
3年ぶりに復活した「青い向日葵」
2026年7月、AKB48の公式バンドユニット「スクールバッグ計画」が誕生した。発端は同年4月のコンサートにて、8人の現役メンバーからなるバンドがお披露目されたこと。しばらくは「AKB48バンド(仮)」と名乗っていたが、それに正式なユニット名が付いたわけである。
スクールバッグ計画としての初ステージは、7月31日に東京・明治座で開催されたライブイベント「Heavy Kawaii Fes 2026」。この場にて、オリジナル曲「クッキーキス」を含む計7曲に加え、対バン相手となったハードロックバンド・KOIAIとコラボした「フライングゲット」を披露し、観衆を大いに沸かせていた。
女性アイドルグループ内でバンドが結成されること自体は、決して珍しくはない。有名なところでは、乃木坂46のメンバーによる「乃木團(のぎだん)」などがあるだろう。
そうした中で今回取り上げたいのは、瀬戸内エリアを拠点に活動するSTU48のバンド「青い向日葵」だ。2019年3月末の結成以来、アイドルフェスに出演したり、単独ライブをこなしたりと、確かな歩みのあるバンドといえよう。
では、なぜ今取り上げるのか。それは、約3年間の休眠状態を経て、今年9月、電撃的に復活したからである。青い向日葵とは、果たしてどのようなバンドなのだろうか——。
●瀬戸内の「青」を背負ったバンド
青い向日葵は、2018年末にメンバー同士の何気ない雑談から、STU48の兵頭葵さんが発起人となって生まれた。バンド名にある「青」は、瀬戸内のカラーを象徴している。
結成時のメンバーは、兵頭さん(ベース)、今村美月さん(ギター&ボーカル)、福田朱里さん(キーボード)、瀧野由美子さん(サックス)、榊美優さん(ドラム)の5人。2019年3月31日に広島国際会議場・フェニックスホールで開催された「STU48 2周年記念コンサート」にて初めて公の場で演奏すると、同年8月には国内最大級のアイドルイベント「TOKYO IDOL FESTIVAL 2019」に出演した。
2020年9月には、初のオリジナル曲「青春各駅停車」をリリース(STU48の5thシングル「思い出せる恋をしよう」に収録)。そして、2021年9月には初めてのワンマンライブを敢行している。
このように、非常に快調な滑り出しだったが、その後、2021年12月にバンドメンバーのグループ卒業などもあって、徐々にトーンダウンしていく。そして、2023年11月3日、広島グリーンアリーナで開かれた「STU48 瀧野由美子卒業コンサート」でのステージを最後に、ピタリと活動はなくなってしまう。
青春各駅停車の楽曲自体はSTU48のライブでよく歌われるものの、青い向日葵というバンドについては、約3年間、ほとんど話題に上ることがなかった。そうした中での、今回の復活劇である。トリガーとなったのは、バンドの一員である福田さん主催の音楽イベント「フクフェス」だった。
●「青い向日葵、フクフェスでやろうよ」
バンドリーダーの兵頭さんによると、「フクフェスVol.6」への出演の話が持ちかけられたのは、1年ほど前だったという。
「バンドをやりたいなとは思っていたんですけど、メンバーがどんどん卒業していくので難しかった。そうしたらある日、ふくちゃんが『青い向日葵、フクフェスでやろうよ』と言ってくれたんですよ。2026年9月に高松でフクフェスやるからって」
それを聞いた兵頭さんは素直に喜んだが、復活にはハードルがあった。メンバーの不在だ。この時点でSTU48に残っているオリジナルメンバーは、兵頭さんと福田さんだけだった。
兵頭さんと福田さんはドラムに関して新メンバーを検討した。そこで白羽の矢が立ったのが宗雪里香さんである。実は、宗雪さんも青い向日葵復活を耳にしたのがほぼ1年前だという。福田さんの頭の中には既に新たなドラマーの構想があったのだろう。
「ドラムは学生時代の部活動で経験していたのと、ゲーム『太鼓の達人』で鍛えました(笑)。あとは、どうしても青い向日葵に入りたかったから、電子ドラムを購入して自宅で練習したり、昨年、3カ月間だけですがドラム教室に通ったりしました。とにかく1年かけて猛アピールしました」と宗雪さんは振り返る。
これに対して兵頭さんも「(2025年、2026年と2年連続で)私の生誕祭でも直々にお願いしますと言われました」と明かす。その並々ならぬ情熱が伝わり、フクフェスの1カ月前、宗雪さんの正式加入が決定した。
現役メンバーにドラムを叩ける宗雪さんがいたことは幸いだったが、その他の楽器の穴をどう埋めるかは、課題として残っていた。
今回、ファンにとって最大のサプライズ発表だったのが、今村さんの出演であろう。ただし、これは周囲の反応であって、兵頭さん曰く、青い向日葵には「卒業」がないため、今村さんがステージに立つのは当然なのだという。実際、今村さん自身はどう思ったのだろうか。
「フクフェスの1カ月前にオファーをもらいました。それはびっくりしましたよ。(フクフェスの)MCでもちょっと話しましたが、本当に呼んでくれるとは思わなかったので。例えば、誰かの卒業コンサートや卒業公演の時にOGとして帰ってくることはありましたが、バンドの“現役メンバー”として出してもらえるんだと」
