トラブル回避の最善策は「事前の相談」だという。
「いきなり『お墓を移します』と言われれば、お寺も感情を害するのです。そうではなく『親族で話し合った結果、移そうかと思うのですが』と事前に相談すれば、話はスムーズに進むはずです。親族間でも同様で、あらかじめ話し合っておくことが大事です」
前述したように、墓じまいでの遺骨の行き先にもさまざまな選択肢がある。
「地方のお墓を都市部に移すケースで多いのは、『永代供養墓』『納骨堂』です。この2つは混同されることが多いのですが、はっきりとした違いがあります。
永代供養墓は、お寺が長きにわたり供養と管理を続けてくれるお墓です。骨壺が納骨スペースに置かれる『お骨安置タイプ』と、ほかのお骨と一緒に埋葬する『合祀タイプ』の2通りがあります。
檀家になる必要はなく、最初に料金を支払えば、年間管理費などは不要です。料金は10万~100万円とまちまちですが、普通のお墓よりは低く抑えられます。最初から合祀タイプを選べば、出費が少ないです。
納骨堂はあくまでお墓の代わりですが、便利な立地であることが多く、骨壺が屋内に置かれることからも人気があります」
一般的な墓の場合、都市部では数百万円にもなる費用が、やはりネックだろう。東京都立霊園の一般墓では、青山霊園が454万円~、多磨霊園165万円~となっている(2021年度の募集)。
数年前ブームになった「散骨葬」は、最近では一時より取り扱う業者が減りつつある。改葬許可についても、自治体によって対応が異なる。なかには許可が下りない自治体もあり、散骨葬を検討する際には役所に相談するべきだ。刑罰の対象にはならないとはいえ、あくまで “グレーゾーン” 的な方法といえる。
「費用面や安心してお骨を預けられることから、『永代供養墓』は改葬をされる多くの方にとって最善の選択ではないかと考えています。
料金は、意外にも地方よりも都市部のほうが安い傾向があります。数が多いため競合するからです。最初から合祀するタイプであれば、都内でも10万円以下で探せますし、その後の年間管理費もかかりません」
近年、管理する人がいない無縁墓の存在は社会問題にさえなっている。熊本県人吉市がおこなった2013年の調査では、市内の墓の4割以上が無縁化しており、なかには8割に及ぶ墓地さえあったという。これは地方に限った話ではなく、都市部でも無縁墓が今後、急増するとみられている。
墓に関する意識が大きく変化していくなか、家族や親族間で話し合う時間を持ってみてはどうか。
(週刊FLASH 2021年2月2日号)