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九冠馬・アーモンドアイは1口6万円が190万円…夢の一獲千金「一口馬主」の世界

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2020.12.27 06:00 最終更新日:2020.12.27 06:00

九冠馬・アーモンドアイは1口6万円が190万円…夢の一獲千金「一口馬主」の世界

 

 12月27日(日)は、2020年の競馬の総決算「有馬記念」。上位人気は、クロノジェネシス(牝4)、フィエールマン(牡5)、ラッキーライラック(牝5)、オーソリティ(牡3)あたりになりそうだが、この4頭の共通点がわかるだろうか。それは“一口馬主”、いわゆるクラブ馬であること。

 

 

“一口馬主”とは、競走馬を所有する法人が、一頭の総額を一定口数に分割し、出資を募集するシステムだ。今回、有馬記念に出走予定(12月17日現在)の16頭中、8頭がクラブ馬なのだ。

 

 かつては大企業の社長など、個人が馬主の大半だったが、30年ほど前からクラブ馬が増加。現在は20以上のクラブが存在し、馬主リーディング(収得賞金順)の上位を独占するまでになっている。

 

 近年活躍した名馬にもクラブ馬は多い。2020年のジャパンカップを制し、GI9勝、獲得賞金歴代1位などの記録を残して引退したアーモンドアイもクラブ馬だ。ほかにも牝馬三冠を達成したデアリングタクト、2019年の年度代表馬リスグラシュー、三冠馬オルフェーヴルなど、例をあげればきりがない。

 

 個人でJRAの馬主になるためには、「過去2年の所得が、いずれも1700万円以上」「資産額が7500万円以上」という高いハードルがあり、競走馬は普通に買えば1000万円以上、良血馬であれば1億円以上という超高額商品だ。それが一口馬主ならば、1口あたり数万円からの出資で、“疑似馬主”になることができる。

 

 出資者は、ほかにもクラブ会費、厩舎や牧場に支払う預託料(1頭につき月額約60万円)、保険料などを負担する。出資馬がレースに出走し、賞金を獲得すれば、そこから調教師や騎手、厩務員への支払い、クラブの手数料、税金などを差し引いた金額が口数に応じて分配される。種牡馬になれば、売却額に応じた分配金が出ることもある。

 

 では実際、どのくらいのお金の動きになるのか。アーモンドアイでシミュレーションしてみよう(消費税は10%として計算)。アーモンドアイは、2016年に共同馬主クラブのシルク・ホースクラブから、1口6万円×500口の総額3000万円で募集された。

 

 出費は、預託料が月額約1200円。ほかに保険料などがかかり、これまでに一口出資額と合わせて20万円程度。ここにクラブの月会費3300円を、2016年からの5年分足すとプラス19万8000円となり、合計40万円ほどになる。

 

 収入は、レースの賞金から算出する。総獲得賞金は約19億1500万円。これを500口で割れば、1口あたり383万円となるが、実際にはさまざまな名目で、かなりの額が差し引かれる。進上金(調教師や騎手などへ)が賞金の2割。そしてJRA源泉所得税、クラブ法人手数料、消費税など。

 

 一口馬主に分配されるのは、賞金の約6割程度というのが一般的だ。アーモンドアイの場合は、383万円の6割で、約230万円となる。支出分を引くと、収支は約190万円のプラスとなる。極端な例とはいえ、魅力的な投資に思えるのだが、現実はどうか。

 

「結論から言えば、儲からない人が大半です」と説明するのは、業界事情に詳しい競馬ライターの野中香良氏だ。

 

「クラブ法人で最も良血馬が多い『サンデーサラブレッドクラブ』でさえ、1勝以上あげる『勝ち上がり率』は60%前後。50%以下のクラブもある」

 

 ただし、当たればデカいのが、一口馬主の世界。

 

「出資馬が種牡馬入りすると大きい。たとえばオルフェーヴルは、40口の募集で1口150万円でしたが、賞金と種牡馬入りの配当を合わせて、最低でも5000万円になったはずです」

 

 俳優の宮川一朗太氏は、一口馬主歴20年以上のベテラン。2003年皐月賞と日本ダービーを勝った、ネオユニヴァースの一口馬主だった強運の持ち主だ。

 

「ネオは獲得賞金が約6億円ですが、種牡馬となり12億円の価格がついたんです。40口で1口175万円でしたが、3000万円近くのリターンがあり、投資としては大成功です」

 

 毎年1頭以上に出資をしている宮川氏の、馬の選び方は?

 

「自分は、社台グループの40口の馬にのみ、出資しています。100口以上になると、ローリスクですがローリターン。自分にとって、あまり魅力がないんです。

 

 馬選びのポイントは、血統が5割。3割が所属厩舎、2割が馬体。いい馬は価格が高いですが、やはり走る確率は高いと思います」

 

 気になるのは、収支だが……。

 

「数年前、知人に計算してもらったんですが、ほぼトントン。ネオユニヴァースで大幅プラスになっても、5年連続で未勝利ということもありましたからね。

 

 でも20年以上やってトントンなら、大成功。これから始める人には、『すぐに諦めないで』と言いたい。1年1頭買うとして、1年2年走らなくても、5年に1頭オープン馬が出れば大丈夫です」

 

さて、有馬記念。

 

1着賞金は、国内最高額の3億円だ。仮に40口のクラブ馬が勝利し、1口を持っていれば、6割の配分でも450万円。夢がある話じゃありませんか? 次のページでは、前出の野中氏に「クラブ馬選び」の基礎知識を解説してもらう。

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