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藤井聡太二冠は運がない…3師匠が明かす「わが弟子」

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.02.14 06:00 最終更新日:2021.02.14 06:00

藤井聡太二冠は運がない…3師匠が明かす「わが弟子」

棋聖のタイトルを獲得し、関西将棋会館を出る藤井聡太二冠

 

■20年後に50代の棋士は、ほとんどいない

 

――AIでの勉強は記憶力に頼るので、終盤戦は経験を積んできた棋士の方が強いという意見も聞かれます。

 

森下「藤井君の終盤は桁違いに強いと思いますが、先日、佐藤康光会長が『いま一番終盤が強い棋士は、豊島(将之)竜王(叡王)じゃないか』と仰っていたんです。詰将棋や次の一手を解く能力は藤井君が一番ですが、実戦における終盤力は豊島竜王が一番じゃないかと。深く読む力、なおかつ心理戦といった駆け引きなど総合的に見た力ですね」

 

杉本 「うん……そうですね。終盤の強さはなかなか比較しづらいものがありますけど、今の若手は全体的にとにかく上手い。終盤も勝ちやすい形に持っていったり、読みというより形で判断している気がします」

 

深浦「私もAIで勉強するようになったのですが、そもそもAIで終盤が強くなるかは疑問ですね。記憶はしていきますが、読んだことになっているのかどうか。やはりアナログ的ではありますが、詰将棋をやった方が終盤は強くなるんじゃないでしょうか」

 

――将棋界の流れが、この数年、特に早くなっているといわれています。

 

森下「私が棋士になったころ(昭和58年)に比べて、年配の棋士が少なくなりました。今後、現役棋士の低年齢化はさらに進んで、今後5年くらいでそれが顕著になると思います。将棋の変化が激しくなってきているのが、一番の要因ですね。棋士寿命が短くなるというのは、はっきりしています。20年後と仮定しましたら、おそらく50代の棋士はほとんどいないのではないでしょうか」

 

杉本「活躍する棋士は、いつの時代も20代の若手が多かったのですが、今はその層が圧倒的に厚くなってきています。昔は得意戦法を持っていれば、ベテランでもそれなりに勝てたのですが、今はそれだけでは通用しない。最新の定跡をかなりの部分まで知っていないと、若手相手に互角に戦えない印象です」

 

深浦「そうですね。若手たちも優秀な同世代が増えて渋滞がかなり激しくなってきています。その中で淘汰されていくわけですけど、一つの棋戦で輝きを見せた若手が、なかなか他の棋戦では勝てなかったりとか。自分の弟子の佐々木が下のクラスを抜け出せないのを見ても、厳しい時代になっていると感じます」

 

――早指しは若手が有利といわれますが、深浦先生は前期のNHK杯(早指しのテレビ棋戦)で優勝されています。若手と対戦されて、どんな実感をお持ちですか?

 

深浦「今の流行の勉強法は、早指し戦においてそれほど有効とは思えません。逆に必要なのは反射的なものではないでしょうか。AIでの勉強は深く掘り下げていくので、暗記に頼る部分が大きいわけです。それを短時間のテレビ棋戦とかですべて発揮することはできない。経験値が武器になるので、早指しはベテラン陣にとって有利かと思います。今期のNHK杯でも、木村一基九段(47)が藤井さんに勝っていますしね」

 

■99期の羽生さんに藤井さんが迫れるか

 

――今後将棋界で、大山康晴十五世名人(故人)や羽生善治九段のように、長くタイトルを保持する棋士が出現するのは難しいことでしょうか?

 

森下「藤井君がどうなるかですよね。こればかりは時間が過ぎてみないとわからないのですが、私は藤井君は羽生さんのように長期にわたってトップの座を占める気がしています」

 

深浦「羽生さんの(タイトル獲得)99期というのは途方もない数字で、藤井さんがどこまで迫れるかは正直わかりません。現役で活躍できる期間というのは短くなってきている実感がありますので、藤井さんがどうなるかは興味がありますね」

 

杉本「そうですね、弟子のことですけど、確かに藤井は長期にわたってタイトルを複数持つ棋士になると思います。ただ、大山名人のように生涯現役を貫いたり、60代でタイトルに挑戦されたりするような、そこまで息長く続けることがこれからの時代に可能かはわかりません。20年後には優秀な若手がどんどん出てくるでしょうから。……あれ? そのとき藤井はまだ38歳か! これはなんともいえないな。やっぱり18歳って若いですね(笑)」

 

写真と文・野澤亘伸

 

 

野澤亘伸著『師弟 棋士たち 魂の伝承』が文庫化。今回の鼎談の完全版も収録されて、光文社文庫より2月9日(火)に発売(定価:748円)。また、続編となる『絆―棋士たち 師弟の物語』が、マイナビ出版より3月11日(木)に発売(定価:1991円)。

 

(週刊FLASH 2021年2月23日号)

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