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2022年に「雇用保険料2.7倍」でサラリーマン給料減!受給できない非正規労働者も続出

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.04.02 06:00 最終更新日:2021.04.02 06:00

2022年に「雇用保険料2.7倍」でサラリーマン給料減!受給できない非正規労働者も続出

ハローワークは失業給付の申請などで “密” に(2020年4月)

 

「コロナはすぐに収束するわけではなく、一般財源も潤沢ではないので、今後の(雇用保険の財源の)調整は、かなり難しいです」

 

 厚生労働省・職業安定局雇用保険課の担当者は、そう語った。

 

 雇用保険制度が、新型コロナウイルス禍で危機に晒されている。政府は失業給付金のほか、企業が従業員に支払う休業手当の一部を補助する「雇用調整助成金(雇調金)」を、2020年4月より拡充した。

 

 

 政府が大胆な政策を取れたのは、コロナ禍前に積み上げてきた豊富な財源があったからだ。連合の仁平章・総合政策推進局総合局長が語る。

 

「雇用保険には、会社と労働者が負担を折半する失業者向け事業(失業給付の財源)と、会社のみが負担する休業者など向け事業(雇調金の財源)があります。

 

 財源は積立金に加えて、税金を一定比率投入してきたのですが、2020年の法律改正で、税金の投入比率が引き下げられました。“積立金がいっぱいあるんだから、国のカネを入れずともいいだろう” と、政府に押し切られたんです」

 

 だがコロナ禍で、政府の思惑は大幅に狂った。リーマン・ショック直後の2009年度に支払われた雇調金が6534億円だったのに対し、2020年2月以降の支給決定額は4倍以上となる、およそ3兆円。政府は失業手当用の別の積立金から、最大1.7兆円を借り入れる特例措置を取り、一般会計から1.1兆円の支出を決めた。

 

 それでも、2019年度末に約4.5兆円あった失業者向け事業の積立金は、2021年度末にはわずか1722億円に、約1.5兆円あった休業者向け事業の積立金は、864億円に激減するという。全国中小企業団体中央会の佐久間一浩労働政策部長が、次のように訴える。

 

「コロナが中小企業の経営に大きな影響を与えているなか、積立金が不足しているからといって、保険料を上げられるのは困ります。なんとか、一般財源や補正の予備費を活用していただきたいですね」

 

 しかし、冒頭の厚労省の担当者は、保険料アップの可能性を否定しないのだ。

 

「使用者側からも、労働者側からも、『雇用保険に一般財源を投入してほしい』というご意見は寄せられております。ですが、失業者が今後さらに増えるのか(飲食店などの)休業が続くのか、それを見てからでないとなんとも言えませんが、非常に厳しい状況になるでしょう。方法論としては、一般財源からあてるか、保険料率を上げるかしかありません」

 

 では、仮に保険料率が引き上げられた場合、どの程度負担が増えるのか。

 

 現在の雇用保険料率は、失業者向け事業が0.6%(会社と労働者が0.3%ずつ負担)、休業者向け事業が0.3%(会社のみが負担)と、2011年度に比べて半分になっている。保険料率は、コロナ禍前は雇用情勢が安定していたため、特例措置として段階的に引き下げられてきた。

 

「積立金が5〜6兆円もあったころは、安定的な運営ができていたので、保険料率を下げる特例措置を取りましたが、原則的に失業者向け事業の保険料率は1.2%です」(同前)

 

 保険料率は、2年前の決算をもとに決められる。2021年度の保険料率は、コロナ禍前の2019年度が基準となり、特例措置は継続されている。経済ジャーナリストの岩崎博充氏が解説する。

 

「2022年度は、コロナ禍が直撃した2020年度が基準になりますので、『原則の保険料率』である1.2%に戻っても不思議ではありません。さらに、保険料率を財政状況に応じて最大0.4%増減できる『弾力条項』というルールがあり、それが適用されれば、1.6%に跳ね上がることになります」

 

 そうなれば、現在の保険料率から約2.7倍となる。月収30万円のサラリーマンなら、月々の負担が900円から2400円になるのだ。

 

 一方、佐藤主光・一橋大大学院教授(財政学)は、「保険料率の引き上げは、国民感情を逆撫でする」と警鐘を鳴らす。

 

「積立金が枯渇しているといいますが、現状でも非正規・フリーランスには、まだまだ支援が届いていません。

 

 販売員や配送員など、テレワークをおこなうことのできない『エッセンシャル・ワーカー』は、平時における社会の支え手です。その方々を非常時に支えるためには、いったん赤字国債を発行したうえで、税で賄うしかないでしょう」

 

 もちろん、非正規雇用者も失業給付や雇調金の支給対象だ。だが、俳優業のかたわら、アルバイトで生計を立てている川合敏之さん(56)は嘆く。

 

「保険料は給与から天引きされますが、一度も給付金をもらったことがないんです。倒産・解雇で失業給付金をもらうには、6カ月間、週に20時間以上勤務していることが必要です。

 

 2020年5月、派遣会社に持続化給付金の申請手続きサポートの仕事を紹介されました。本来なら2021年1月までの契約のところ、事業縮小の煽りを受け、10月に契約を一方的に打ち切られ、失業給付を受けられませんでした」

 

 勤務先の時短営業や休業、派遣切りのために、雇用保険に加入していても、受給の条件を満たせない非正規労働者が続出しているのだ。

 

 協力金や給付金で延命している企業の倒産ラッシュは、これから来るともいわれる。そのとき、「雇用のセーフティネット」は機能しているのだろうか。


写真・朝日新聞
取材&文・鈴木隆祐

(週刊FLASH 2021年4月13日号)

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