ほかにも、売り主が損する「値ごなし」の方法はある。その最たるものが、「業者卸し」だ。
「不動産を売り主から買い取り、転売することを目的にする、『買取り業者』が存在するんです。
仲介業者は売却の相談をするなかで、売り主との信頼関係を作っていきます。そこで、本当は売れる家なのに『どうしても買い手がつかないんですよ』と繰り返し吹き込み、売り主に『あれだけ熱心な人が言うんだから、本当に売れないんだな』と、信じ込ませてしまうんです」
そこで仲介業者は、「普通に売るのは難しいので」と、買い取ってくれる業者を探すことを提案する。
「ところが、この買取り業者が、じつは仲介業者と仲のいいところなんです。買取り業者は、3000万円ぐらいで売れるかもしれない物件を、2000万円ぐらいで買い取り、すぐに転売します。この転売で数百万円の利益が出ます。
さらに転売するときは、先ほどの仲介業者を通すんです。そうすると、仲介業者はもう1回、手数料をもらえるんですよ」
この「業者卸し」では、本来の売却価格から2~3割も安い額で売却されることが一般的だという。
「さらにひどいケースになると、買取り業者から仲介業者の担当者に『担当者ボーナス』、通称『担ボ』と呼ばれる “お小遣い” を渡し、物件をまわしてもらうこともあります」
マンションだけでなく、空き家になった実家の処分など、不動産の売却に直面する可能性のある人は多い。不動産業者の手口に気をつけるだけで、郊外のマンションでは数百万円、価格差が大きい田舎の物件なら、1000万円も売却価格が変わってくるという。
いざ不動産を売る立場になったとき、我々が注意すべき点は何か。
「まずは、複数社から査定を取ったほうがいいでしょう。3社ぐらい取ると、相場の幅がわかります。
あまり高い査定を出す業者は要注意です。高い査定価格で売りに出しても、結局、売れなくて、価格を下げて売ることになってしまうんです」(前出・長嶋氏)
コラビットが運営するサービス「HowMa」では、AIによる不動産の査定をおこない、そこから複数の不動産業者へと売却依頼ができるようになっている。
「『売れない』と思ってあきらめていた田舎の物件が、AI査定の結果、売れるとわかって、喜んでいただいているユーザーさんもいます。手軽に自分の資産価値を知るだけでも、いいと思います」(浅海氏、以下同)
また、不動産売買の契約の種類には、「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」の3種類がある。渡邉氏は「一般媒介契約を選ぶべき」と強調する。
「専属専任媒介契約、専任媒介契約は、売り主に対して窓口となる不動産業者は、1社だけです。一般媒介契約なら、複数社に依頼すれば、より多くの販路を利用できるので、売り主にとってメリットが大きいといえるでしょう」
そして、なにより重要なのは、「売る側が主導権を握ること」だと浅海氏は言う。
「不動産という世界は複雑、というイメージから、顧客は業者に依存して、悪く言えば言いなりになるしかありませんでした。しかし、それでは、好き勝手に物件を買い叩かれるばかりです。
最低限の知識を持ち、きちんと意見すれば、営業マンに『このお客は詳しいな』と思わせ、無茶が通用しない形に持ち込めるんです」
まずは、この記事の「専門用語」を勉強するのも一考だ。以下に、査定を申し込んだ際のシミュレーション事例を掲載するので、ご参考あれ。
(週刊FLASH 2020年4月28日号)