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いまこそ知りたい「肝臓の真実」健康診断の注目数値は「A/G比」
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2020.06.30 16:00 最終更新日:2020.06.30 16:00
●Q3.肝臓はいつ、誰が“発見”した?
人類が「肝臓」の存在を知ったのは、古代ローマ帝国時代の西暦200年以前にまでさかのぼる。
「医学史の教科書によれば、当時、ギリシャ人の医学者・ガレン(ガレノス)によって、肝臓が “発見” されたとのことです。当時すでに、ギリシャには解剖学という概念がありました。ガレンは解剖によって、実際に肝臓を見たのでしょう。
彼は、『心臓より大事な臓器がおなかの中にある』と言ったのですが、その臓器がどんな役割を果たしているかまでは、よくわからなかったようです。
当時、『血液は肝臓で作られて、全身に分配されている』と考えられていました。現代では、血液成分のほとんどは骨髄で作られることがわかっています」(岡田氏)
ガレンは、古代ギリシャを代表する医学者。負傷した剣闘士を治療する医師として活躍したあと、ローマに移り皇帝の典医となった。動物を使った解剖実験や、人体へのさまざまな外科手術をおこない、のちのヨーロッパやイスラム圏の医学に大きな影響を与えた。
一方、日本人が初めて肝臓を知ったのは、ガレンの発見から1500年後のこと。ドイツ人医師・クルムスの解剖学書をオランダ語訳した『ターヘル・アナトミア』が杉田玄白らによって邦訳され、『解体新書』として刊行された、安永3(1774)年のことである。
●Q4.健康診断の「数値」はどう見ればいい?
健康診断の「肝機能」の検査項目には、アルファベットがずらりと並ぶ。これらの検査項目は、そもそも何を意味するのか?
検査項目は大きく分けて「肝機能の障害の程度を見るもの」「肝細胞の働きを見るもの」「肝細胞、胆汁の流れに障害がないかを見るもの」の3つに分けられる。
「肝機能の障害の程度を見る項目が、ALT(GPT)、AST(GOT)、そしてγ-GTPです。これらの数値が上昇していれば、肝細胞が壊れつつあることを示しています」(岡田氏)
酒飲みなら、よく耳にする検査項目が、γ-GTPだろう。アルコールに敏感に反応するため、肝障害を起こしていなくても、数値が上がることがある。
「お酒を飲んだ翌日というだけでも、数値が上昇します。一定期間、禁酒すれば数値が下がるので、その後に再検査して数値の変化を見れば、たんなる飲みすぎなのか、肝臓に障害があるのかを区別できます」(同前)
肝細胞の働きを見る数値の代表が、A/G比(アルブミン/グロブリン比)だ。
「肝臓には、たんぱく質を作る重要な働きがあります。血液中で、もっとも多いたんぱく質がアルブミンです。肝臓に疾患があると、アルブミンの量が減り、グロブリンという別のたんぱく質が多くなります」(栗原氏)
ほかにも、総たんぱく(TP)、コリンエステラーゼ(Ch-E)、乳酸脱水素酵素(LDH)などが、肝細胞の働きを見るための項目だ。そして、肝細胞や胆汁の流れに障害がないかを見るのが、総ビリルビン、アルカリフォスファターゼ(ALP)などの項目だ。
じつは、これらの検査で登場する基準値は、検査する医療機関や測定方法、測定機器によって少しずつ変わるという。
「基準値は、『正常値』ではありません。『健康な方の95%が、この値の中に含まれる』という意味です。言い換えれば、健康であっても5%の人が、基準値から外れていることになります。
そのため、ひとつの項目だけを見て判断するのではなく、検査結果を総合的に見て判断する必要があります」(岡田氏)
数値に一喜一憂する必要はないが、無視すると大変なことになるということだ。次のページでは、健康診断結果の項目ごとの意味と基準値を紹介する。