【介護の法律トラブル事例】
《誤嚥による介護事故》
●鹿児島地裁のケース(2014年1月)
・概要:
介護老人保健施設に入所していた男性(78)が、誤嚥により窒息、低酸素脳症に。誤嚥のリスクを認識しながら、ロールパンを小さくちぎらず、そのまま提供したためと主張。
・請求&求刑:4800万円を請求
・判決:使用者責任を認め、約4000万円の支払いを命じる
●青森地裁のケース(2017年5月)
・概要:
介護施設に短期入所していた男性(60代)が、朝食の鶏肉を喉に詰まらせて緊急搬送。誤嚥性肺炎による低酸素脳症で死亡。男性は要介護2で、遺族側は入所時に食事に関する注意点を話しており、誤嚥は回避可能だったと主張。
・状況:裁判中
●松山地裁のケース(2017年6月)
・概要:
グループホームに入所していた高齢女性が朝食のパンを喉に詰まらせ、低酸素血症で死亡。施設側が適切な措置を怠ったのが原因として訴えた。
・請求&求刑:慰謝料など1100万円の損害賠償を請求
・状況:裁判中
●長野地裁のケース(2013年12月)
・概要:
特養の利用者女性(85)が、おやつのドーナツを食べた直後に意識を失い心肺停止。約1カ月後に死亡。配膳していた准看護師が、業務上過失致死罪で起訴された。
・判決:一審は罰金20万円の有罪判決。二審は東京高裁で、2020年4月23日に判決
●大阪地裁のケース(2013年4月)
・概要:
訪問介護サービスの利用者女性(67)が、食事中の誤嚥により窒息で死亡。
・状況:本人や家族が誤嚥の危険を訴えたという記録がなく、請求棄却
《転倒・転落による介護事故》
●大津地裁のケース(2016年11月)
・概要:
介護付き有料老人ホームに入居していた女性(91)が、洋式トイレの便座に横向きに座らせた介助により転倒。摂食不能となり、3カ月に死亡した。
・請求&求刑:2520万円を請求
・判決:2520万円の支払いを命じる
●名古屋地裁のケース(2014年12月)
・概要:
左半身に麻酔があった男性が施設内のトイレで転倒、頸髄損傷で寝たきりに。翌年、肝ガンにより死亡。長男が「事故を予見し、対策を取れたはず」と主張。
・請求&求刑:2000万円を請求
・判決:1165万円の支払いを命じる
●東京地裁のケース(2013年7月)
・概要:
グループホームに入居していた男性(93)が、2階の窓から転落、腰の骨を折って寝たきりになり、2016年に死亡。
・請求&求刑:3787万円を請求
・判決:「窓のストッパーの状態が安全性を欠いていた」として、1075万円の支払いを命じる。
●東京地裁のケース(2014年8月)
・概要:
特養に入居していた女性(75)が、ベッドから車椅子に移動する際、介護用リフトから転落、外傷性くも膜下出血などにより死亡。
・請求&求刑:3731万円を請求
・判決:1752万円の支払いを命じる
●福岡地裁のケース(2012年9月)
・概要:
ショートステイ利用者の女性(100)が、職員の送迎で帰宅する際、階段を踏み外して転落、道路に頭部を強打して入院。同年11月に、肺炎で死亡。
・請求&求刑:6000万円を請求
・判決:1358万円の支払いを命じる
●松山地裁のケース(2010年4月)
・概要:
介護老人保健施設で女性(90代)が車椅子で転倒し、寝たきりに。施設側の注意義務違反が原因と訴えた。
・請求&求刑:1400万円を請求
・判決:「施設側に、予見義務や安全配慮義務違反があったとはいえない」として請求棄却
《その他の介護事故》
●広島地裁のケース(2019年9月)
・概要:
グループホームに入所していた認知症の女性(80代)が、夕食後に外出、翌日近くの川で遺体で発見された。
・請求&求刑:外出を防ぐ措置を怠ったのが原因として提訴
・状況:和解協議中
●福岡地裁のケース(2014年1月)
・概要:
デイサービスの利用者女性(76)が施設を抜け出し、夜に約1.5km離れた畑の中で、低体温症により死亡。
・請求&求刑:2964万円を請求
・判決:利用者の徘徊癖を施設側も認識しており、注視義務違反で2870万円の支払いを命じる
●岐阜地裁のケース(2018年4月)
・概要:
ショートステイを利用していた認知症の男性(70代)が、パン切り包丁を持って徘徊。刃物を取り上げようとした男性介護士(35)が、男性の顔面を殴り転倒させた事件。弁護側は、「正当防衛行為」として無罪を主張している。
・判決:25万円の罰金
※すべての事例の年齢は事故発生当時のもの
写真・朝日新聞
(週刊FLASH 2020年4月14日号)