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【食堂のおばちゃんの人生相談】38歳・公務員のお悩み

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.05.07 11:00 最終更新日:2021.05.07 11:00

食堂のおばちゃん」として働きながら執筆活動をし、小説『月下上海』で松本清張賞を受賞した作家・山口恵以子。テレビでも活躍する山口先生が、世の迷える男性たちのお悩みに答える!


【お悩み/心の栞さん(38)公務員】

 通勤時に本を読んでいますが、本を読むスピードが人より遅いことに気がつきました。読書スピードを上げるテクニックがあれば教えてくだい。

 

 

【山口先生のお答え】

 心の栞さんはどうして悩んでいらっしゃるのですか? 別に本を読むスピードが人より遅くても構わないと思うのですが……。

 

 ペンネームの “心の栞” も、とてもきれいでロマンチックなお名前ですね。そこからイメージすると、通勤時に読んでいる本はビジネス書ではなく、小説・詩集・句集・歌集などではと思われます。

 

 仕事に必要な資料なら、速く読む必要があるかも知れません。私も時代小説を書くときは大量の資料が必要になります。基礎知識が乏しいので、付け焼き刃で勉強しながら書くことも再々で、そんなときは速読術でも身につけて、斜め読みするだけで内容がインプットされたら便利だろうと思います。時間の節約になりますから。

 

 ただ、好きで読む小説は速く読もうとは全然思いません。もの凄く面白い小説に出会うと、読み終わるのがもったいなくなります。ラストが近づくと、またこんなに面白い小説と出会うまで、どのくらい待てば良いのかと考えて、口惜しくなったりします。

 

 心の栞さん、勘違いしないで下さいね。ビジネス書や学術書は内容を理解して記憶すれば役目は果たせますが、所謂文芸書(小説・詩など)は心で味わうものです。速読術では理解して記憶することは出来ても、じっくりと味わい、深く感動することは出来ません。

 

 そして、読んだときはよく分からなかった事柄が、年月が経ったとき不意に心に甦り、すとんと腑に落ちることがあります。その時の理解・納得・感動した経験は、人生の宝になります。

 

 と言うわけですから心の栞さん、本はあわてて読まずにじっくり読んで、心で味わって下さいね。それが読書の醍醐味ですよ。

 

やまぐちえいこ
1958年、東京都生まれ。早稲田大学文学部卒。就職した宝飾会社が倒産し、派遣の仕事をしながら松竹シナリオ研究所基礎科修了。丸の内新聞事業協同組合(東京都千代田区)の社員食堂に12年間勤務し、2014年に退職。2013年6月に『月下上海』が松本清張賞を受賞。『食堂メッシタ』『食堂のおばちゃん』シリーズ、そして最新刊『夜の塩』(徳間書店)が発売中

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