
相馬結衣
昨年12月に横山結衣から改名宣言をした相馬結衣が3月に5年ぶりとなる写真集「 immuable」をリリースする。現在は俳優として活動を続ける彼女。役者としての原点から、どうやって「俳優 相馬結衣」が生まれ、演じることと今、どう向き合っているのか。彼女の「表現者」としての素顔に迫る。
▪️合格するとは思ってなかった
2025年10月。
東京のサンシャイン劇場で武内直子原作の人気少女漫画である『美少女戦士セーラームーン』のミュージカル『“Pretty Guardian Sailor Moon” The Super Live』の日本凱旋公演が行われた。「凱旋公演」という名前から分かる通り、この作品は、同年2月から3月にイギリスのロンドンにある2つの劇場で上演され(Team UK)、同年3月から4月にかけては、北米ツアーとしてアメリカのロサンゼルス・シアトル・シカゴ・ニューヨークなど21の都市でも上演された(Team US)。
このミュージカルで、Team UKの主演を務めたのが、相馬結衣だ。
昨年の12月21日、「横山結衣」名義から祖父母の苗字である「相馬」を選び、「相馬結衣」に改名した。
心機一転した彼女の原点に立ち返って、国際的に活躍する俳優がどうやって生まれてきたのかを探っていきたい。
2001年2月22日。
彼女は青森県で生まれる。
「ひとことで言えば目立ちたい子でした。
保育園の頃に発表会で踊りや歌があろうものなら、すごいノリノリでやっちゃう、みたいな。
すごくお洋服が好きな子で、小学校3年生ぐらいからダンスを始めて、それからはずっとダンスですね。AKB48に入る中学1年生までストリートダンスを習っていました。メインは「ヒップホップ」で、あとは「ポップダンス」っていうちょっとロボットダンスみたいなジャンルも少し習っていました。同世代の子もたくさんいましたね。
ダンスを始めてから『目立とう』というより、チームを組んでコンテストに出していたので、『目立とう』よりは『チームで勝とう』みたいな感じでやっていました。
私の地元はダンスがすごく盛んで、私が習い始めた時からもどんどんダンスが発展して、今では大きなイベントもあるくらいなんです」
そんなダンスが文化として定着している街で育った少女は、やがて、2014年「AKB48 Team8 全国一斉オーディション」と出会う。このオーディションでは、全国47都道府県から1人ずつ代表が選ばれ、その中からTeam 8のメンバーが決定する。
「保育園の時から『将来の夢は何ですか』って言われたら『芸能人になることです』とか『アイドルになることです』と言っていました。地元の青森でも、色々なオーディションがあったのかもしれないのですが、ダンスを始めた頃から、芸能界っていうところに触れる機会が無かったんです。
その中で、中学1年生の時にTeam8のオーディションが全国で開催されるっていうのが、テレビのCMや色々なところで流れていました。私が、というよりもお友達とか、お友達のお母さんとかに『これじゃない?』みたいにすごく勧めてもらったこともあり、『受けるだけ受けてみようかな』と思ったのがきっかけです」
2014年3月。Team8の青森県代表として合格する。
「合格するとは思ってなかったと思います。すごく緊張しましたし、オーディションも完全に初めてだったので。歌やダンスはやっていましたが、カメラの前で、というのがすごく緊張したことを覚えています」
▪️もっと舞台をやってみたい
アイドルとして活動しながら、彼女が演技と出会ったのは2018年7月のことだ。
チーム8単独舞台「KISS KISS KISS」に出演する。彼女にとっては初めての舞台だ。その中で名作古典戯曲「サロメ」の王女サロメを演じた。
「演技をやったことがなくて、ドキドキしながら稽古したのを覚えています。あの時に『ひとつ世界が広がった』というか、私の中で『もっと勉強したいな。舞台をやってみたいな』と思い、そこからですかね。(舞台との)出会いが強烈だったので、私の中でもすごく楽しかったという記憶があります。
グループ在籍中にはグループ全員でのお芝居をちょっとやったりとか、そこからたまに外の舞台に呼んでいただいたり、という感じでした。だんだん『本格的に女優として活動したいな』っていう気持ちが芽生えたのは、18年の舞台だったと思っています」
それまで休日は洋服を買いに行くことが多かった彼女は、様々な舞台を観に行くようになった。様々なジャンルに足を運び、時にはスーパー歌舞伎も観て影響を受けた。
こうして、ダンスや歌が好きだったアイドルの胸に演劇という新しい世界の景色が広がり始めた。
▪️違う人のことを考える
2021年11月。
彼女はAKB48から卒業する。
アイドルグループのメンバーから1人の俳優へ。
その変化を彼女は正面から受け取ることになる。
「すごく変わりました。やっぱり今まではグループの名前があって、その中の1人だったので。個人になって私に来た仕事とか、私に任せてくださったスタッフさんがいて、と考え始めると最初の頃は、すごく怖かったです。
アイドルを卒業して初めて『プロの中に混じって一人で仕事する』ということに対して、『私で大丈夫かな』という気持ちになり、それは未だにすごく思いますけれど、特にソロになったばかりの時は、緊張もあり、怖さもありでした。でも『任せていただいたからには絶対に素敵なものをお届けしたい』という気持ちもあり、なんとか必死にやっていた、という感じです。
続けることで、少しずつ本当に少しずつですが、緊張や怖さと同時に仕事を任せてもらえることに『なんか嬉しいな』っていう気持ちも芽生えてきました」
ソロとしての怖さと嬉しさを味わいながら、必死に役と向き合う彼女の演技はとても目を惹かれるものがある。
役作りなどで意識していることはあるのか尋ねると、意外な答えが返ってきた。
「『しっかりご飯を食べる』です!
