ライフ・マネー
「お寺の掲示板」2020発表…大賞は「コロナよりも怖いのは人間だった」
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2020.12.18 06:00 最終更新日:2020.12.18 06:00
2020年で3回めとなる「輝け!お寺の掲示板大賞」。お寺の掲示板に書かれた“説法”は、時代と世相を映す鏡として、また、そこに含まれる意味や趣旨の深さから見直され、脚光を浴びつつある。
2020年は過去最多となる、1677作品のSNSへの投稿による応募があり、その受賞作品が12月7日に発表された。「2019年の925作品から大幅に応募が増え、その審査には関係者一同、おおいに悩みました」と語るのは、主催する仏教伝道協会の江田智昭氏。
【関連記事:「お寺の掲示板」がコロナ禍に激励「だいじょうぶだぁ」】
「『お寺の掲示板大賞』の存在が、少しずつ社会に浸透してきたようで、今回はお寺とは関係のない一般の方からの投稿が増えました。
新型コロナの影響で、人の動きが制限される特殊な状況のなかでしたので、掲示板の言葉がより多くの人の心に刺さったのかもしれません」
今回大賞に選ばれたのは、「コロナよりも怖いのは人間だった」。熊本県にある明導寺の掲示板だが、もとは2月にドラッグストアの店員がツイッターでつぶやいたもの。ネットニュースなどで報じられ、大きな反響を呼んだ。
「(SNSに)この投稿があったのは、3月7日でした。多くの人がマスクを求め、ドラッグストアに殺到したころです。少しでも他者を思いやる気持ちがあれば、こんな言葉が話題になることは、なかったのではないでしょうか。
余裕をなくした状態、それはある意味、人間の本性を示したものです。この『人間』という言葉を見て、ほとんどの人は傍若無人に振る舞う『他人』をイメージするでしょう。自分の振舞いには気づかなくても、他人のひどい振舞いはよく見えるものです。自分も『人間』なのに、勝手にそこから、自分を除外するのです。
心の内面の愚かさに気づくのが、仏教の教えです。『コロナよりも怖いのは自分だった』と気づくのが、大切なのかもしれません」(江田氏)
大賞受賞作品以外にも、投稿されたものの多くが新型コロナウイルス関連の言葉だった。それ以外では、ドラマ『半沢直樹』(TBS系)、大ヒットアニメ『鬼滅の刃』、『GoToキャンペーン』関連の言葉を使った掲示板が目立っていた。
「流行や時事ネタに合わせた掲示板が、過去に比べて増えているような気がします。とくに2020年は新型コロナウイルスの影響で、多くの人々が先行きの見えない不安を抱えているため、できるだけ人々に安心を与えようとする作品が多かったです」(江田氏)
年を追うごとに反響が大きくなっている「お寺の掲示板」。過去の作品を紹介した江田氏の著書『お寺の掲示板』(新潮社)は、2019年の発売から刷を重ね、なんと10刷となっている。ちなみに第1回の大賞は、「おまえも死ぬぞ 釈尊」(岐阜・願蓮寺)。第2回大賞は「衆生は不安よな。阿弥陀動きます。」(福岡・永明寺)だった。
2021年は、どんな言葉がお寺の掲示板に掲げられるのか。それが少しでも明るい言葉であるよう、心から願わずにいられない。以下の関連リンクでは、「輝け!お寺の掲示板大賞」の受賞作品一覧と、本誌セレクトの“深イイ” 掲示板をご紹介!
(週刊FLASH 2020年12月29日号)