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老後が心配でもあわてるな「年金2000万円問題」は存在しない!

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.01.10 16:00 最終更新日:2021.01.10 16:00

老後が心配でもあわてるな「年金2000万円問題」は存在しない!

 

 2019年の6月に「年金2000万円問題」というのが話題になりました。この問題は当時、マスコミでも大きく取り上げられたので、記憶に残っている人も多いと思います。

 

 発端は金融庁の金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」の中の一節です。

 

 

 本来、この報告書が目指していたものは、今後高齢化が進む社会において、個々人が老後の資産形成や資産の管理に対してどのような心構えで臨むべきか、さらにそうした時代に増加が予想される認知能力が低下した人々に対して金融サービスがどうあるべきかや社会としてどう対応すべきかということを模索することでした。

 

 ところが報告書の中に書かれていた「まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1300万円~2000万円になる」という、たった一つのこの文章だけで大騒ぎになってしまったのです。当時は「真面目に働いてきたのに2000万円も足りないとはいったいどういうことだ!」とか「これでは年金詐欺じゃないか」といったような過激なコメントがSNS等でもたくさん見受けられました。

 

 しかしながらこれは大きな誤解です。というよりも、そもそも「年金2000万円問題」などというものは存在しません。それは金融庁の報告書をしっかり読めばよくわかります。2000万円が不足するという根拠は報告書の10ページに載っている図です。

 

 これによれば、高齢夫婦無職世帯が生活していく上で毎月の不足額が約5万5000円となっていますから、この金額が30年間続けば1980万円の不足となります。そこから「2000万円の不足」ということが出てきたのです。

 

 でもこの話、実は本末転倒なのです。図をよく見てみると、同じ高齢夫婦無職世帯が保有している平均純貯蓄額には2484万円という数字が載っています。何のことはない、2000万円足りないという話ではなく、2500万円も貯金を持っているからそれを毎月少しずつ取り崩して支出をしている、つまり年金収入よりも5万5000円も毎月余分にお金を使っても問題ないということなのです。

 

 これは考えてみれば当たり前の話です。人は誰でも入ってくる収入と持っている貯金の範囲内でしか支出はできません。ここで出てきているデータは平均ですが、中にはほとんど貯蓄を持っていない人もいるでしょう。そういう人は年金の範囲内で生活するしかありませんし、逆に貯金を1億円持っている人ならもっと豪勢な生活をすることも可能です。

 

 ここに出てきているのはあくまでも平均値です。貯蓄保有額に関するデータの平均値というのは、往々にして一部の多額な金融資産を持っている人の数字に引きずられて高くなりがちです。

 

 実際、このデータに出てくる毎月の支出が26万円というのは、同じ高齢夫婦世帯である私の実感からみるとずいぶん多いという印象です。私の場合は毎月の支出はだいたい22~23万円ですから、平均的な公的年金でほぼまかなえる金額です。

 

 でももし私が数億円もの金融資産を持っていたら、もっと贅沢な暮らしをしているでしょうし、私の貯金がほぼゼロであるなら、もう少し質素な暮らしをしているはずです。

 

 すなわち、「2000万円が不足する」という一点のみが注目され、一人歩きしてしまったわけですが、元々「2000万円問題」などというものは存在しないのです。

 

 要はどんな生活ぶりをしたいか、それを支えるための収入状況や資産はどれくらいあるのかによって全く数字は違ってきます。これは人それぞれですから、一概に2000万円と言ってもあまり意味はないのです。

 

 面白いことに1984年、つまり今から36年前に当時の郵政省の試算でこのような数字が出ています。当時の定年年齢は60歳で、平均寿命が79歳。つまり定年後19年間が年金生活となりますが、その間の支出合計が5885万円。それに対して厚生年金支給額が概算で当時3265万円なので、その不足額は2619万円となっています。

 

 つまり36年前の当時は2000万円どころかもっと不足すると言われていたのです。当時50歳ぐらいだった人は今86歳になっていますが、今の80代のお年寄りはみんな悲惨な暮らしをしているでしょうか。そんなことはありません。もちろん中には厳しい生活をおくる人もいるでしょうが、それは今の時代に限ったことではなく、昔からあったことですし、これからもあるでしょう。

 

 要は「2000万円問題」という実体の無いお化けにおびえる必要はないのです。

 

 

 以上、大江英樹氏の新刊『定年前、しなくていい5つのこと 「定年の常識」にダマされるな!』(光文社新書)をもとに再構成しました。年金は破綻しない、再雇用で働かない、地域コミュニティとは付き合わない…など、大切な「定年楽園」の考え方を提示します。

 

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