
「フクフェス番外編」第一回ではかすみ草とステラと共演を果たした福田朱里((C)STU)
2022年12月11日。X(旧Twitter)に投稿されたこの一文から、物語は始まったーー。
「初めてフェスを主催させて頂きます。瀬戸内のアイドル文化をより盛り上げたい、メンバーがやりたい事を発言しやすい環境作りのきっかけになりたい、アイドルさんやお客様を全国から香川に呼んで地元に貢献したい……色々な思いを込め開催します。#フクフェス 少し無理してでもぜひ来て欲しいです……!!」
投稿主は、瀬戸内を拠点とするアイドルグループ・STU48の福田朱里さん。副キャプテンを務め、最新シングル「好きすぎて泣く」のカップリング曲「檸檬とレモン」ではセンターに立った人物である。
自らの名を冠した「フクフェス」は、青春をテーマにアイドルとバンドが競演する音楽イベント。2023年1月、福田さんの地元・香川県高松市での初開催を皮切りに定期的に開かれ、現在まで計5回を数える。
そして2024年秋からは、この本編とは別にフクフェス「番外編」がスタートした。舞台は東京・渋谷の「Spotify O-WEST」。直近の2026年3月12日開催で、ついに第10回の節目を迎えた。本編との違いは、開催場所が渋谷であること、そしてアイドルグループのみが出演することだ。
記念すべき10回を終え、主催者である福田さんが番外編の意義や、ここまでの手応えなどを語ってくれた。
●なぜ渋谷でアイドルだけのフェスなのか
番外編が産声を上げたのは2024年9月。その根底にあったのは、STU48のファンをはじめ多くの人に、今のアイドルシーンを知ってほしいという福田さんの思いだった。
「ファンの皆さんに他のアイドルも知った上で48グループの良さを再認識してもらいたいと感じています。実のところ、かつての私も48グループしか知らないオタクで、アイドルの形は渡辺麻友さんだけだと思っていたのですが、自分がアイドルになって他のアイドルグループも知ることで、さまざまな形があることに気付きました。それによってSTU48の良さも理解できるようになったし、自分自身の視野も広がったので、そうした経験をSTU48ファンの皆さんにもしてほしい」
同時に、STU48のメンバーたちへ刺激を与えたいという思惑もある。
「いろいろなアイドルがいてもいいんだよというのをメンバーにも見てもらいたかった。普段は瀬戸内にいるので、メンバー全員を一通り渋谷に連れてきています。(フクフェス番外編が)メンバー一人一人の良さを認めてあげられる場所になればいいなと考えています」
こうしたことが番外編の主目的ではあるが、当初はSTU48の東京でのプロモーション強化もあったと見られる。なぜなら2025年3月にSTU48の8周年ライブが「東京ガーデンシアター」で開催されることが決まっており、8000人という大きな集客目標を掲げていた。渋谷という東京の一等地において、月1回のペースで存在感を示すことは、そのための布石でもあった。
「渋谷で開く一番の理由は、知名度を上げられること。アイドルファンっぽい人が集まっていたら、何をやっているのか気になるじゃないですか。そして、他のアイドルグループとの交流ができるのも東京で行うメリットです。さらに平日でもお客さんが集まってくれる。土日は自分たちの公演や握手会で予定が埋まっているけど、平日も稼働できるのはSTU48としても大きなメリットだと思います」
そのような狙いのもと、複数のアイドルグループを毎回ゲストに招き、STU48のメンバーも月替わりで出演する形を2025年3月まで続けた。その後、5月には本編のフクフェス第4回を広島と渋谷で、11月には山口県周南市で第5回を開催。そして2026年1月から番外編が再スタートしたのである。
●毎回ぶっつけ本番
ここまでの10回を振り返り、福田さんがまず口にしたのは、さまざまなアイドルたちとのコラボの記憶だ。
「世間一般に分かりやすい出来事としては、2024年12月にCANDY TUNEさんが出演しているんですよ。その1年後にNHK紅白歌合戦に出場したのを見て、改めてフクフェスはリアルタイムのアイドル市場を肌で感じられると思いましたね。個人的な思い出は、高嶺のなでしこさんとのコラボ。通常、コラボは曲の一部だけなのですが、この時は私が大好きな『ファンサ』という曲を、初対面にもかかわらず全部踊らせてもらいました。嬉しさのあまり、歌い出しを間違ってしまって……」
それが「失敗」として今も心に残っているからこそ、またリベンジしたいと福田さんは笑う。
フクフェスの見せ場の一つが、この他グループとのコラボステージだ。現役アイドルが主催するからこそ実現できる、他のフェスにはない差別化ポイントと福田さんは強調する。とはいえ、すぐに完璧なパフォーマンスができるわけではないだろう。きっと綿密に準備しているだと思いきや、その準備期間の短さに驚かされた。
