
つんく♂
8月29日に『24時間テレビ49-愛は地球を救う-』(日本テレビ系)のスペシャルドラマ「幸せはある」が放送されました。同ドラマは、2014年に発覚した喉頭がんと声帯全摘出により声を失ったつんく♂さんを、いちばん近くで支えた妻・加奈子さんの目線で描いた実話に基づく物語です。
放送後、妻役の北川景子さんが、Xに《24時間テレビ49 スペシャルドラマ『幸せはある』ご視聴いただきありがとうございました》と感謝の投稿。すると、つんく♂さんご本人がそのポストを引用し、《ドラマ「幸せはある」、家族で観させていただきました。本当にありがとうございました。家族の良き宝物になりました。このドラマで、改めてこの10年のことを見つめ直す良い機会となり、家族にとって、未来に向けての多大なるパワーをいただきました。1日1日の中にある「小さな幸せ」をたくさん噛み締めて生きたいと思います。うん、幸せはある。PS.妻、加奈子、終始号泣でした。笑》と温かい言葉を添え、ネット上でも深い感動を呼びました。
筆者は以前、声帯を摘出した当時の心境について、つんく♂さんにお話を伺っています。
「運がないなと思ったよ。俺は30歳前後でタバコをやめてるのに45歳で病気になった。やっぱり第一線にいつづけるためには実力だけでなく、いろんなものが重なりあわないといけない。俺は神様から『終わり、ダメ』って言われて歌えなくなったと思ってる。だから、他人に対してうらやましく思うというよりも、『俺にはそこまでの運がなかったんだな』という気持ちのほうが強い」
悲運を受け入れる一方で、つんく♂さんはプロとしての「才能」についても触れていました。
「あとは持って生まれた才能ね。先天的に足が速い人でも、大事な大会で肉離れをしてダメになる人もおるわけやんか。だから、瞬発的な才能と長期的な才能を2つ備えないと」
つんく♂さんは、手術の2週間後ぐらいにTOKIOのコンサートを奥さんと見にいったと言います。
「ウチの奥さんが、もともとTOKIOのファンやから、だいぶ前からチケットを取っていて。手術してすぐやったし、よれよれのショボショボやったけど、TOKIOのメンバーが笑顔で迎えてくれてね。
それで俺が『ホームパーティーでもしたら来てくださいね』って社交辞令的に言うてん。そしたら、メンバーから『いつにしましょう?』って連絡がきたのよ。『ほんまにそんなことがあるのか?』と思って。
それでホームパーティーをやったんだけど、長瀬(智也)の提案で『つんくさん、ギターだったらいけるんじゃないですか? なんか軽くセッションしましょうよ』って言われて。そういう方法がまだあるのかと思ったら、ちょっと気持ちがポジティブになったのよね」
つんく♂さんは、大病を患ったからこそ、日々のささやかな出来事に光を見出せるようになったとも語ってくれました。
「ちょっとしたことでも『幸せやな』と思えるようになったことかな。炊き立てのご飯を口に入れて、『うまいな~幸せやな~』と思うとか。子供を育てる幸せとか。病気をせずに忙しくしていたら、一生家庭を顧みなかったかもしれへんからね」
ドラマでも描かれていましたが、2度の診断ミスによって対処が遅れた末の病状悪化だったという背景もあります。ミュージシャンにとっての命である「声」を奪われた事実に、取材当時の筆者は、医師たちへの怒りを禁じ得ませんでした。
しかし、当のつんく♂さんは怒りに囚われることなく、「そんなこと言ってもしょうがないやろ」といった静かな達観を見せていたのが非常に印象的でした。むしろ、病気をしなかったら一生家庭を顧みなかったかもしれないと、大きな試練さえも前向きに受け止めていたのです。
今回のドラマ放送後にあげた「うん、幸せはある」というポスト。絶望の淵を乗り越え、日常のささやかな温もりに目を向けてたどりつけたこの一言に、つんく♂さんの強さと生き様が集約されているように感じました。
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