俗業界の交流イベントで知り合った経営者たちとつながったり、大手キャバクラの顧問を引き受けたりしました。徐々に風俗系の案件が増えていきましたね」

 

 顔が売れてくると、風営法やトラブル対処を解説する風俗店経営者向けのセミナーの講師も務めるようになった。

 

「夜の街はトラブルが多く、弁護士を必要としているのに専門家はいませんでした。需要と供給からチャンスがあると考え、業界関係者が集まる会合や飲み会にも足を運び、営業をしました」

 

 歌舞伎町がメインの仕事場となれば、ヤクザやケツ持ちなどと対峙し、怖い思いをしたこともあるはずだ。

 

「ありませんね。そもそも弁護士がつく段階というのは、 “表の世界” で闘うことを意味します。すでに警察が介入していたり、裁判になっていたりします。だから、身の危険を感じたことはないです。風俗店が裏社会とつながっていたのもひと昔前の話です」

 

 むしろ現在、注意すべきなのは裏社会だけではない。

 

「僕が担当した事案では、あるデリヘル店で女性から “本番強要” を訴えられた男性が、現場に現われた刑事の立ち会いのもと、数十万円の解決金を要求されたことがありました。僕が店側による脅迫の可能性を刑事に指摘すると、ほどなく男性への要求は立ち消えになりました」

 

 若林は、刑事が風俗店の後ろ盾になり、 “美人局” に関与していた可能性を指摘する。

 

■すべての人が持つ「適正に裁かれる権利」を守りたい

 

 依頼者を守るのが弁護士の役割だ。だが、若林は「すべての依頼者に共感できるわけではない」と吐露する。

 

「正直、『この人は実刑を受けたほうが社会のためではないか』と感じるときもあります。しかし、警察や検察は、国家権力として強大な力があります。そこに法律の素人が一人で相対するのは難しい。だからこそ、弁護士がつき、最後は裁判所が判断する。どんな人も、適正な手続きで裁かれる権利だけは、守らなければならないんです」

 

 職業柄、交渉相手や依頼者が感情的になる案件もある。ストレスを抱えた夜、若林は顧問先のサパークラブやキャバクラ、ホストクラブなどに気晴らしに行く。

 

「翌日は二日酔いのこともあるので、そのまた次の日から頑張ります」

 

 激務をものともせず白い歯を見せ、若林はそう言って笑った。

 

わかばやししょう
事務所は現在、東京・大阪・新潟に拠点を置き、13人の弁護士を率いる。風俗トラブルや風営法の専門家としてメディアにも多数出演。現在はプロ野球選手会公認代理人も務める

 

取材/文・松本祐貴
雑誌記者、出版社勤務を経て、フリー編集者&ライターに。著書に『ルポ失踪』(星海社新書)など。「東洋経済オンライン」で「『現金とっぱらい』の現場で」を連載中

12

出典元: 週刊FLASH 2026年8月18日・25日合併号

著者: 『FLASH』編集部

芸能・エンタメ一覧をもっと見る

今、あなたにおすすめの記事

関連キーワードの記事を探す