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【食堂のおばちゃんの人生相談】50歳・会社員のお悩み

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2020.06.26 11:00 最終更新日:2020.06.26 11:00

 

「食堂のおばちゃん」として働きながら執筆活動をし、小説『月下上海』で松本清張賞を受賞した作家・山口恵以子。テレビでも活躍する山口先生が、世の迷える男性たちのお悩みに答える!

 

【お悩み/匿名希望(50)会社員】
 最近耳が遠くなり、人の話が聞き取りにくくなった。病院に行ったら、「加齢によるもので、機能に異常はない」との診断だった。ただ、部下のA君の声が特に聞き取りにくくて、何度も尋ね直してしまう。けっして他意はないのだが、陰湿なイジメと思われているらしい。どうしたらいいでしょうか

 

 

【山口先生のお答え】
 それは大変お気の毒です。実は、私も10年ほど前、耳鳴りによる難聴で苦しんだ時期があったので、あなたのお悩みは他人事とは思われません。

 

 私の場合は、今にして思えば更年期障害の前期症状で、強烈な目まいの発作に何度も襲われ、その影響で耳鳴りを併発しました。

 

 最初は左耳だけだったのですが、次第に右耳も耳鳴りが発症し、一番ひどい時は人の話がまったく聞き取れなくなりました。 音声そのものは聞こえるのですが、話す言葉の一音一音の輪郭がぼやけて繋がってしまい、意味を聞き取れないのです。

 

 音が小さくて聞こえないなら補聴器を使えば改善しますが、このような状態だったので補聴器も役に立ちそうになく、難渋しました。 だから何度も聞き返しました。同じことを繰り返し尋ねるのは嫌でしたが、仕事に必要な内容は仕方ありません。

 

 ただ、雑談の時は何を言っているかわからなくても、わかったような振りをして周りに合わせて笑っていました。あの時期は本当に辛かったです。

 

 ただ、そんな時でも話す言葉がハッキリと聞き取れる人たちが存在しました。アナウンサーです。特にベテランと呼ばれる人たちの言葉は、一音一音の輪郭がくっきりと粒立っていて、光り輝くようでした。私はアナウンス技術というのは人類の宝だと思いました。

 

 あの時、アナウンサーだけが私に言葉を届けてくれたのです。加齢その他の原因で聞こえにくくなっている人たちの耳にも、きっと届いていたでしょう。もし、地震や大規模火災が発生して避難勧告が出たら、アナウンサーの声がその人たちの命綱になるのです。

 

 だから、アナウンサーの皆さんには、水着になろうがヌードになろうが、アナウンス技術という宝を磨き続けてほしいと思います。毎度のことながら、話が横道にそれてしまってすみません。

 

 私の場合は兄が整体師だったこともあり、整体の施術を受けて何とか回復しました。最初は週に5、6回通いましたが、徐々に耳鳴りが小さくなり、目まいの発作も治まりました。3カ月で右耳は完全に耳鳴りが治りました。

 

 ただ、左耳には今でも耳鳴りが残っていて、電話も人の話も右耳を傾けて聞いています。聞き返すことも多いので、親しい方には事情を話してご容赦願っています。

 

 あなたの場合も、部下の皆さん(Aさんだけに言うのも不自然かも知れない)の前で「近頃耳が遠くなっちゃってね。医者に行ったら年のせいだって言われたよ」なんて、雑談の形で正直に仰るのが一番よろしいと思います。

 

 そして、その後も「いやあ、耳が遠くてさあ」と、2、3回大袈裟にボヤきましょう。そうすれば聞き返しても「耳が遠いんだから仕方ない」と納得してくれるでしょう。

 

 ただ、これを機会に補聴器をお使いになるのも一案ではないかと思います。今は非常に小型で優秀な機種も出ていますから、どうぞ耳鼻科の医師とご相談下さい。

 

やまぐちえいこ
1958年、東京都生まれ。早稲田大学文学部卒。就職した宝飾会社が倒産し、派遣の仕事をしながら松竹シナリオ研究所基礎科修了。丸の内新聞事業協同組合(東京都千代田区)の社員食堂に12年間勤務し、2014年に退職。2013年6月に『月下上海』が松本清張賞を受賞。『食堂メッシタ』『食堂のおばちゃん』シリーズ、そして最新刊『夜の塩』(徳間書店)が発売中

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