■劣化しない幸福感〜オキシトシン的幸福
お金をいくら稼いでも幸せになれないのかあ……。そんなふうにがっかりした人も多いかもしれませんが、落胆するのはまだ早いです!
たしかにドーパミン的幸福は逓減しやすい(価値が徐々に減じやすい)幸福なのですが、同じ幸福でも「逓減しない、逓減しづらい幸福」もあります。
それは、オキシトシン的幸福です。赤ちゃんを抱っこするところを想像してみてください。
赤ちゃんはとてもかわいく温かい存在で、あなたは幸福感で満たされることでしょう。次の日、また抱っこしてもかわいい。
その次の日抱っこしてもまだかわいい。こうして1週間、毎日抱っこするとして、「もう飽きたから、かわいくなくなった」なんてことが考えられるでしょうか?
きっと、「ない」と思います。赤ちゃんは10回抱っこしても、100回抱っこしても変わらずかわいい。そして幸せにしてくれる存在なのです。
赤ちゃんを抱っこしているときに出る脳内物質がオキシトシンです。これは、スキンシップ、ボディタッチのほか、会話やアイコンタクト、親切や感謝、ボランティアなどの他者貢献でも分泌されます。
こうした、「つながり」や「愛」と関連した幸福を、私は「オキシトシン的幸福」と呼んでいます。そして、オキシトシン的幸福は、逓減、劣化しづらい幸福といえます。
■「お金」と「感謝」を掛け合わせる
ドーパミン的幸福は非常に劣化しやすい。しかし、オキシトシン的幸福と掛け合わせることで、その幸福感を逓減、劣化させずに持続することができる。
オキシトシンは誰かに親切にしたり感謝した際にも分泌されます。このことを踏まえると、お金とのつき合い方も変わってきます。
つまり「感謝」の気持ちを持ってお金とつき合うと、オキシトシン的幸福が得られるのです。
普通にお金とつき合う人は、ドーパミン的幸福しか得られないので、「お金のありがたみ」「お金の大切さ」を忘れてしまいます。
結果として、「もっともっと」とお金を求めることしか考えない金の亡者となる。
お金が減るのを恐れるあまり、異常にケチになったかと思えば、誤った用途に使ったり、投資で失敗したり、儲け話に騙されたりして、財産を失ってしまうのです。
しかし、感謝の気持ちを持ってお金とつき合うと、たとえば営業マンだったら商品が売れたとき「お金を得られて嬉しい」という気持ちに、「自分のためにお金を払ってくれたお客様に感謝」「社員の一人ひとりに感謝」「自分を応援してくれるビジネスパートナーに感謝」など、さまざまな「感謝」の気持ちが上乗せされます。
■「感謝」を増やすと幸せが持続する
わかりやすく言うと、1万円の商品が売れた場合、感謝のない人の「嬉しい!」という感情は「100%ドーパミン的幸福」にすぎません。
しかし、お客様、社員、取引先、ビジネスパートナーあっての売り上げだと、関わる人たちみんなに素直に感謝することで、同じ「嬉しい!」が「70%オキシトシン的幸福、30%ドーパミン的幸福」のような状態になります。
商売をやっている方のなかに、「感謝の気持ちをとても大事にしている」と話す方がよくいますが、そういう人の幸福は「99%オキシトシン的幸福、1%ドーパミン的幸福」かもしれません。
感謝の気持ちを持つことで、「お金」を得られることの幸せをより強く、より長く感じることができるのです。
かばさわしおん
樺沢心理学研究所代表。1965年、北海道札幌市生まれ。札幌医科大学医学部卒。YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで、累計50万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動
イラスト・浜本ひろし
(週刊FLASH 2021年3月30日・4月6日号)