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羽生善治九段、棋力衰退が指摘されるも「タイトル100期を達成する」4人の証言

ライフ・マネー 投稿日:2020.12.17 06:00FLASH編集部

羽生善治九段、棋力衰退が指摘されるも「タイトル100期を達成する」4人の証言

第31期竜王戦第7局、羽生九段が27年ぶりに無冠になった終局後の様子(2018年12月21日、山口県下関市「春帆楼」にて)

 

「あと1期であれば、99%獲ると思います。ただ、この2年間が勝負でしょう。仮に藤井(聡太)二冠が、かつての羽生さんのように全冠制覇する力をつけたら、それは難しいかもしれません」

 

 羽生善治九段(50)に、タイトル戦で4度の挑戦経験がある将棋連盟常務理事の森下卓九段(54)は、そう証言した。

 

 

 積み上げたタイトル獲得数は、99期。棋界のレジェンド・羽生九段が、あと1期に迫った大台を前に、足踏みを続けている。2年前に27年ぶりに無冠になり、今回、2年ぶりにタイトルに挑戦したが、12月6日に、豊島将之竜王(30)に1勝4敗で敗退した。

 

 25歳で七冠を達成した羽生九段も、2020年で50歳を迎えた。一部では、棋力の衰えも指摘されているが――。若手トップ棋士のひとりで、名人獲得3期の経験を持つ佐藤天彦九段(32)も、羽生九段のタイトル獲得の可能性については「十分あり得る」としたうえで、こう語る。

 

「現在の序盤戦術は、羽生九段の棋風に合った時代ではないかもしれません。AIを使って、ひとつの戦法を深く掘り下げるのが主流になっていますが、羽生九段はさまざまな戦法を指しこなし、将棋を楽しんで探究するタイプです。

 

 でも、豊島竜王とのタイトル戦を観ていて、非常に高いクオリティを感じました。終盤の失着を指摘する声がありましたが、1分将棋のなかで、あの局面で正着を見つけるのは、人間には不可能に近い。責められるミスではありません。

 

 私も先日、羽生九段と対局しましたが、最後に逆転負けを喫しました。ソフトの評価値には表われない “相手に楽をさせない手” を指されました。羽生九段が今の状態を維持すれば、50代でのタイトル獲得は可能だと思います」

 

 2019年の世界コンピュータ将棋選手権の優勝ソフト「やねうら王」開発者である磯崎元洋氏は、レーティングをもとにした見地から、こう示す。

 

「現在(12月9日時点)レーティングトップの藤井聡太二冠(レート1978)と羽生九段(レート1845)の差は133。これを七番勝負で藤井二冠が勝つ確率に置き換えると85.0%、五番勝負だと81.3%になります」

 

 この数字だけを見れば厳しい。だが、2019年に豊島将之王位(当時)に挑戦した木村一基九段(当時46歳)は、挑戦時のレーティング差151をはね返して、七番勝負でタイトルを奪取した。磯崎氏も、こう話す。

 

「年を取ると、終盤の読む速度は遅くなる傾向はあります。でも羽生さんの場合、それを経験でかなり補っている感じがする。中盤の構想力はむしろ以前よりよくなっているのではないでしょうか」

 

 

※日本将棋連盟HPより

 

 上表のように、現役棋士では谷川九段、渡辺名人と比べても、群を抜いた実績の持ち主であることは疑いようがない。羽生九段の対局を100局以上、間近で観てきた観戦記者の小暮克洋氏は、抜きんでた修正能力の高さを指摘する。

 

「竜王戦で負けたあとに『自分なりに充実して指せた』と言っている。1勝4敗というスコアで、AIの評価値では一方的に見えるのにもかかわらず、です。

 

 羽生さんは、自分を慰めるようなことを言う人ではない。それは、この延長線上に、現代将棋にフィットできる手応えをつかんでいるからではないでしょうか」

 

 勝負は数字だけでは測れない。レジェンドは必ず、それを示すだろう。


(週刊FLASH 2020年12月29日号)

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