「一週間前ぐらいに動画をいただいて、自分でダンスを覚えて、この辺のパートを一緒に歌いたいという要望を、フクフェス当日に相手に相談するという流れです。本当にほぼぶっつけ本番なんですよ」
そうした状況でありながら、コラボする楽曲の選択は基本的に相手に一任している。そこにはプロデューサーとしての繊細な配慮がにじむ。
「こちらから希望することもできると思いますよ。でも、先方がその曲をセットリストに入れたいかはわかりませんし、そもそも35分間の貴重なステージの一部を私が拘束してしまうわけですから、あまり迷惑かけたくないです。それと、私が歌うパートは、相手のメンバーにとっても、そのファンの人にとっても大事な歌割りかもしれませんよね。本来ならソロパートなのに、私と2人になってしまうのは、ファンにとってどうなのだろうと。そういった責任を私なりに感じながら歌わせていただいています」
●プロデューサーとしての戦略
10回を重ねる中で、福田さん自身が得たものは何だろうか。まず挙げたのは、STU48の立ち位置の再確認だ。
「アイドル市場の中でのSTU48の戦い方が見えてきました。正統派で瀬戸内のおとなしい子たちが集まったグループと思われがちですが、意外と他のアイドルグループよりも“ロック”な方だなと感じています。そうしたパッションを瀬戸内から発信してやるぞという気持ちになりました。あとは、いろいろなアイドルグループとコラボすることで、相性がわかってきました。今後さまざまなフェスに呼ばれた際、セットリストをどう組めばいいか、ポイントをつかめました」
もう一つは、メンバー一人一人の魅力を引き出す場としての手応えである。
「あえて普段はやらないポジションをやってもらっています。フクフェスの時だけはお祭りじゃないですけど、できるだけ平等に、それぞれが目立てる場所を作れるようにしたいという思いが一番です」
そしてそれは、メンバーのパフォーマンスの幅を広げるための戦略とも連動している。
「一回やったことのあるポジションって、今後も任せてもらいやすいんですよ。だから、『この子にこの曲を担ってほしいな』と思う曲をあえて戦略的に入れていて。例えば、この前、諸葛(望愛)に『君は何を後悔するのか?』のセンターをやってもらいました。今まで経験はなかったけど、私は絶対にあの曲は彼女が適任だと見ています。なぜなら瀧野由美子の後継者だと思っているから。これからもそういった戦略は細々と立てていくつもりです」
なお、それに対して諸葛さん本人からはどういうリアクションがあったのだろうか。
「最新シングルの選抜メンバーが発表され、選抜メンバーではなくなってしまった直後だったのですが、前向きに取り組んでくれました。瀧野の真似をしろとは言いませんが、ここから自分がSTU48を引っ張っていくのだという気概を持ってもらう機会になったかなと思っています」
そのほかにも、STU48を飛び越えて48グループ随一の歌唱力を誇る池田裕楽さんを「地平線を見ているか?」のセンターに起用するなど、メンバーの個性や能力を最大限に生かす采配は、プロデューサーとしての才覚の確かさを示している。
●フクフェスファンからSTU48のファンへ
他方で課題もある。他のアイドルグループのファンが番外編でSTU48のライブを初めて観たとしても、そこから興味を持ち、さらに活動拠地である瀬戸内のライブ会場まで足を運んでもらうのはハードルが高い。東京と瀬戸内という地理的な距離が、STU48の新規ファン獲得を直接的には難しくしているのが現状で、福田さん自身もそこに対する解はいまだ持ち合わせていないという。
とはいえ、フクフェスそのものに魅力を感じるリピーターは着実に増えている。
「フクフェス自体のお客さんはちょっとずつ増えてきているし、XなどのSNSを見ると、『推しメンが出てなくても行くよ』といった声をよく目にします。イベントを面白がってくれている人もいて、オリジナリティは出せているのかなと感じています」
3月12日に開かれたフクフェス番外編第10回には、STU48のほかAsIs、ラストシーンが出演したほか、オープニングアクトでSTU48 SHOWROOM選抜2026が登場し、春の渋谷の夜を彩った。フクフェスファンをいかにSTU48のファンへと転換させるか。一手先を常に見据えているのが、現役アイドルにしてイベントプロデューサーである福田さんの真骨頂だ。
2022年末のあの投稿から3年余り。「少し無理してでも」という言葉そのままに、彼女は瀬戸内から東京へ、東京から瀬戸内へと、アイドルシーンの地図を書き換え続けようと奮起している。
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