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「内視鏡は危険なの?」渦巻く疑問に日本一のゴッドハンドが結論を!

ライフ・マネー 投稿日:2016.08.29 13:00FLASH編集部

「内視鏡は危険なの?」渦巻く疑問に日本一のゴッドハンドが結論を!

 

●輸血が必要なのは0.001%以下

 

 初期のESDには、手術時間の長さのほか、2つの課題があった。穿孔(ガン以外の部分に穴を開けてしまうこと)と出血である。医療不信を煽る記事では、手術中に患者の大量出血を引き起こし、「大パニック」になる医師の実例が、毎週のように報告されている。

 

 だが、この問題はすでに克服されたと大圃医師は言う。

 

「出血も穿孔も、今ではまったく問題になりません。たとえば大腸ガンなら、僕らは昨年に657例のESDを手がけています。そのなかで約1%は出血し、約3%は穿孔を起こす。いずれも、内視鏡で治療できるレベルのものです。

 

 輸血が必要になる例なんて、何年かに一人くらいですよ。食道ガンにいたっては、僕個人でも300〜400例は手術していますが、出血したことはこれまでに一度もありません」

 

 従来、ESDは根治性(完全に治すこと)は高いが、そのぶん難しい手術法だとされてきた。

 

「ガンの場所によっては、僕らにとってはESDのほうがはるかに安全に切除できる。でも、EMRや開腹手術が得意な医師は、逆のことを言うでしょう。得意な手技を用いて、安全にできるのであれば、それでいいんじゃないでしょうか。僕らにとっては、それがたまたまESDであるというだけの話です。

 

 医師の技術差を無視して、『内視鏡・腹腔鏡手術と開腹手術のどちらが安全か』と議論することに意味はありません」

 

●ガン手術はさらに安全になっていく

 

 ESDが国内で着手されたのは1998年だが、大圃氏は黎明期である2000年から、この技術を独学で学んできた。

 

「今の病院に移るまでは、ずっと一人でやってきました。そのころは『孤高のゴッドハンド』みたいな医者のほうがカッコいいと思っていたんですが(笑)、一人でできる医療の限界も感じていた。僕が教えた10人の医師が、各々年に100人の患者を治せば、1000人が救えますから」

 

 2007年、「内視鏡のチームを作っていい」との誘いを受け、NTT東日本関東病院に移籍。最初は3人から始まったグループは10人に成長した。同院のESDの患者数は、5年で10倍以上に急増。大学病院などからも、難度の高い依頼が数多く寄せられている。

 

「ESDの技術は、10年前から完成していると思っている。これからは、その技術を普及させていかなければならない。目の前の部下たち、部下たちが教える外の施設の医師たち、さらには海外――。上海や北京なら、早朝に出れば午後には手術できちゃうからね。

 

 よく、海外に行くのは法外な収入をもらってるからだなんて言われるけど……(笑)、ほんと、交通費とか実費だけ。無報酬ですから」

 

「現代のブラック・ジャック」は「お金のことを考えたら、できない」と笑う。

 

「2006年から2012年にかけて、早期の胃ガン、食道ガン、大腸ガンのESDが保険適用になったのも、有効性と安全性が認められてきたからでしょう。

 

 しかし、内視鏡の専門医は1万6000人あまりいますが、習熟の域に達していない医師がいるのも事実。だから技術指導を請われるのは嬉しいし、光栄ですね」

 

 こうした取り組みにより、内視鏡手術への信頼と安全性は、日に日に高まっている。

 

(週刊FLASH2016年2月16日号)

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