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【食堂のおばちゃんの人生相談】46歳・会社員お悩み
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.02.08 11:00 最終更新日:2021.02.08 11:00
「食堂のおばちゃん」として働きながら執筆活動をし、小説『月下上海』で松本清張賞を受賞した作家・山口恵以子。テレビでも活躍する山口先生が、世の迷える男性たちのお悩みに答える!
【お悩み/おとぼけ部長代理さん(46)会社員】
可愛がってくれた直属の上司が、異動で左遷された。新上司は今の上司の長年のライバルで、一の子分と見られている私は、疎まれるに決まっている。
おまけに新上司は、役員候補らしい。家のローンも1000万円以上残っているのに、サラリーマン生活最大のピンチ! アドバイスをください!!
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【山口先生のお答え】
それはまた、難儀なことですねえ。しかも、サラリーマンの方なら、似たような経験をした人も少なくないように思われます。
宣伝めきますが拙著『月下上海』に登場する槙という憲兵大尉も、可愛がってくれた上司が急死して、ライバルの新上司に疎まれて東京の司令部から上海に左遷され……という経歴の持ち主です。昔も今も、サラリーマンは上司次第で天国から地獄へ変わりますね。
私に言えることはただ1つ「時期を待て」です。人にも花にも時期があります。土の中で栄養を蓄える時、芽吹いて茎を伸ばす時、蕾のまま待っている時、そして大きく花びらを開く時、すべて時期が至って初めて成就するように思います。早まって焦って時期を間違えると、成果は台無しです。
気休めではなく、あなたを可愛がってくれた上司が失脚したのなら、その新上司だって失脚しないとは限りません。この世には巡り合わせとか因果応報とか、人智を越えた現象がありますからね。
名アナウンサーとして知られる鈴木史朗さんは、アナウンサーを志してTBSに入社したにもかかわらず、直属の上司に「大嫌いな教師に話し方が似ている」という理由……というかほとんど難癖を付けられて様々な部署をたらい回しにされ、やっとアナウンス部に復帰できた時は46歳だったそうです。
まことにお気の毒ですが、そうして様々な部署を回って積み上げた経験が、鈴木さんを名アナウンサーへと大成させ、定年後も仕事のオファーが絶えない人気者に育てたとも言えるのです。
私も55歳まで様々な職場で働いてきましたので、上司に疎まれたらどれほど悲惨な目に遭うかは身に沁みて知っています。部下をいびらないと精神の安定が保てない、はっきり言って性格異常者もいましたから、パワハラは辞書が書けるくらい経験済みです。
それでも、やはり「時期を待て」と申し上げます。まことに世の中は 因果応報で、パワハラしまくった上司たちは、1人として幸せな結末を迎えませんでした。行いはすべて自分に返ってくるのです。だから、あなたの新上司が平気でパワハラをするような性格異常者なら必ず報いはやって来ます。
そして、常識の範囲で「あんまり可愛くない部下」として冷たくされる程度なら、これは素知らぬ顔をして耐えましょう。
人間関係はご縁で始まり、相性で続きます。縁あって親子に生まれても、相性が悪いと縁が切れてしまいます。まして赤の他人なら、相性の悪い人が大勢いるのは当然です。その中の1人が上司になっても、仕方ないですよね。上司の家に養子に行くわけじゃないのだから、会社にいる間だけ、知恵を使ってやり過ごしましょう。
そして、会社以外の場所での楽しみを見つけて下さい。土曜か日曜、会社を離れて楽しい経験をすれば、また月曜から金曜まで会社で耐える力をもらえますよ。
やまぐちえいこ
1958年、東京都生まれ。早稲田大学文学部卒。就職した宝飾会社が倒産し、派遣の仕事をしながら松竹シナリオ研究所基礎科修了。丸の内新聞事業協同組合(東京都千代田区)の社員食堂に12年間勤務し、2014年に退職。2013年6月に『月下上海』が松本清張賞を受賞。『食堂メッシタ』『食堂のおばちゃん』シリーズ、そして最新刊『夜の塩』(徳間書店)が発売中