■2種類の愛情
ではどうすれば、愛情の火を燃やし続けることができるのでしょう。それを考えるにあたり、愛情の質についてふれておきましょう。
愛情に関する神経伝達物質には、ドーパミンとオキシトシンがあります。別の言い方をすると、愛情には幸福と同様に、「ドーパミン的愛情」と「オキシトシン的愛情」の2つがあるということになります。
「ドーパミン的愛情」は、「熱愛」という言葉に代表される情熱的な愛情です。そこには、高揚感、興奮、ドキドキ感といった感情が含まれます。「もっとあの人に会いたい」「もっと愛してほしい」と、相手に「もっと、もっと」と要求する愛、「求める愛」といってもいいでしょう。
結婚して2年くらいは人生の満足度がプラスだったのは、互いが「ドーパミン的愛情」で結びついていたからです。
一方、「オキシトシン的愛情」は、「友愛」「慈愛」に代表される愛情で、そこには、リラックス、安らぎ、安心感、互いへの信頼感があります。一緒にいるだけで十分という満足感に包まれます。
「ドーパミン的愛情」の典型的な例は、つき合いはじめたばかりのラブラブなカップルでしょう。「オキシトシン的愛情」は、40~50年つれ添っている仲のよい老夫婦のイメージです。
つまり、つき合いはじめは「ドーパミン的愛情」がメインの「情熱的な愛」ですが、それが「オキシトシン的愛情」に置き換わっていくことで、「永続的な愛」へと深まっていくのです。
「ドーパミン的愛情」のリミットは2~3年です。もしあなたが、3年以上おつき合いしている相手がいるのでしたら、急いでプロポーズしたほうがいいでしょう。
長くつき合うほど結婚確率が上がると思っている人が多いのですが、それは脳科学的には間違い。交際や同棲が2~3年を超えると、「ドーパミン的愛情」は急速に冷めていくのです。
では、どうすれば「ドーパミン的愛情」を「オキシトシン的愛情」に置き換えられるのでしょうか?
■親切と感謝でオキシトシンが出る!
オキシトシンは、互いの愛情に基づく安定した人間関係やスキンシップにより分泌されますが、それ以外にも「親切」や「感謝」によっても分泌されることがわかっています。
人に親切にすると、「親切にした人」と「親切にされた人」の双方にオキシトシンが分泌されます。
そして、人に感謝するときも同様です。感謝するときは、さらにエンドルフィンという神経伝達物質も分泌されます。
オキシトシンやエンドルフィンを分泌させるには、1日3回、「ありがとう」と感謝の言葉を口にしてください。
そのうち1回は、妻(夫)に対して、「ありがとう」と言う。そして、寝る前に今日、自分が言った「ありがとう」を、1行ずつ3つ、日記風に記録します。
「たったそれだけ?」と思うでしょう。でも、この感謝ワーク&感謝日記には絶大な効果があります。
実際に私は、31人の被験者に対して感謝ワーク&感謝日記を10日間おこなってもらう実験をしました。 その結果、被験者の多くが「人間関係が改善した。特に夫婦関係が改善した」と語ったのです。
たった10日間、配偶者に「ありがとう」と言い、それを記録するだけで夫婦関係が改善する。
これは、オキシトシンのなせる業。自分と相手にオキシトシンが分泌され、オキシトシン的愛情、オキシトシン的幸福が得られるのです。だまされたと思ってやってみてください。
独身の方は、「恋人」「友人」「家族」「職場の人」に対して、「ありがとう」を頻繁に言ってみてください。職場の人間関係で悩んでいる人は多いのですが、自分の苦手な人に対して意識的に感謝の意を伝えるようにすると、相手の態度がガラッと変わります。
「ありがとう」は、人間関係を改善し、幸福度を高める魔法の言葉。「ありがとう」がふつうに、自然に口をついて出るようになると、あなたの好感度は格段にアップします。素敵なパートナーに出会う確率も、一気にアップするでしょう。
愛情には、「ドーパミン的愛情」と「オキシトシン的愛情」の2つがある。これを知っているだけで、恋愛がうまくいき、結婚生活も円満になるのです。
かばさわしおん
樺沢心理学研究所代表。北海道札幌市生まれ。札幌医科大学医学部卒。YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで、累計50万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本ーアウトプットする精神科医」として活躍
イラスト・浜本ひろし
(週刊FLASH 2021年4月13日号