
手打うどん「四国屋」店主の山橋さん(写真・木村哲夫)
2009年の突然の別れから17年。デビュー55周年の記念ドキュメンタリー映画が10月2日に公開されるなど、いまなお唯一無二の存在感を放つ「忌野清志郎」。彼の行きつけだった東京・中野区の手打うどん店「四国屋」の店主に、清志郎さんがよく注文していた一杯と、思い出深い一曲を教えてもらった。
<「四国屋」店主・山橋篤美さんの選んだ一曲>『スローバラード』
1976年発売。RCサクセションの6枚めのシングル
赤茶色のタイル張りの建物に、色褪せた暖簾と提灯。店内に一歩足を踏み入れると、壁という壁がポスターやチラシ、手書きの品書きで埋め尽くされている。そのなかでひときわ目を引くのが、マイクを握って熱唱する忌野清志郎さんの大きなポスターだ。
ここは、清志郎さんが生前通っていたうどん店「四国屋」だ。店主の山橋篤美さんによると、清志郎さんは、豚肉と長ねぎ、油揚げがたっぷり入った看板メニュー「肉きざみうどん」(950円)を好んで注文していたという。
初めて清志郎さんが店を訪れたのは、いまから20年ほど前のことだった。
「自転車のコーチをしていた方が、清志郎さんを連れてきてくださったんです。『清志郎さんに似ているな』とは思いましたが、こちらから声をかけることはなく、その日はお話しできませんでした。
ところが1週間後、今度はお一人でいらして、黙って私に小冊子を差し出したんです。『いただいてもいいんですか?』と尋ねても、何もおっしゃりません。開いてみると、RCサクセションのファンクラブ会報でした。それでも、ご自分から名乗ることはなかったんです。そんなことをされたら、好きになってしまいますよね」
以降、多いときには、週に3回ほど訪れ、ビールを片手にじゃこ天やエビ天をつまみつつ、カレーうどんを頼むこともあったという。
「じっくり話し込むことはありませんでしたが、お一人の時間を楽しんでいるように見えました。長いときには、3時間ほどいらっしゃることもありましたね」
しばし熟考したうえで、山橋さんが選んだ清志郎さんの1曲は、『スローバラード』だ。
「最初に聴いたのは『雨あがりの夜空に』でした。当時の僕には歌詞が刺激的で、てっきり“そういうバンド”なのだと思っていたんです。ところが、その後に『スローバラード』を聴いて、『なんてすごい曲を作るんだろう』と驚きました。駐車場で過ごす2人の姿が目に浮かぶような、まっすぐで心に響くバラードですよね。まったく異なる曲を生み出すギャップに、心をつかまれました」
同店にはいまなお、清志郎さんのファンが多く訪れる。
「特に、清志郎さんの誕生日である4月2日から命日の5月2日までの約1か月間は、多くのファンが墓参りの帰りに立ち寄ります。このうどんを味わいながら、清志郎さんを偲んでいるんです」
![Smart FLASH[光文社週刊誌]](https://smart-flash.jp/wp-content/themes/original/img/common/logo.png)







