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【食堂のおばちゃんの人生相談】52歳・会社員のお悩み

ライフ・マネー 投稿日:2021.04.26 11:00FLASH編集部

「食堂のおばちゃん」として働きながら執筆活動をし、小説『月下上海』で松本清張賞を受賞した作家・山口恵以子。テレビでも活躍する山口先生が、世の迷える男性たちのお悩みに答える!

 

【お悩み/匿名希望(52)会社員】
 結婚20年です。10年ほど前から、妻がトイレの扉を開けっ放しで用を足すようになりました。何度も閉めるように頼みましたが、夏は「暑いから!」、冬は「寒いから!」と言って閉めず、挙げ句の果てに「うちが狭いのが悪いの!」と言う始末です。些細なことですが、嫌でたまらないんです。離婚も考えてしまいます。

 

 

【山口先生のお答え】
 ご相談者さん、ごめんなさい! 実は私もトイレの扉を開けっ放しで用を足しているんです。本当にすみません。ごめんなさい!

 

 私の場合、母と兄の3人暮らしで、日中兄は仕事で家にいないため、母と2人きりです。そして母は、1日中リビングでテレビを観ながら居眠りをしている状態でして、私がトイレのドアを開けても閉めても、誰も気にする人がいないというのが、私が扉を閉めるのが面倒臭くなった理由ではあるのですが……やっぱり行儀悪いですよね。反省します。申し訳ありません。

 

 それで、あなたの気持ちは良く分かります。私は自分が開けっぱなしにする分には良いのですが、他人がやったら気分良くないだろうと思います。幸い母も兄もちゃんと扉を閉めるので、あなたのような経験はないのですが。

 

 それと、うちの母は扉にしっかり鍵をかけるのですが、やめて欲しいんですよね。もしトイレで倒れたとき鍵が掛かっていたら、すぐ助けられないし、扉を壊さないといけないし。

 

 それで、あなたの奥さんのお話を伺っていたら、私はふと「ションベン組」のことを思い出しました。

 

 それは、お妾さんが職業として成り立っていた時代(昔は「妾奉公」という職種があった)、女が支度金をもらって新しい旦那の家に行くと、寝小便を繰り返すわけ。旦那は呆れ返って暇を出す。女は支度金をごっそり懐に入れて、次の奉公先を探す……一種の詐欺ですね。

 

 この手は男も使えます。女と手っ取り早く別れたいと思ったら、いきなり寝小便をする。女の方に未練があれば、話し合ってもこじれるばかり。でも寝小便されたら愛想が尽きるから、すんなり別れてくれる、というわけですね。寝小便でもダメなら寝グソする。昔の人って、面白いですねえ。

 

 それで、ご相談者さんのお悩みですが、奥さんは10年前からトイレのドアを開けっ放しにしているので、別にあなたとの離婚を望んでいるわけではないと思います。本気で別れたいなら10年も待っていないはずなので。

 

 つまり、私と同じく単にドアを閉めるのが面倒臭いだけなのでしょう。そしてご主人がどれほど嫌な思いをしているか、まるで気付いていない。足を踏んだ者には、踏まれた者の痛みが分からないのです。他人の身になって考えるのは大変です。

 

 だからご相談者さん、これからはあなたも用を足すとき、トイレの扉を開けっ放しにしましょう。そして奥さんがトイレに入ったら、扉を閉めてやりましょう。そうすれば奥さんも反省するはずです。あるいは、あなたも開放トイレが好きになるかも……。

 


やまぐちえいこ
1958年、東京都生まれ。早稲田大学文学部卒。就職した宝飾会社が倒産し、派遣の仕事をしながら松竹シナリオ研究所基礎科修了。丸の内新聞事業協同組合(東京都千代田区)の社員食堂に12年間勤務し、2014年に退職。2013年6月に『月下上海』が松本清張賞を受賞。『食堂メッシタ』『食堂のおばちゃん』シリーズ、そして最新刊『夜の塩』(徳間書店)が発売中

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