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【食堂のおばちゃんの人生相談】57歳・会社員のお悩み

ライフ・マネー 投稿日:2021.03.15 11:00FLASH編集部

「食堂のおばちゃん」として働きながら執筆活動をし、小説『月下上海』で松本清張賞を受賞した作家・山口恵以子。テレビでも活躍する山口先生が、世の迷える男性たちのお悩みに答える!

 

【お悩み/匿名希望(57)会社員】
 高校生の長男が、「大学には行かない。板前になりたい」と言い出した。うちの家系に料理人はいないし、大学は出てほしい。しかし単身赴任が長く、思春期に父親業ができていないので、どうやって説得したらいいのかわからない。

 

 

【山口先生のお答え】
 まず最初に一つ申し上げたいのは、現在活躍している有名料理人のうち、父親が料理人だった人は少数派だということです。

 

 陳建一さんのように親の仕事を継いだ場合は別ですが、道場六三郎さんも三國清三さんも、一代で築いた味と名声です。だから息子さんに運と才能と努力を続ける気概があれば、料理人に限らず、どんな仕事でも必ず成功します。父親は関係ありません。

 

 問題は “運・才能・努力” が息子さんにあるかどうかですね。これは私より、親であるご相談者さんの方がよくお分かりでしょう。

 

 ただ、料理人として一流でなくても、食べ物屋の主人として成功している例はたくさんあります。『吉田類の酒場放浪記』に登場するお店なんて典型ですよね。常連さんに愛されている、雰囲気の良いお店ばかりです。ああいう生き方も幸せだと思いますよ。

 

 今の世の中は大学を出たからといって、必ずしも良い仕事に就けるとは限りません。新卒で正社員に採用されなければ、ずっと非正規雇用のまま使い捨てにされる危険さえあります。正社員だってリストラの憂き目に遭うのです。

 

 だから息子さんが手に職を付けて、料理の世界で生きるのは悪い選択とは思いません。問題は、最後までやり通せるかどうかです。料理人の世界はいまだに徒弟制度的な因習が残っていますから。

 

 そしてもう一つ、大学を出ないと就けない職業、取れない資格というのもあります。息子さんが料理修業を始める前に、4年間回り道をする価値はあると思います。

 

 最後に故・大島渚監督の言葉を参考にして下さい。「人に抜きん出た知能や才能がないと自覚したら、大学は行っておいた方が良い」。

 

やまぐちえいこ
1958年、東京都生まれ。早稲田大学文学部卒。就職した宝飾会社が倒産し、派遣の仕事をしながら松竹シナリオ研究所基礎科修了。丸の内新聞事業協同組合(東京都千代田区)の社員食堂に12年間勤務し、2014年に退職。2013年6月に『月下上海』が松本清張賞を受賞。『食堂メッシタ』『食堂のおばちゃん』シリーズ、そして最新刊『夜の塩』(徳間書店)が発売中

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