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47都道府県「金持ちが住む街・住まない街」北海道猿払村や山梨県忍野村が高収入の理由
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.06.22 06:00 最終更新日:2021.06.22 06:00
密を避け、テレワークが推奨される昨今、地方へ移住する「脱・東京」にあらためて注目が集まっている。地方でも、十分な賃金が得られるのなら、のんびり田舎暮らしも悪くない――。
そこで本誌は、3月末に総務省が発表した2020年度の「市町村税課税状況等の調」と題する統計をもとに、各市区町村の課税対象所得を納税義務者数で割ることで、各市区町村住民の平均所得を算出した。
明らかになったのは、驚愕の “格差” だった。
東京都港区が全国トップの1163万円の一方、同じ東京都でも檜原(ひのはら)村はわずか264万円。全国最下位の秋田県上小阿仁(かみこあに)村の211万円と比べると5倍以上の差があるのだ。
福井県立大学地域経済研究所所長の南保勝(なんぼ まさる)氏は次のように解説する。
「1991年にバブルが崩壊するまでは、中央の政策に従っていれば、地方は潤っていました。ところがバブルが崩壊すると、地方は地方だけで生きなければいけなくなったんです。
さらに、地方は産業構造上の格差があります。一次産業や二次産業がメインなので、どうしても人手が必要です。すると、ITやデジタル産業が活発な都市部に比べ、一人あたりの所得が低くなってしまいます。
しかし、努力して自分たち独自の経済資源を見つけ出し、活用することに成功した地域は、所得も伸びています。
たとえば福井県鯖江市(福井県トップ・331万円)では人口の減少が止まり増加に転じました。活性化の施策が当たり、大都市圏から若い人が戻ってきたんです。IT企業も集積するようになっていますよ」
たしかに、南保氏の指摘するように、聞き慣れない町や村の名前がトップランキングに躍り出ている。北海道猿払(さるふつ)村は道内最高の531万円、山梨県忍野(おしの)村も同じく県内トップの493万円、愛知県長久手市は443万円で名古屋市超えだ。
「猿払村は、ホタテ漁が盛んです。加えて、そもそも人口が少ないので、平均所得が高くなる傾向があるのでしょう」と語るのは、『47都道府県格差』(幻冬舎)の著者で、マーケティングリサーチの専門家である木原誠太郎氏だ。
「地方は、その土地の農産物や海産物に特徴があると強いですよね。大手企業の城下町も強い。それこそ忍野村は、産業用ロボットのトップメーカー・ファナックの本拠地です。長久手市もトヨタ自動車や三菱自動車の影響でしょう。
リモートワークが浸透したことで、脱・東京の流れは加速すると思います。
地方の人は一概に所得を上げたい、お金を稼ぎたいと思っているわけじゃない。地方活性化が進めば、最終的にお金も豊かになるけど、なにより心が豊かになる。それが都会にはない地方に住む魅力でしょう」
■来年、ランキングは様変わりする
一方、今回のランキングは今後コロナ禍を経て変わるはずだと語るのは、岡山大学大学院の特任教授で地域経済学が専門の中村良平氏だ。
「現在、時短営業を強いられて、飲食業が打撃を受けていますが、今後遅れて製造業、さらに一次産業に影響がでてきます。するとランキングも様変わりするかもしれません。
一人あたりの所得が高い街に住むと、家賃や物価も高くなる傾向にあります。一方、多額の税収で住民サービスが手厚い自治体も多いです。一長一短でしょうね」
読者諸兄の住む街は、どうだろうか?
写真・朝日新聞
(週刊FLASH 2021年6月29日・7月6日号)