こうして出演は叶ったが、今村さん自身にも本番に向けた障壁がいくつかあった。一つは、東京に拠点を置いて活動しているため、他のメンバーとの合同練習ができないことだった。
「どの曲をやるかという話し合いにも参加できなかったし、リモートでは音合わせも難しいので、大丈夫かなといったドキドキが大きかったです」
また、アコースティックギターは東京の自宅にあったが、バンドで使用するエレキギターは広島の実家に置いたままだった。そこで出演が決まると、すぐに広島へ取りに行き、東京に持ち帰って練習を重ねたそうだ。
他方で、久々の仲間たちと一緒に演奏する高揚感もあった。
「ゆきりか(宗雪さん)が入ってきて新しい体制になるというワクワク感と、フクフェスの、何ていうのだろう、ふくちゃんが作る場の盛り上がりは、(STU48のライブとは)違う楽しさがあるなと思っていたから、嬉しかったですね」
●3年ぶりの音、高松のライブハウスに響く
このような経緯で復活を遂げた青い向日葵は、9月21日の「フクフェスVol.6」2日目のオープニングアクトで、3年ぶりにステージに立った。
会場となった香川県高松市のライブハウス・高松festhalleには、朝から数百人のファンが詰めかけた。定刻の午前11時45分を少し過ぎたころ、場内のBGMがストップする。次の瞬間、「皆さん、こんにちは! 青い向日葵です!」と福田さんが大声を上げ、AKB48の「GIVE ME FIVE!」の演奏が始まると、客席からは大きな歓声と拍手が湧き上がった。
以前の青い向日葵は、サックスがメロディーラインを演奏することが多かったが、今回はサックスがないため、福田さんのキーボードがその役割を担っていた。また、「GIVE ME FIVE!」では今村さんによるギターソロも見せ場だった。練習では一番の難関で苦労したそうだが、出来栄えはどうだったのだろうか。
「単音弾きがたくさんあって大変でした。いやー、何回かミスっちゃいました。ギターソロの最後のチョーキングが微妙だった気がして、もっと伸ばして弾きたかったです」と今村さんは悔しがる。
2曲目は、STU48の「夢力」。そして「青春各駅停車」と計3曲を披露した。夢力では、ベースの兵頭さんと、キーボードの福田さんが楽器をチェンジ。「葵ちゃん(兵頭さん)のベースがカッコ良すぎて憧れて、実はちょっと練習してたんですよ」と福田さんは理由を説明する。
ここでは兵頭さんの多才ぶりが発揮された。ベースだけではなく、キーボードの演奏もそつなくこなしていた。なお、ギターも弾けるらしい。さらに興味深いのは、ピアノ以外の楽器はすべて、青い向日葵を立ち上げてから練習して、上達したという点だ。
それは福田さんも同様で、上述のように、挑戦心から夢力でベースを担当した。感心したのは、数々のバンドを見続けてきただけあって、その佇まいが安定感のあるプロベーシストそのものだったことだ。
ライブ全体を通して、宗雪さんはバンドとしての初舞台ながら堂々とした演奏に見えた。そのことを本人に問うと、「私が緊張したらリズムが崩れちゃうから、気持ちを落ち着かせて、そうならないように自分に言い聞かせて頑張りました」と涼しい顔で答える。兵頭さんも宗雪さんを大いに褒め称える。
「やる時はやるタイプだから、けっこう信頼していました。実際、スタジオ練習の時も、すごく集中して練習してくれましたから。本当に嬉しかったです」
●それぞれが描く次の夢
これをきっかけに、青い向日葵をきちんと再始動させていきたい意欲がメンバーたちにはあるようだ。
兵頭さんは「AKB48さんと対バンしたい」と目を輝かせるとともに、TOKYO IDOL FESTIVALのような外部のフェスにもバンド単独で出演できるようになりたいと意気込む。
宗雪さんは、STU48の課外活動ユニットの一つに青い向日葵を加えてもらい、「青い向日葵公演」を実現したいと訴える。
もともとバンドが好きな今村さんは、久々にステージに立ってみて、新たな目標ができたようだ。
「バンドのすごさって、ゼロから皆で音を作っていく力だと思います。皆というのはバンドメンバーだけでなく、お客さんも一緒にということ。久々にライブをして、『あぁ、バンド活動をしてるな!』という感情になりました。また青い向日葵でステージに立ちたいですし、広島グリーンアリーナでもう一度やりたいという夢を持ちました」
最後に兵頭さんは、福田さんへの感謝を口にした。
「ふくちゃんは顔が広いし、バンドにも詳しいし、本当にふくちゃんのおかげで復活できたなと思います」
メンバーそれぞれの心に灯ったバンドに対するモチベーションの炎を絶やさないためにも、青い向日葵の活動は継続してほしい。今から各自しっかりと演奏技術を磨いていけば、女性アイドルグループ界隈において台風の目となる日も、そう遠くないのではなかろうか。
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