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冠二郎の症例に学ぶ「酒と肝臓の関係」γ-GTPが900を超えて…

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2020.07.08 16:00 最終更新日:2020.07.08 16:00

冠二郎の症例に学ぶ「酒と肝臓の関係」γ-GTPが900を超えて…

左から健康な肝臓、脂肪肝となった肝臓、肝炎を起こした肝臓。色が濃くなっているのが「線維化」した部分(写真提供/栗原クリニック東京・日本橋院長の栗原毅氏)

 

 さらに、多量の飲酒を長期間続けていると、「アルコール性肝炎」、そして「アルコール性肝硬変」へと進行する。

 

「アルコール性肝炎が進んで肝細胞が壊されると、その周辺に炎症反応が起きて、肝細胞の代わりに線維が増え、『線維化』と呼ばれる状態になります。この線維化した部分が増えた状態が『肝線維症』。

 

 さらに線維が増えると、太い線維の束が、いくつかの肝細胞の塊を囲むようになります。 この塊を『結節』と呼びます。結節ができた状態が、肝硬変です。程度にもよりますが、肝硬変が進むと、肝臓は簡単に元には戻りません」(加藤医師)

 

 肝硬変になると、その一部は「肝臓ガン」へと進行する。

 

「ただし、肝臓ガンの原因の8割はウイルス性で、アルコールに起因する肝臓ガンは多くありません。肝臓ガンに進行する前に、肝炎や肝硬変などで亡くなってしまうケースが多いからです。

 

 肝硬変になっても酒を飲み続けた場合、5年後の生存率は35%という数字もあります」(浅部医師)

 

 肝機能が悪化しても、自覚症状は、ほとんどないのが恐ろしいところ。黄疸や腹水など、肝臓の病気特有の症状が現われるのは、肝硬変の病状が相当、進行してからだ。

 

「肝細胞は再生能力が高いので、壊れても、すぐに復活します。その間、肝臓の機能は保たれているんです。この段階なら回復できます。

 

 しかし、細胞が破壊、再生を繰り返すうち、十分には再生できなくなり、だんだん症状が出てくるんです。気づいたときには、すでに相当悪化していることも多いのです」(同前)

 

 アルコール性脂肪肝から肝炎、肝硬変と進行していくのは間違いない。だが「適量」を守っていれば、酒をやめる必要はないという。

 

「よくいわれるのは、純アルコール換算で、1日あたり20gが適量ということです。このレベルなら、肝臓へのリスクは、ほとんどありません」(同)

 

 アルコール20gは、ビールなら中瓶1本か、500ml缶1本。日本酒なら1合、ワインならグラス2杯に相当する。しかし酒飲みにとって、この程度の量で満足するのは難しいところだ。

 

「『少々、肝臓に悪くても、酒で早く死ぬようなことがなければよし』とする考え方もあります。そういう人は、1日40g以下を目標にすればいいんです。これくらいなら、飲まない人と比較しても死亡率が高まることはなく、危険性は低いでしょう」(加藤医師)

 

 ビール中瓶なら、2本程度までなんとかOKということだが、これが3本を超えてはいけない。医学的には、「適量」に個人差はなく、「酒に強くて飲める」という人こそ、身体を悪くしてしまうからだ。

 

「アセトアルデヒドを分解する能力は、遺伝子によって決まっています。この能力が強いタイプと弱いタイプでは、アルコール分解能力が5倍ほども違います。日本人の場合、半分が『強い』と『弱い』の中間のタイプだとされています」(浅部医師)

 

 この「強い」タイプの人こそ、酒量を節制しなければならないのだ。手軽な気分転換の手段である酒。しかし肝臓が「有害物質」とみなしていることを、忘れてはいけない。

 

あさべしんいち
『酒好き医師が教える最高の飲み方』などを監修

 

かとうしんぞう
都立広尾病院の内科医長などを経て現職に

 

(週刊FLASH 2020年6月16日号)

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