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【食堂のおばちゃんの人生相談】42歳・自営業のお悩み
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2020.08.17 11:00 最終更新日:2020.08.17 11:00
「食堂のおばちゃん」として働きながら執筆活動をし、小説『月下上海』で松本清張賞を受賞した作家・山口恵以子。テレビでも活躍する山口先生が、世の迷える男性たちのお悩みに答える!
【お悩み/料理見習いさん(42)自営業】
来年中学生になる娘を持つシングルファーザーです。妻は、娘が5歳のときに亡くなりました。娘は、祖母や私の手料理に文句を言わず、最近では自分でも料理を作ってくれます。
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妻は料理が上手で、とくに肉じゃがは絶品でした。娘は、「ママの肉じゃがは世界一!」と言っていました。「お袋の味」なんですね。娘のために、なんとか妻の味を再現したいのですが、無理ですよね……。
【山口先生のお答え】
お悩みを伺って、感動のあまり思わず泣いてしまいました。なんて素晴しいご家族なんでしょう。わずか5歳のお子さんを残して亡くなった奥さんはさぞ心残りだったと思いますが、あなたとお母さんは力を合わせて、精一杯育ててこられたのですね。
そのご苦労は立派に報われています。まだ小学生の娘さんが、お父さんとおばあちゃんのために料理を作ってくれるんですもの。日曜日放送の『噂の!東京マガジン』(TBS系)をご存じですか?
人気コーナー「やって!TRY」では街行く若い女性に料理を作ってもらうのですが、肉叩きで鰺を叩いた「鰺の叩き娘」、焼きそばにアンコをかけた「餡かけ焼きそば娘」、烏賊に綿あめをのせた「烏賊の綿焼娘」など、名物娘が目白押しです。ったく、親の顔が見たい!
彼女たちにお宅の娘さんの爪の垢を煎じて飲ませてやりたいと思うのは、私だけではないはずです。
それで、あなたの娘さんですが、きっとお母さんの味を覚えているのでしょう。それなら、いつか自分でその味を再現できるようになると思います。もちろん、記憶の中で美化されて別の味になっているかも知れませんが、それはそれで良いのです。娘さんなりの「お母さんの味」にたどり着ければ。
あなたとお母さんが娘さんの作る肉じゃがを食べて「死んだお母さんの味だね」と言える日がきっとやってきます。どうぞお幸せに。
やまぐちえいこ
1958年、東京都生まれ。早稲田大学文学部卒。就職した宝飾会社が倒産し、派遣の仕事をしながら松竹シナリオ研究所基礎科修了。丸の内新聞事業協同組合(東京都千代田区)の社員食堂に12年間勤務し、2014年に退職。2013年6月に『月下上海』が松本清張賞を受賞。『食堂メッシタ』『食堂のおばちゃん』シリーズ、そして最新刊『夜の塩』(徳間書店)が発売中