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樺沢紫苑の「読む! エナジードリンク」コロナ禍で唐揚げ店が増えている理由は
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.06.14 06:00 最終更新日:2021.06.14 06:00
■空前の唐揚げブーム
最近、いろいろな場所で「鶏の唐揚げ」の専門店を見かけます。「タピオカ店」だったのが、「唐揚げ店」に替わっているケースも多いですね。
日本唐揚協会の調べによると、2018年には全国1408店だった唐揚げ店の店舗数が、2021年には3123店と3年で2倍以上も増加し、「空前の唐揚げブーム」ともいわれています。また、コロナ禍の前と比べて、売り上げが2~3割もアップしているお店も多いようです。
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このブームは、コロナ禍のテイクアウト需要の増加と関係していることは間違いありません。しかし、唐揚げ以外にもテイクアウトに向いているスナック系の食品はたくさんあるわけで、それだけではブームを十分に説明できません。
私は、長期化するコロナ禍で精神的、肉体的な疲労が蓄積、「唐揚げを食べたい!」という衝動にとらわれる人が増えている、と分析しています。
■疲れると、脂っぽいものを食べたくなる?
仕事が忙しく疲れがたまっているようなとき、無性にラーメンが食べたくなることってありませんか? それも「あっさり系」ではなく、「こってり系」のラーメンを。
京都大学の研究によると、空腹時のラットに濃度5%のコーン油を与えたところ、油の摂取量が5日めには2倍に増えたといいます。注目すべきはPOMC(エンドルフィンの前段階の物質)の量で、同じく約1.7倍増えました。さらに5日間食べ続けたラットに、油の飲み口を近づけると、それだけでPOMCは2.5倍になりました。このときラットのエンドルフィンの濃度は、1.5倍も上昇していました。
エンドルフィンとは、脳内で分泌される幸福物質のひとつです。終末期ガン患者にも使われる麻薬系鎮痛剤モルヒネの6.5倍の鎮痛効果があります。ボクサーが激しい殴り合いをして顔面が腫れ上がっているのに、試合中に痛みを感じないのは、エンドルフィンが分泌されているからです。
人間が危機や苦悩に直面したとき、痛みを緩和して「幸福感」「多幸感」「恍惚感」をもたらし、「つらい」状態からの脱出を手助けしてくれる緊急応援物質がエンドルフィンです。
エンドルフィンには、ストレス緩和作用もあります。ストレスがたまってメンタル的に疲れているとき、唐揚げやラーメンのような脂っぽいものを食べたくなるのは、脳が「油」=「エンドルフィン」を欲しているからなのです。
■唐揚げは疲労回復に役に立つ
唐揚げによく使われる鶏むね肉には、エンドルフィンとは別に重要な効果があります。
鳥の羽の付け根の筋肉(むね肉の部分)にはイミダゾールジペプチドという物質が豊富に含まれていて、疲労のもととなる活性酸素を効率的に分解してくれます。なぜ渡り鳥が何千kmも休まず飛び続けられるのか、その秘密はイミダゾールジペプチドにあるのです。
また、イミダゾールジペプチドは水溶性で、「煮る」「蒸す」調理法だと、水に溶けて栄養素が失われる可能性が高いため、「揚げる」「焼く」調理法のほうが適しています。特に唐揚げの場合は、肉汁も衣に閉じ込められるので、イミダゾールジペプチドを効率的に摂取できます。
また最近、イミダゾールジペプチドに記憶力改善効果があると報告され、脳の老化防止、認知症予防の可能性が期待されています。
1日約200mgのイミダゾールジペプチドを摂取すると疲労回復効果が期待できるといわれます。それは鶏むね肉100gで、唐揚げ2~3個分くらいに相当します。
唐揚げに使われる部位は、大きく「むね肉」と「もも肉」に分かれますが、疲労回復効果を期待するなら、「むね肉」を選びましょう。唐揚げやフライドチキンのボックスをシェアする際、日本人はプリッとした食感の「もも肉」を好む人が多いので、あなたが「むね肉」を選んでも喧嘩にはならないでしょう。ちなみに、アメリカ人は「もも肉」よりも、パサパサした食感の「むね肉」が大好物です。