役作りとは一見関係ないかもしれませんが、『違う人のことを考える』って大変だと思うんです。ただ、これは楽しいことでもあって、私がこの仕事を選んでいる理由の1つです。でも、すごく『考える』という行為は大変なところも多いので。
だから、しっかり食べて、お仕事しています。
まだ、役が抜けないということは体験したことはないんですが、私は集中すると、すごいこう(視野が狭くなるようなポーズをとって)周りが見えなくなりがちなので。そうならないためにも、ちゃんとご飯を食べようと思っています。やはり、生活を大事にしてリセットじゃないですけど。役に向き合うために必要なんです」
相馬結衣が語った「違う人のことを考える」。
これは簡単なようだが、現代では稀有になり始めていることではないだろうか。SNSなどで自己の物語を肥大化させているうちに、他者への興味や気遣いが薄れ、利己的な発想に陥ってしまいがちな現代において、それよりも、他人の物語を通してその内面に潜るという行為は、演劇に限らず我々が物語を鑑賞する時に重要になってくる行動かも知れない。そして、考え続けるために、生活を大事にする。彼女の場合は「ご飯を食べる」だが、人によって生活の部分は、また別のことになるかも知れない。演じる虚構の中の「違う人のことを考える」ことと「しっかりご飯を食べる」現実の生活を行き来しながら、俳優業を彼女は楽しむ。
▪️観客を新しい世界に連れて行ってあげたい
彼女が考える役者像はあるのだろうか。たとえば、理想の俳優は。
「『この人が好き』とか『素敵』とかはあるんですが、『この人みたいになりたい』っていうのが今はまだ無くて。今いただいているお仕事や、将来やりたいこと、そのために今は全力で、という感じです。
『この人が好き』っていうので言えば、写真集でも対談させてもらっている高橋愛さんです。『人間としてこうなりたいな』っていう人です。高橋愛さんがグループで活動している時から好きで、今ではちょこちょこご飯もいかせてもらって、相談もしています。愛さんのご主人があべこうじさんで、私が青森のTV番組に出させていただいた時の番組のMCがあべこうじさんでした。そこからご縁が繋がって、食事させていただいたのがきっかけです」
この青森のTV番組は、AKB48時代に彼女が出演していた番組である。アイドル時代の縁が、今の俳優としての彼女を支えてもいるのだ。
2026年2月22日に相馬結衣は、25歳になったばかりだ。
昨年は、海外の舞台でも活躍した。今年やりたいこと、そして、少しだけ未来の展望を彼女は語ってくれた。
「毎年言っているのかもしれないですけど、とにかくもっともっとお芝居がしたいです。私自身がお芝居を観て、毎回新しい世界に連れて行ってもらうような感覚があるんです。なので、観てくださった方を新しい世界に連れて行ってあげたいです。お芝居でお客さんに伝えたいのと同様、私も新しい作品に出会いたい、という気持ちを強く持っています。
もっと先の30代 40代になった時には、そうですね…。『相馬結衣』という名前がもっともっといろんな方に知っていただけて、『相馬結衣』と言ったらこんな人だよね、こんな役者だよね、と人々の中に『相馬結衣像』がある。そういう俳優になることが目標です」
相馬結衣が出ている作品を観に行けば、きっと我々も彼女が出会った「新しい世界」に連れていってもらえるだろう。彼女が演じる上で「違う人のことを考える」ように、我々も相馬結衣の演技を通して、自分のことを少し離れて「違う人のことを考える」。それは、疲れることかも知れないが、我々にとって大切なことだ。作品を観終わった帰り道、頭の中の「相馬結衣像」を更新しながら、きっとおいしいご飯が食べられるだろう。
相馬結衣は演技と生活を愛しながら、新しい章を進んでいく。
そうまゆい
25歳 2001年2月22日生まれT160 2014年、AKB48Team8でデビュー。2021年AKB48を卒業後は、俳優として活躍。2025年は 国内に留まらず“Pretty Guardian Sailor Moon“ [佳福1]The Super Liveロンドン公演で主役を務める。12月に「相馬結衣」に改名。そのほか最新情報は、公式X(@_yokoyuichan_)、公式Instagram(@yoko_yui_team8)にて。
※相馬結衣写真集「 immuable」は玄光社から3月17日発売
写真・HIROKAZU
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